「一人暮らしの高齢者」「認知症」の割合が増える未来のランドスケープをデザインする問題 その5 市川市の自治会加入率は「半分ちょっと」

 市川市の人口は2025(令和7)年頃にピークを迎えるという予測が、マスタープランに書かれていました。
 2025年といえば、2025年問題。「人口構造上、大規模な集団」とされる団塊の世代が75歳以上、つまり後期高齢者となります。

 2025年問題に対応する形で、「地域包括ケアシステム」の構築が進んできました。厚生労働省のサイトでは、地域包括ケアシステムとは、「重度な要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けることができる」システムで、「市町村や都道府県を中心に、地域ごとの自主性や主体性に基づき、作り上げていく」ことになっていると説明されています。
地域包括ケアシステム



 地域包括ケアシステムの二本柱といえそうなのが、公的機関の地域包括支援センターと、民間組織の社会福祉協議会です。

 地域包括支援センターについては、2006(平成18)年4月に介護保険法が改正され、各市町村で設置されました。

地域包括支援センターは、市町村が設置主体となり、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等を配置して、3職種のチームアプローチにより、住民の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設である。(介護保険法第115条の46第1項)

 市川市については、「高齢者サポートセンター(地域包括支援センター)」として、15カ所設置されています。

 あれ? 「15カ所」?
 市川市が作成した市川市空家等対策計画のエリア分けと同じです。なるほど。



 ちなみに、市川市の社会福祉協議会は14カ所。南行徳が1カ所か2カ所かだけの違いのように見えます、目で確認した限りでは。一部、町名を無視したエリア分けについては、「自治会連合会の区域」が関係しているとのこと。

市川市では 自治会連合会の区域に基づいた14の地域ごとに「地区社会福祉協議会」が設立され、そこにお住まいの方々による 様々な“助け合い”“支え合い”の活動が行われております。

 以上のことから、自治会・社会福祉協議会・高齢者サポートセンター(地域包括支援センター)は密接に関係しているように見えなくもありません。

 話を社会福祉協議会に戻すと、1951(昭和26)年にできた民間組織です。

社会福祉協議会は、民間の社会福祉活動を推進することを目的とした営利を目的としない民間組織です。昭和26年(1951年)に制定された社会福祉事業法(現在の「社会福祉法」)に基づき、設置されています。

 少子高齢化に伴い、一人暮らしの高齢者や認知症の割合が増えると予想されています。そんな超高齢化社会を支えるのが、社会福祉協議会・高齢者サポートセンター(地域包括支援センター)。

 ただ、社会福祉協議会のベースになっているように見える市川市の自治会については、2023(令和5)年1月1日現在、227団体で(町内会も含む)加入率は52.76%というデータがありました。
 ちなみに千葉県内では八街市41.1%、浦安市44.30%、富里市46.6%、長生村46.72%、成田市48.24%、栄町51.00%、八千代市52.00%で加入率が低いため、東京都から近い・近くない、高齢化率が高い・低いは関係なさそうです。

 そして、市川市の場合は、例えばパークシティ市川自治会、ザ タワーズウエスト自治会など、マンションごとに自治会ができているケースもあるので、「マンション建設で自治会加入者が減った」ともいえないようです。

 社会福祉協議会については、事業が幅広く、学童保育や子ども食堂など、子育てに関するものも少なくありません。また、生活資金も借りられます
 「互助」「共助」の取り組みを行うのが、社会福祉協議会だといえます。

〇第1種社会福祉事業
生活保護法、児童福祉法(乳児院や障害児入所施設など)、老人福祉法(養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム)、障害者総合支援法(障害者支援施設)、売春防止法などに関連する事業。

〇第2種社会福祉事業
生活困窮者自立支援法、児童福祉法(通所支援、訪問事業、家庭支援など)、母子・父子・寡婦福祉法、老人福祉法(訪問介護、就労支援など)、障害者総合支援法(障害福祉サービス事業など)、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法などに関連する事業。

貸付資金には、「総合支援資金」、「福祉資金」、「教育支援資金」、「不動産担保型生活資金」の4種類があり、低所得世帯、障害者世帯、高齢者世帯等世帯単位に、それぞれの世帯の状況と必要に合わせた資金、たとえば、就職に必要な知識・技術等の習得や高校、大学等への就学のための資金、介護サービス利用のための資金貸付け等が行われます。

 社会福祉協議会の会員募集は、多くの場合、自治会や町内会などを通じて通知されます。その関係で、自治会に加入している世帯は社会福祉協議会について知っているし、寄付もしているのですが、自治会に加入していない世帯は社会福祉協議会の存在を知らず、必要なサービスを受けられていない可能性も考えられます。

 社会福祉協議会の主な財源は、会費・寄付金・共同募金配分金・行政からの補助金や受託金・介護報酬などの事業収入とのこと。市川市社会福祉協議会については、受託金収入の割合が跳び抜けて大きくなっていました(令和4年度決算書)。

会費や寄付金、共同募金配分金、行政からの補助金や受託金、介護報酬等の事業収入等が社協の財源になります。 社協は非営利組織であり、寄せられた会費等は地域福祉を進める貴重な財源として、地区福祉委員会活動や必要な支援事業等に役立てられています。

 市川市の自治会加入率については、2019(平成31)年4月の時点では55%。ですから、じわじわと減っているという印象です。
 また、自治会の役員の高齢化もよく話題に上っています。



 なお、東京都武蔵野市は全市的な市民組織としての自治会、町内会がないことで知られています。

武蔵野市には、全市的にネットワークされた自治会や町内会はありませんが、一部の地域では自治会や町内会が自主的に組織され、防災訓練、防犯活動、清掃活動、お祭りなどの親睦事業を行っています。

 少子高齢化が進み、日本中のどの自治体でも税収の減少が見込まれています。自助・共助・公助のうち、高度経済成長期には自助・公助の割合が大きかったのですが、老々介護などでの自助の限界、税収減による公助の限界もうっすら見えてきました。

 超高齢化社会で医療や看護、介護の比重が増す未来、自治会が現在の減少傾向で地域包括ケアシステムはどうなっていくのか、武蔵野市方式のように新しい自治会のスタイルができるのか、注目しているところです。

■参考資料

社会福祉協議会の組織・事業・活動について

市川市 外郭団体経営状況シート

市川市社会福祉協議会


地域包括ケアシステム
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