駅前にありがちな「ロータリー」って何でしょうね問題

 2023(令和5)年7月11日に開催された第1回 市川市都市計画審議会の議事録を読んだところ、駅前ロータリーの話題が多かったという印象。
JR本八幡駅北口・南口ロータリー(Googleマップより)

 そもそも「ロータリー」って何でしょうね?
 ちょっと調べてみました。

 ロータリー(rotary)は「回転する」という意味の英語で、環状の道路の呼び名でもあります。
 道路関連で似た意味を持つ言葉が、ラウンドアバウト(roundabout)。日本での呼び名は環状交差点(かんじょうこうさてん)で、車両の通行部分が環状(ドーナツ状)の形になっていて、車両が右回り(時計回り)に通行することが指定されています。
ラウンドアバウトの標識(警視庁より)


 ロータリーとラウンドアバウトでは見た目は変わりませんが、ロータリーについては一時停止位置や信号機などが設置されています。
 今回の記事では、ラウンドアバウトも含めて「ロータリー」と表記します。

 ロータリーの出現は19世紀のヨーロッパで、大型の乗合馬車と関係しています。多くの馬車がスムーズに交差点を通過できるように、どうやら自然な形でロータリーが形成されてきたようです。
 環状の道路として整備する形で導入されたのは、20世紀初めのアメリカニューヨークとのこと。
ニューヨークのロータリー(写真/TarHeel4793



 日本で初めてロータリーが設置されたのは1934(昭和9)で、東京和田倉門交差点でした。

 駅前ロータリーについては、いつから導入されたのかはネット検索ではヒットしませんでした。また、調べた範囲では、JR本八幡駅前のロータリーがいつ設置されたのかもわかりません。今昔マップで見た限り、1999年発行の地図だと線路に沿って道路が走っていて、この時点では北口も南口もロータリーがなかったと推測できます。
1999年頃の本八幡駅周辺(今昔マップより)

 なお市川駅前のロータリーは、今昔マップだと1965(昭和40)年の地図にそれっぽいものが確認できます。ただの広場だったのかもしれませんが。

 JR本八幡駅北口でロータリーと接している地区での再開発は、現在進められているのが初めてです。ですから、再開発とは関係はなく、ロータリーが設置されたと考えられます。
北口ロータリーに接する地区の再開発は今回が初めて


 そんな駅前ロータリーが、令和5年度第1回市川市都市計画審議会で取り上げられた背景の一つとして考えらえるのが、景観への影響です。

欧州諸国ではロータリーを単なる交通処理施設として捉えるのではなく,都市・地区等への入口にロータリーを設置しロータリーをランドマークとして用いているほか,ロータリーを都市景観の改善に役立てようとしている

 新たにタワマンが2棟出現するJR本八幡駅北口において、圧迫感を軽減する効果も駅前ロータリーにはあるようです。
 確かに、ニューヨークのロータリーを見ると、「ああ、かっこいいな」と思ってしまいます。景観への影響は大きいのでしょうね。

 また、今のロータリーで、バス停の位置などといった交通的な問題が指摘されていました。

 以下は、本八幡駅北口駅前地区第一種市街地再開発事業が議題に上っている、市川市都市計画審議会の会議録の、『クラナリ』によるまとめです。あくまでもまとめなので、原文を確認してください。


令和5年度第1回市川市都市計画審議会2023(令和5)年7月11日(火)


■本八幡駅北口駅前地区の概況

地区名:本八幡駅北口駅前地区
所在地:市川市八幡2丁目地内
※JR総武線本八幡駅を北側に出て、パティオビルや一番街のある区域
区域面積:約1.1ヘクタール
用途地域:商業地域(容積率600%、建蔽率80%、防火地域、駐車場整備地区)

■当地区の現況と魅力、課題

現況:市川市における商業の中心地で人々の往来も多い

課題

○建物の老朽化(既存建物の多くが1980年代までに建設)
○低未利用地(駐車場や駐輪場など)が15%が存在
○歩道空間が狭く、車道も少ない状況(歩行者と自転車、あるいは自動車の動線が交錯)

■経緯と上位計画

経緯

○2016(平成28)年3月に「都市再開発の方針」が見直された
○同時期に本八幡A地区の再開発事業が完了
○2017~2018(平成29、30)年頃から、地元による再開発の勉強会が実施
○2019(令和元)年6月には検討会が設立
○2021(令和3年)2月に区域がまとまり同3月に準備組合が設立

準備組合

○約50名の地権者のうち約80%が加入
⇒組合に参加していない2割
躊躇、様子見、「反対というよりは、少し戸惑っているといいますか、大きな事業なので慎重になられている」(市担当者)
○合意率は人数で約87.5%、面積で約90%

上位計画の位置づけ

○商業業務施設の充実と都心居住の推進
○にぎわいのある交流ゾーン
○快適・活力ある住環境の整備
○安心で安全な住環境の形成

■再開発の意義と整備方針

意義:都市基盤の整備、歩行者空間の創出、土地の集約及び共同化

整備方針

○駅前にふさわしい街区再編と基盤整備
○周辺市街地との連携や回遊性を高める歩行者ネットワークの整備
○オープンスペースと緑のプロムナードによる地域の新たな魅力の創出
○商店街のにぎわいや葛飾八幡宮の参道を活かした街並み形成

■事業概要

○建物は地下でつながっているため建築基準法上は1棟だが、見た目は南棟と北棟の2棟並ぶ(駅に近い南棟が44階で約160m、北棟が21階)
○2030(令和12)年度に竣工予定

■都市計画

土地を集約し、建築物を一体的に整備し、商業・業務及び都市型住宅からなる複合的、合理的かつ健全な土地の高度利用と都市機能の更新を図る
公共施設:周辺道路の幅員と延長
高度利用地区:容積率の最高限度を800%、最低限度を300%、建蔽率の最高限度を50%、建築面積の最低限度を200平方m以上

地区計画

○商業・業務施設の充実と都心居住による複合市街地の整備等により、本市の中心市街地にふさわしい都市拠点を形成する
○市道6002号、6003号、6005号:車道幅員6mの道路に整備、「にぎわい通路」を6003号の位置に配置
※地下に駐車場施設ができるため、廃道予定の市道6003号の東側も幅員を7mに拡幅
※建物の住人や来客者は東側の市道6002号から出入りし、ロータリー側から車は出入りできない
広場状公開空地及び広場:スクランブル交差点部と駅前ロータリー部の2か所、それぞれ約200平方mの空地と広場を整備
建築物の用途制限:良好な住環境や地域のコミュニティーを阻害する建物を制限(パチンコ屋や馬券売り場等のギャンブル施設、工場、倉庫、そして風俗営業等を規制)
⇒どの程度の規制が入るのかの質問が委員からあったが、市からの回答は不明
建築物の敷地面積の最低限度:1000平方m(敷地の細分化の抑制)
壁面位置の制限:歩道空間を確保するために壁面後退(自動販売機など歩行者の通行を妨げる工作物の設置を制限)
形態や意匠の制限:原色を避け、周辺環境や都市景観に配慮した色調とする

■駅前ロータリー

現状

○ロータリーを抜けたところにバス停が設置され周辺の路上駐車もあり国道14号からの入口で混乱→タクシー、バスといった公共交通事業がロータリーで機能できるようなフォローアップが必要
○歩行者用の雨除けがない
○ロータリーを取り囲むように建物がある

計画の課題

○交通アクセスが国道14号からに集中して流入量が増加する可能性も
○北口広場らしいと思えるような一体性は出せるのか
○駅利用者の利便性が上がるのか
※JR と市で協議中

■風(ビル風)

「風環境のシミュレーションをパソコン上でやっておりまして、大きな影響はない」「風洞実験という形で、模型を使って実験」(予定)(市担当者)

■JR と面したところ

建築基準法上の道路が配置されていない(道路になっていない)
シャポーの出入口は、今後もない
JR 側の南の壁面のところは、歩行者は通り抜けができる

■税金

「本八幡駅の周辺ばかり税金を投入するのではなくて、議員の先生方もお詳しいと思うのですが、現状他の地域には老朽化した学校とか、公民館とか多いと聞いておりますので、こちらの方に予算とか目を向けていただければ」(一般社団法人市川市医師会理事 岩澤 秀明委員)


令和5年度第3回市川市都市計画審議会2024(令和 6 )年 1 ⽉ 31 ⽇(⽔)

 

市民からの意見

○⾞の出⼊りが国道14号の1カ所なので、新たな交通渋滞が発⽣することが予想される
○出⼊⼝を国道側でなく、3・4・15号、本⼋幡駅駅前線側駅前ロータリー側に設置し、ペデストリアンデッキ等を敷設するなどを検討するべき
○船橋⽅⾯に⾏く場合に右折が禁⽌されると、ロータリーでUターンすることになる
○東京⽅⾯からロータリーへの右折進⼊が禁⽌されている
○市道6003号(にぎわい通路)を、歩⾏者が安全に通⾏できない
○870⼾の住⼾により、⼩学校、中学校、保育園の受け⼊れ可能数を超える
○⼤地震発⽣の際の避難場所や避難所も不⾜することが予想される
○地域全体として整備できる限界を超えることが判明すれば、⾼度利⽤地区、特に⾼さ制限⾃体の変更することも検討すべき
○地域「らしさ」が失われる

市の対応

○既存の交通への影響は少ないものと予測
○地区への入庫は左折のみのため、東京⽅⾯からの⾞両については迂回が発⽣する
○出⼊⼝等の交通計画については、今後の施設建築物の検討に合わせて、関係機関と協議
○駅前広場については、歩⾏空間を優先し、⾞の出⼊⼝を設けない
○国道14号で東京⽅⾯からの右折進⼊の想定をしていない
○区域の東側を出⼊⼝としている点で、市も、準備組合も交通の計画は課題と認識
○必要な防災備蓄施設の整備を⾏うよう、準備組合へ指導
○教育委員会等関係機関と協議を重ね、教育機関への受⼊れ不⾜とならないよう対応
○建設費の⾼騰は、資⾦計画に⼤きく影響することから、適切な資⾦計画となるよう、準備組合に対し指導、監督
○「らしさ」については、⼈それぞれの思いがあることから、なかなか⼀様にまとめることは難しいが、⼋幡⼀番街のにぎわいの継承、或いは葛飾⼋幡宮を活かしたまちづくりを目指す
○渓⾕状としてできた屋上空間には、⾞と⾃転⾞の往来はない
○現況に⽐べ、ゆとりある歩⾏者空間が整備される
※JR と市で協議中

上記を受けて、委員からの意見

「データでオーケーならば、何もしなくていいとか、問題がないという対応ではなく、⾏政とか、市の⽅には真摯に対応していただければと思っています」
「開発して建てたビルの裏側から国道14号に出て、左折進⼊、左折で出るというところの、国道14号との交通安全であったりとか、流れの主従であったり、この本⼋幡駅前の交差点も含めてですね。ここのところはよくよく慎重に検討された⽅が、よろしいかなと思います」
「私も前にこのフラスコ状みたいな、ロータリーというのは、どうも余裕がないよねと。バスの乗り合いの場所⾃体もなかなか、窄まったところに集中しているような形状をしていて、運⽤の仕⽅も問題があると。そういった⾯では、その辺の再配置は、先ほどのご説明の中では、検討していただけるということなのですが、やはり、その全体像が⼤きく変わるような⽤地の拡⼤が、このロータリー周辺は⾒込めないので、適切な運⽤を確保するためにも、きちんとこの組合施⾏でやる⼟地の中で、それが処理できるような仕組みを考えておかないといけませんので、ぜひその辺に関する要望事項を⼊れていただくとありがたいかなと思います」
「現在のところやはりその交通に関する⼼配がかなりあるということで、できれば審議会からの要望として、交通を今後きちんとやって欲しい」

■参考資料

警視庁

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