「ここにいてはダメ」だから「10年後に衰退する駅」トップ10に小岩駅・平井駅がランクインしたのか問題

「ここにいてはダメです」
江戸川区が公開した水害ハザードマップ



 2019年に東京都江戸川区が公開した水害ハザードマップの表紙には、こう書かれています。
 強烈なマイナスイメージのワードなのですが、「江戸川区は行政だけでは住民を助けられないということを初めて示した」と、東京大学大学院の片田敏孝特任教授は述べていました。

 「とにかく人口を増やしたい」「人口を維持したい」「なんとか人口流出を防ぎたい」という自治体が多い中で、こうしたワードをあえて使った江戸川区。「東京都|総人口が多い街ランキング」では第4位です。大災害が発生したときに、公助ばかりをあてにせず、共助・自助を念頭においてほしいというメッセージなのかもしれません。

 そんな江戸川区は低地ではありますが、古くから水害のリスクが指摘されてきた分だけ、対策はしっかりと行われてきたと考えられます。

 江戸川区と千葉県市川市との間を流れる利根川水系江戸川については、過去10年において堤防決壊や外水氾濫(川からの越水)の事例は、ネットではヒットしませんでした。

 関東圏での水害で、近年、大きな被害が発表されたのが、2019(令和元)年の東日本台風(台風19号)です。以下の河川で堤防決壊などが報告されています。

○信濃川水系千曲川:堤防決壊
○阿武隈川水系内川流域:土砂・洪水氾濫
○鳴瀬川水系吉田川:堤防決壊
○久慈川水系の河川:堤防決壊


 東京都や神奈川県が下流域の多摩川水系平瀬川では、川の水が堤防を越えてあふれ出し、神奈川県川崎市高津区のマンションで1階部分が浸水し、60代男性1名が死亡しました。また、川崎市市民ミュージアムの地下収蔵庫が水没しました。
 東京都世田谷区・大田区でも、多摩川の溢水(堤防がないところで、あふれ出た水)や内水氾濫(下水の処理遅れによる冠水)によって、家屋が浸水するなどの被害が発生しました。

 利根川水系江戸川については、氾濫危険水位を超える予測が出て、大規模な避難警報・勧告があったものの、堤防決壊や外水氾濫はなかったとのこと。

 台風第19号は12日19時前に大型で強い勢力で伊豆半島に上陸した後、関東地方を通過し、13日未明に東北地方の東海上に抜けたあと、13日12時に日本の東で温帯低気圧に変わりました。
 台風第19号の影響により、12日12時から14日0時頃まで 降雨が続き、江戸川野田上流域での累加雨量が300.3ミリ、中川吉川上流域での累加雨量が228.4ミリ、綾瀬川谷古宇上流域での累加雨量が236.2ミリとなりました。
 このため、江戸川河川事務所では、首都圏外郭放水路、三郷放水路、綾瀬川放水路等の各排水機場を運転し、洪水の氾濫を防ぎました。行徳可動堰を13日4時50分から開放し、洪水を江戸川放水路に流しました。

 江戸川区のサイトを見た限りでは、内水氾濫は複数回起こっていますが、外水氾濫は1947(昭和22)年のカスリーン台風が最後となっています。

 対岸の市川市については、1981(昭和56)・1986(昭和61)年・1993(平成5)年に真間川が氾濫がしたという記録がありました。
真間川改修の進捗に伴い、かつての水害常襲地帯が「安全で安心できる街」により


 「数十年、外水氾濫がないから大丈夫」という話ではなく、江戸時代から水害が多かった東京や隣の市川市は、私たち市民の水害対策が重要であることには変わりありません。

 なお、今回のタイトル“「ここにいてはダメ」だから「10年後に衰退する駅」トップ10に小岩駅・平井駅がランクインしたのか問題”については、江戸川区の総人口が都内で第4位であることから、少子高齢化で人口減少時代の今の日本で、「ここまでに人口が増えてきた分だけ、これから減少傾向」という理由が挙げられます。
 もう一つの理由は、前回の記事“東京都「10年後に衰退する駅」第2位がJR総武線小岩駅で、隣の市川駅はどうなんだろう問題”でも挙がっていた「割高感」でしょう。

 最後に、水害から私たちを守ってくれている河川事務所の皆様に感謝しております。今回、さまざまな資料を見て、皆様のおかげで市川市で安全に暮らせているのだと実感した次第です。

■主な参考資料
これまでの水害

江戸川区のこれまでの適応策

東京に住んではダメなの? ハザードマップの意味とは

南海トラフ巨大地震等による東京の被害想定について

市川市地域防災計画(風水害等編) 新旧対照表

令和元年10月 台風第19号(令和元年東日本台風)出 水 概 要江戸川・中川・綾瀬川
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