「一人暮らしの高齢者」「認知症」の割合が増える未来のランドスケープをデザインする問題 その6 脱炭素×コンパクトシティ

市川七中行徳ふれあい施設より


 アメリカの大統領就任式が、日本時間1月21日1:30に始まる予定です。
われわれは世界のどの国よりも多くの黄金の液体(石油と天然ガス)を持っている

 ドナルド・トランプ次期大統領が掲げた公約の一つが、エネルギー、特に化石燃料の増産。
 大統領選ではエネルギー政策が大きな争点の一つとなり、結果としては、トランプ次期大統領が圧勝したわけです。ジョー・バイデン大統領が進めてきた脱炭素も、停滞するという予想が各方面で出ています。
ドナルド・トランプ次期大統領(写真/パブリックドメインQ)




 脱炭素に否定的ともいえる発言をトランプ次期大統領が行う背景として、以下の理由があるのかもしれません。

オーソドックスなマクロ経済の観点から見ると、脱炭素がマクロの経済成長につながる道筋-日本経済の最大の課題である低い生産性を引き上げ、持続的な経済成長につながるメカニズム-は漠とした期待論の域を出ておらず、むしろ負荷となる面すらある。
 脱炭素を進めるには、次世代蓄電池、水素の実用化、二酸化炭素を地中に埋める CCS、低コスト太陽光パネルなど多様な分野へ莫大な資金が必要とされる。それは ESG 投資、サスティナブルローン、グリーンボンド等の脱炭素マネーによって賄われ、新技術開発が加速し、脱炭素関連産業が勃興・成長し、各産業・企業では脱炭素関連の設備投資が増加するだろう。
 しかし脱炭素技術は、産業・企業の標準装備にはなっても、第1次産業革命の蒸気機関、第2次の電気、第3次の情報通信技術のように、当該産業のみならず他産業の製品・サービスの生産プロセスへ広く深く組み込まれ、生産性と投資収益率を引き上げる汎用技術とは言い難い。

 ここで改めて、脱炭素についてまとめておきましょう。

 脱炭素とは、温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることです。温室効果ガスには二酸化炭素(CO2)、メタン、一酸化二窒素(N2O)、フロンガスが含まれます。
 「排出量を実質ゼロ」が意味するのは、「排出量-(吸収量+除去量)=0」、つまり差し引きゼロを意味します。「カーボンニュートラル」という言葉については「カーボン(炭素)を「ニュートラル(中間、中立)」にするということで、脱炭素とほぼ同じ意味です。なお、脱炭素については、「排出量を減らすこと」と説明しているサイトもありました。

 カーボンニュートラルという言葉を誰が作ったのかは、検索してもヒットしませんでした。ただ、ノルウェーのイェンス・ストルテンベルク首相(当時)が2007年に、国家レベルで2050年までにカーボンニュートラルを実現する政策目標を発表したとのこと。というわけで、2007年には存在していたとわかります。
さまざまなエネルギーの低炭素化に向けた取り組みより



 脱炭素に取り組む理由として、環境・食糧問題が挙げられます。

環境・食糧問題

○地球温暖化により2030年には世界の平均気温が1.3℃上昇する
○気候変動による豪雨・災害のリスクが高まる
○異常気象により一次産業が経済的な打撃を受ける
○生態系が変化して食糧問題に発展する

 そして、脱炭素の取り組みとして、以下があります。

脱炭素の取り組みの例

○次世代蓄電池の開発
○水素発電の実用化
○二酸化炭素を地中に埋める CCS(Carbon dioxide Capture and Storage、二酸化炭素回収・貯留)
○低コスト太陽光パネルの開発

 これらの取り組みに対して、すでに以下のような問題点が指摘されています。

脱炭素の取り組みに関する問題点

○太陽光発電施設を設けるために森林を伐採している
 →生態系への悪影響
 →山林を切り開いたメガソーラー開発で土砂災害
○水力発電の設置で河川の生態系が変化する
○海上風力発電の設置により海の生態系が変化する
○水素輸送でコストがかかる
○太陽光発電や電気自動車の材料輸入で、中国への依存を高める

 さまざまな論点があるものの、「エネルギーの無駄遣いはやめよう」ということは、バイデン大統領・トランプ次期大統領を含め誰も否定はしないのではないでしょうか。
 エネルギーを極力省略するまちづくりを推進して、令和5年度「脱炭素都市づくり大賞」の特別賞を受賞したのが、「小諸市中心拠点コンパクトシティプロジェクト」です。
 このプロジェクトのコンセプトは、香川県高松市の丸亀町商店街と似ていました。

高松市の高齢化が進む中、病院をはじめとする高齢者の暮らしに欠かせない「医療」「食事」「住まい」の3つの要素を整備することで、新しい商店街の在り方を示したのがこの計画だ。
そもそも、公共交通機関の整備が不十分な地方都市では、自分で車を運転できない高齢者が毎日商店街に通うことは難しい。そこで、通わずに「住む」という解決策が考案されたのだ。

 通院や役所での手続き、買い物などが「徒歩」で事足りるコンパクトシティを目指したのです。

 人口が増え続けた高度経済成長期には、無計画に郊外に住宅地が開発されました。そして、バブルその他で中心地の地価が高まり、商店は経営を続けられなくなると同時に、郊外にショッピングモールなどができて、かつての市街地は空洞化。また、移動はマイカーに頼ることになりました。
 人口減少時代のこれからは、住む・通う(病院や役所など)・食べる・買う・遊ぶ(体育館や公民館など)を集中させて利便性を高めると同時に、ガソリンや電気を使わずに移動する脱炭素を推進する方向性になってきました。

 市川市においては、「市川七中行徳ふれあい施設」が同様の趣旨で、中学校の施設を複合化した例と思われます。これから進められる「(仮称)信篤複合施設整備事業」にも注目していきます。

■関連記事
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■参考資料
米国大統領選挙後も変わらない3つの潮流とは? 米中対立・地産地消・政策分断(※)
※気候変動対策、移民・教育政策、銃規制、人口妊娠中絶問題、LGBTQの権利保護などのさまざまな分野で、州ごとの政策が二極化

米国トランプ次期政権によるエネルギー・環境政策の見直しの行方

トランプ2.0の米国・世界経済への影響と日本に求められる備え

優れた脱炭素型の都市の開発事業を表彰します~「脱炭素都市づくり大賞」の受賞事業の決定と表彰式について~

小諸市立地適正化計画

分野間連携の先行的取組事例集

市川七中行徳ふれあい施設

グリーン成長戦略(概要)

脱炭素化に向けたコンパクトシティとスマートシティの融合

経済産業省 資源エネルギー庁

※関連用語
ZEB(net Zero Energy Building)
ZEH(net Zero Energy House)
建築物における一次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用等により削減し、年間での一次エネルギー消費量が正味でゼロ又は概ねゼロとなる建築物。

ESG投資
環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)といった、社会的な要請に配慮した投資。

コンソーシアム(consortium)
複数の企業や組織が共同で特定の目的を達成するために結成する連合体。共同企業体。

レジリエンス(resilience)
回復力、復元力。

MICE(マイス)
Meeting(会議)、Incentive Travel(報奨・研修旅行)、Convention(国際会議)、Exhibition(展示会)またはEvent(イベント)の頭文字の造語。ビジネスイベントの総称で、各地から多くの参加者が集まるイベントや会議。

PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:公民連携)
公民が連携して公共事業を行うスキーム。

PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)
公共施設の建設や維持管理、運営などに、民間の資金や経営能力、技術的能力を活用する公共事業の手法。PFIは、PPPの代表的な手法の一つ。

デザインビルド(DB)方式
設計及び施工の両方を単一業者に一括して発注する方式。

公募型プロポーザル
業務委託契約を結ぶ事業者を選ぶ方法の一つ。地方自治法施行令第 167 条の2第1項第2号が定める「その性質又は目的が競争入札に適しない」に該当するものとして、随意契約を締結する。
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