【コミュニティづくり再入門】市川市学習交流施設 市本で「地域コミュニティづくり」を考える1 そもそも「市本」って何?
JR市川駅から徒歩1分という、利便性が高い立地の「市川市学習交流施設 市本(いちぼん)」。
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市川市サイトより |
2021(令和3)年11月3日にオープンしたものの、今年の3月末、つまり開設から1年4カ月ほどで廃止するということで、メディアで少し話題になっています。
「市川駅北口近くに整備した学習交流施設、市本は運営経費に年間3000万円以上を要しておりますが、開設した令和3年11月をピークに、1日あたりの平均来場者数は減少傾向となっております。当初予想・予定していた本を介した市民の交流という効果が期待通りに現れていないことや、多額の運営費用を利用していることなどを踏まえ、本年3月末をもって廃止することといたしました」
小説や写真集など、幅広いジャンルの本が毎月20冊以上並べられ、その場で読んだり買ったりするほか、併設するカフェのコーヒーを飲みながらゆったり過ごすこともできるようになっている。
初期こそ1日に70人を超える利用者がいたが、その後は減る一方で、最近は1日あたり20人前後にとどまっていたという。
NHKの記事の見出しだと、市本は文化施設。しかし、市川市のサイトでは「市川市学習交流施設」となっています。
文部科学省の資料では、「文化施設とは、劇場、音楽堂等を指し」と書かれています。
また、市川市のサイトでも、市本は文化施設のカテゴリーに入っていないようです。
文化施設として、市川市市川駅南口図書館・市川市木内ギャラリー・市川市生涯学習センター(メディアパーク市川)・市川市中央図書館・市川市東山魁夷記念館・市川市文化会館・市立市川考古博物館・市立市川自然博物館・市立市川歴史博物館・郭沫若記念館・旧浅子神輿店・行徳文化ホールI&I・清華園・文学ミュージアム・水木洋子邸・芳澤ガーデンギャラリーが掲載されています。
市本の趣旨などは、以下のように、市川市のサイトで説明されていました。
令和3年11月3日(水曜)に市川市学習交流施設 「市本(いちぼん)」がオープンしました。主に社会人や大学生の方を対象に、本を介した学びと交流を促進し、働きながらも学び続けていける環境の醸成や新たな交流の機会創出を目的とした施設です。気になる本を読んだり本に関するイベントに参加するなどの新たな学びと交流の機会を提供します。仕事や学校帰りに、ぜひお立ち寄りください。
毎月ひとつのテーマを設定し、関連があれば学術書、新書、小説、写真集、絵本などジャンルを問わず本を紹介します。
令和5年2月のテーマは「眠りと夢」です。
窓側にあるカウンター席は、一人で居心地良く過ごすのに最適な空間です。また、コミュニティマネージャーと呼ばれるスタッフが、新しい本との出会いや交流の機会づくりをサポートします。市川駅北口徒歩1分の立地で、仕事や学校帰りに立ち寄ることができます。
https://www.city.ichikawa.lg.jp/edu12/0000377465.html
市本を運営しているのは、コクヨアンドパートナーズ株式会社のようです。
公募型プロポーザル方式で、この会社に決まったとのこと(公募型プロポーザル方式については、文章末尾)。
市川市の「令和3年度当初予算案説明」で、市本について触れられていました。令和3年度の市本の予算額が6132万1000円と記載されています。
上記のデータから、令和3年度に6000万円を超える費用が掛かっていて、その後も毎年約3000万円が運営に使われているということになります。
市川市の田中甲市長は、「当初予想・予定していた本を介した市民の交流という効果が期待通りに現れていないことや、多額の運営費用を利用していることなどを踏まえ、本年3月末をもって廃止することといたしました」と述べたようです。
市川市学習交流施設の市本については、目的は「市民の交流」であり、本についてはその手段に過ぎないようです。要は、「出版文化を守るための施設」「本を利用するための施設」ではないということ(出版文化についても、まあ、言いたいことはいろいろありますが、それは別の機会に)。
求められていた役割は、公民館に近いのではないでしょうか。
「地域コミュニティづくり」のために、市川市民の税金を投入して施設運営をしてきたものの、費用に見合わなかったという、市川市の判断になるのでしょう。
なお、費用に見合わないという判断材料の一つが、SNSのフォロワー数のようです。調べたところ、2月19日の時点で、Twitterが842、Instagramが1410。Facebookについては、利用していなかった模様。
余談ですが、Twitterのプロフィールの「スタッフ姉妹」が気になります。姉妹??
市本の施設(ハコモノ)は市川市が管理してきたもので、市本の前は「いちかわ観光物産インフォメーション(いちかわ観光・物産案内所)」でした。『クラナリ』編集人は、いちかわ観光物産インフォメーションに足を運んだことがないのですが、トリップアドバイザーには次の口コミがありました。
土曜日のお昼頃に行きました。JR市川駅を出て歩いていたらすぐの場所にこちらの案内所がありました。係りの方がお一人いらっしゃり、街歩きについてなどの質問に答えていただけたのが良かったです。マンホールカードをいただくため訪れました。入口には市川市マンホールカードを配布していることの案内がありましたので、そのような方が多いのかもしれません。総武線市川駅を出て直ぐ観光案内所に直行。各種パンフをもらうため入った所、親切に地図を広げて説明してもらえた。街歩きがスムーズでした。なかなか地図をじっくり見るのも楽しいもんですね
いちかわ観光物産インフォメーションという名前のとおり、ターゲットは他市からやって来た人や、市内のことをよく知らない市民。市内の地図が貼ってあったことなどが、口コミからわかります。
目的が「市川市のPR」であれば、東京都から最も近いJR市川駅の近くに施設があることは理解できます。また、SNSのフォロワー数なども、継続か廃止かの検討材料にはならないでしょう。
しかし、「地域コミュニティづくり」となると、本を介する必要があったのか、駅近の必要性があったのか、公民館などと比べて利用状況はどうだったのか、SNSのフォロワー数をどう判断するのかなど、さまざまな疑問・問題点が浮かび上がってきます。
『クラナリ』vol.3のテーマは「コミュニティづくり入門」でした。
ここからは市本をトピックに、「地域コミュニティづくり」のあり方について再び考察していきます。このテーマで、過去に取材させていただいた方にも、再び話をうかがうかもしれません。その際は、どうぞよろしくお願いいたします。
※『クラナリ』は市川市内の図書館に置いてあります。
※公募型プロポーザル方式
業務委託契約を結ぶ事業者を選ぶ方法の一つ。地方自治法施行令第 167 条の2第1項第2号が定める「その性質又は目的が競争入札に適しない」に該当するものとして、随意契約を締結します。
業務に関する企画書や実地方針などを、事業者が地方自治体などに提出します。これらの案の中で、最も優れた内容のものを採用します。
■参考文献
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