「食べる人に直接手渡す」というスタイルにこだわるトマト農家 ~サンファーム・シノダ




 市川とイチゴ。
 今の状況からはまったく想像できないのですが、1902年(明治35年)から1965年(昭和40年)頃まで新田はイチゴの産地で、「市川の朝摘み苺」として有名だったそうです。

 そして新田だけでなく、国分の農家でもイチゴを栽培していたのだと、サンファーム・シノダの篠田寛徳さんからお聞きしました。
 イチゴといえば栃木が有名ですが、当時は栃木の農家の人が市川に視察にきて、イチゴ栽培を学んだそうです。驚きです。

 篠田さんのお父さんにお聞きしたところ、イチゴからトマトの生産に切り替えたのは昭和50年代ぐらいだったとのことでした。もともとは地植えで、その後、水耕栽培に変更したそうです。
 ちなみに、イチゴからトマトに切り替えたのは、普段の食卓に頻繁に出される農作物だったからとのこと。
 市場出荷をしながら、直売を始めたのはお父さんの方針でした。なんでも、集荷場に持っていくと、等級ごとに仕分けしたり、箱詰めしたりして大変だったのだそうです。こうしたところに手間をかけるよりも、地元の人に、安くて新鮮なトマトを買ってもらったほうがいいという判断だったのでしょう。
 その後、篠田さんが就農し、徐々に直売の規模を拡大して、数年前から市場出荷をやめて直売のみになったそうです。
 意外に思ったのは、直売だけでも、収入面で大丈夫なんだということ。現在は特に広告もせず、直売所に看板を出すだけなのだそうです。それで長年にわたってお客さんが集まってくるのですから、とても人気のトマトなのだとわかります。

※取材時と現在では営業日時が変わっているので、サンファーム・シノダのInstagramを確認してください


 こうしたスタイルの農業をお父さんから引き継いだ篠田さん。トマトのシーズンには、週に3回、直売を行っています。
 「大切にしているのは、私が作り、直接食べる方へ私が売る、ということなんです」
 トマトの品種は「竜福」と「至福」。
 サンファーム・シノダのトマトの特徴について聞いたところ、「これだけのお客さんが来てくれるということですよね」と返事が来ました。味や魅力については、販売2時間前からできる長い行列が証明しているわけですね。
 6月の火曜日の直売日に足を運んだところ、開始が14:00にもかかわらず、13:40頃にはすでに30名ほどの列ができていました。先頭の方に「何時から並んでいるんですか?」とお聞きすると「12:15ぐらいかな~」と笑顔。驚いていると、他のお客さんが「11:00台に並んでいる人もいるわよ」と教えてくれました。
 お客さんの多くが市川市内から来ているようですが、金町や松戸から車で買いに来る人もいるのだそうです。
 直売所をのぞくと、その理由がわかります。とにかく安くて新鮮。直売ならでは魅力です。



 収穫は、直売当日の0:00。「本日収穫」にこだわって、お母さんと2人で深夜に作業が開始されています。収穫を終えると、奥さんも加わり3人で選別作業と袋詰めをしているそうです。
 そして定刻になると、直売所の建物に5人ずつぐらいお客さんに入る形で販売が開始。お客さん1人当たりトマト3袋、4袋は当たり前。みるみる野菜が減っていきます。地産地消を目の当たりにしました。


 「サンファーム・シノダのトマトを扱わせてほしい」という引き合いも来るそうですが、断っているのだそうです。
 江戸時代から続く篠田家。栽培する農作物が変わることがあるとしても、「手渡し」を大事にするスタイルを維持しながら、これからも続いていくのでしょう。
 そして行列に並ぶ皆さんも、お互い、顔見知りになってしまったのでしょうか、楽しくおしゃべりしている様子で、一つのコミュニティができているのかもしれません。

■サンファーム・シノダ
千葉県市川市国分3-18-8
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