深く眠るための東洋医学 不眠に伴う不調・症状でタイプ診断

 東洋医学の基本的な考え方の一つが、陰陽論です。この世界に存在する物も事も、陰と陽の2つに分けられると考えられています。陰陽は対立するものではありますが、固定されていません。「陽極まれば陰となり、陰極まれば陽となる」と、変化すると捉えられているのです。

「陽極まれば陰となり、陰極まれば陽となる」
 これは恒常性につながる考え方のようにも思えます。

 また、陰陽の陰は夜、陽は昼に当たるので、偶然にも概日リズムと陰陽は関係しています。子午流注(しごりゅうちゅう)は自然界の時間の流れに合わせて、人間も養生を行うという考え方です。

子午流注
○子の刻(23~1時) 胆経の気が充実
○丑の刻(1~3時) 肝経の気が充実
○寅の刻(3~5時) 肺経の気が充実
○卯の刻(5~7時) 大腸経の気が充実
○辰の刻(7~9時) 胃経の気が充実
○巳の刻(9~11時) 脾経の気が充実
○午の刻(11~13時) 心経の気が充実
○未の刻(13~15時) 小腸経の気が充実
○申の刻(15~17時) 膀胱経の気が充実
○酉の刻(17~19時) 腎経の気が充実
○戌の刻(19~21時) 心包経の気が充実
○亥の刻(21~23時) 三焦経の気が充実
Wikipediaより

 睡眠は陰のエネルギーを蓄えるもので、心身を整理整頓し、鎮静させるとされています。
 眠れないときは、陽のエネルギーが強くなり過ぎていたり、陰のエネルギーが足りなくなっていたりする可能性があります。東洋医学では、主に次のタイプが挙げられています。

心火(しんか)

 東洋医学の五臓の中で、心(しん)は精神や意識をつかさどっています。ストレスや非常に辛い食べ物、そして暑さで、心は熱を帯びます。これ、心火です。寝つきが悪くなるほか、次の症状が現れやすくなります。
□口内炎
□味覚異常
□舌の不調(痛みなど)
□のぼせ
□ほてり
□不安
□焦り
□イライラ

 心の熱を冷ますことが大切なので、刺激は避けましょう。強烈な光や音楽、辛い食べ物はNGです。
 また、ナスやトマト、クコの実などは心の熱を冷ます食材とされています。

心脾両虚(しんぴりょうきょ)

 心に血(けつ)が足りなくなって栄養が不足すると同時に、五臓の脾の気(き)が足りなくなってエネルギー不足の状態です。眠りが浅く、夢をたくさん見るほか、次の症状が現れやすくなります。
□唇の荒れ、口角炎
□むくみ
□疲労感
□日中の眠気
□食欲不振

 心血と脾気を補うために、消化のよい食べ物を取りましょう。また、ニンジンなど黄色味を帯びた食べ物が勧められます。

心胆気虚(しんたんききょ)

 五臓の心と六腑の胆(たん)の気が弱っている状態です。胆は濁りのない液体を貯蔵すると考えられていて、「胆力」という言葉もあるように、決断をつかさどります。心胆気虚は、恐怖や精神的ストレスで引き起こされます。夜中に何度も目覚めたり悪夢を見たりするほか、次の症状が現れやすくなります。
□舌の不調(痛みなど)
□息苦しさ
□心配性
□驚きやすさ
□優柔不断
□無感動


 心と胆を補うため、ほろ苦いものや酸味のあるものを適度に取ります。
 また、安らげるものを身の回りに置いて、心身を落ち着かせることも大切です。そして夜更かしをせず、子の刻(23~1時)には眠りましょう。


腎陽虚(じんようきょ)

 五臓の腎(じん)のエネルギー不足で、体内を潤している陰液(いんえき)のバランスが悪くなります。寒さや加齢で起こりやすくなり、夜中に尿意を覚えて何度も起きるほか、次の症状が現れやすくなります。
□手足の冷え
□抜け毛
□下痢
□耳鳴り
□膀胱炎
□思考力の低下
□物忘れ

 腎を温めるために、腹巻きをしたり、腰にカイロを貼ったりするといいでしょう。
 また、塩気のあるものを適度に取ることが勧められますが、塩分過多が気になる場合は黒い食べ物を取るといいとされています。黒豆、黒ゴマ、キクラゲ、シイタケなどです。体が冷えやすいため、飲み物も食べ物も温めましょう。

 一口に「不眠」といっても、タイプが異なれば対処法も異なります。季節や年齢、心身の調子に合わせて、深く眠れるような習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。

■関連記事
初めての東洋医学 分類

初めての東洋医学 よく見かける用語のまとめ

初めての東洋医学 ベースとなる考え方

市川市にある創業40年の出版社の東洋学術出版社から刊行された『宋以前傷寒論考』を読んでみた

■参考資料
『図説 東洋医学』 著/山田光胤 、代田文彦  学研

幸井俊高の「漢方薬 de コンシェルジュ」
Powered by Blogger.