東京23区格差問題。旧東京市15区に子育て世代が集まるから「10年後に衰退する駅」トップ10に小岩駅・平井駅がランクインしたのか
時代は幕末。
1868(慶応4)年4月11日、江戸幕府側の勝海舟と、新政府軍の西郷隆盛の働きかけで、江戸城が無血開城されました。その後、旧幕府直轄地の江戸・京都・大坂が「府」、それ以外は「県」、また、諸侯領地が「藩」とされました。
この年の7月17日には「江戸を東京と称す」という詔書が天皇から出され、江戸府は東京府へと名前が変わりました。
そして9月8日に、元号が明治と改められます。
1871(明治4)年7月の廃藩置県で3府302県の行政区画に分かれましたが、その後数回、統廃合が行われています。
1878(明治11)年7月、郡区町村編制法が制定され、全国を府県の下、郡・区・町村に分け、国の地方行政区画とするとともに、区・町村を自治団体と位置づけました。
東京府には、11月に、15区・6郡が設置されました。
○15区:麹町・神田・日本橋・京橋・芝・麻布・赤坂・四谷・牛込・小石川・本郷・下谷・浅草・本所・深川
○6郡:荏原・南豊島・北豊島・東多摩・南足立・南葛飾
現在の江戸川区と葛飾区、足立区、江東区、そして墨田区の一部が、「6郡」の南葛飾郡です。
1888(明治21)年4月25日、市制・町村制が公布され、翌年に東京市が誕生しました。その範囲は、15区(麹町・神田・日本橋・京橋・芝・麻布・赤坂・四谷・牛込・小石川・本郷・下谷・浅草・本所・深川)です。
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旧東京市15区(Wikipediaより) |
現在の東京23区で、人口の増加しているのは、かつての東京市(旧東京市)15区。
一方、人口が減少しているのが、旧東京市6郡で、なかでも南葛飾郡だった区が顕著なのです。『都心集中の真実』(著/三浦展 筑摩書房)には次の表現があります。
都心が一人勝ちし、地方も東京の郊外も人口減少、超高齢社会に向かうのである。
都心、つまり旧東京市15区の中でも現在の千代田区と中央区、港区は人口が増加しています。その理由について、本書では次を挙げていました。
①外国人が増加している。②金持ちが特に都心で増加している。③女性、特に若い女性が増加している。④子供が増加している。つまりファミリー層も増加している。
人口が減少している地域については、次が指摘されていました。
多くは古い大規模団地のある地域か、駅前の木造密集地域を再開発した地域であることから、高齢者が転出あるいは死亡し、それに代わる現役世代が転入して来ない
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『都心集中の真実』で挙げられていた23区内で人口減少が顕著な町丁(Googleマップより) |
人口減少地域の一つとして挙げられているのが、東京メトロ東西線西葛西駅が最寄りの江戸川区清新町1丁目です。この地域にはインド人がたくさん住んでいて、日本橋にある企業などでエンジニアなどとして働いています。コンピュータシステムに誤作動が発生する可能性があった2000年問題に対応するため、1998年頃にエンジニアが多数招かれたとのこと。エンジニアが増え、宗教的な理由で牛肉や豚肉などを口にしない人のための料理店や食材店ができ、幼稚園やインド人学校ができるという流れでした。
ちなみに、家族滞在ビザでは原則として就労が認められていないため、エンジニアなどの妻は専業主婦が多いようです。
外国人がたくさん住むようになっている江戸川区なのですが、15歳未満の人口が減少しています。その理由として、子どものいる共働き夫婦が、職住近接で千代田区と中央区、港区に住むようになったことが考えられます。
仕事場の近く住む若い女性が増えた→仕事場の近くで後の配偶者と出会う→結婚後も仕事場の近くに住む→子どもが生まれたら、夫婦で協力して育てるために、やはり仕事場の近くに住む→子どもが生まれるので、人口が増える
上記の流れで、旧東京市15区で人口が増えているようです。
多摩市などの郊外は、専業主婦を前提としてつくられており、現代の高学歴化し、就業意欲の強い女性が働きたくなる勤め先が近くに少ない。もちろん都心勤務するには通勤時間が長い。つまり郊外の中では女性が稼ぐチャンスが少ないのだ。
著者はこのように述べています。江戸川区については、都心勤務での通勤時間は長くありません。そのため、「女性が夜に安全で楽しく歩ける町であったか」がポイントになりそうです。
現在は女性も高学歴化し、働くのだから、女性が夜も過ごしやすい、働きやすい街をつくらなければ、学歴も年収も高い女性ほど都心に出てしまうのだ。子どもも夜中まで塾に行くのだし、夜でも安全で楽しく歩ける(ウォーカブルな walkable)まちづくりが求められるのである。
個人的にはJR総武線小岩駅周辺はディープで好きですが、都心で働く女性や子どもが夜も過ごしやすいかというと、これまではやや微妙な感じでした。ただ、再開発後は雰囲気も変わるでしょうし、まだまだわかりません。
とはいえ、東京23区においても、千代田区・中央区・港区といった一部の区を除いて、ほとんどで人口が減少すると予測されています。
明治維新以降、東京は拡大したのですが、高度成長期を終え、少子高齢化の時代を迎えて、逆回転をするように旧東京市15区に人々が戻っていくような印象です。
■主な参考資料
変貌 -江戸から帝都そして首都へ-
東京都心3区、人口増が加速 子育て世代流入
東京都の千代田、中央、港の都心3区の人口増加が加速している。千代田区は36年ぶりに6万人を突破、中央区と港区も増加が続く。所得が高く職住接近や保育所を求める子育て世代が流入しているほか、利便性を求める高齢者も郊外から移り住んでいる。高所得層が住みやすい都心居住を志向する流れは将来の待機児童や介護の需要を押し上げる要因にもなる。
「東京23区の人口格差」20年先まで伸びるのは千代田、中央、港、文京、品川、渋谷のみ…すぐにも大幅減の区は?
東京の行政区画-大東京35区物語
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