ローカルメディアに求められるのは「コラボレーション」と「引き算」【千葉の辺境でローカルメディアを考えるワークショップ0515】

 【千葉の辺境でローカルメディアを考えるワークショップ0515】には、16年ほどローカルメディアに取り組んできた人や、これから始めたいと考えている人など、さまざまな立場からの情報交換ができました。

 なかでも、印象に残ったトピックスをピックアップします。

1 SNSなどでの情報の押し付けに、疲れている人は多いという現状

 SNSで手軽に発信ができるようになったために、「もっと知って」「もっと見て」という情報があふれるようになって、「そんなに押し付けられても……」と疲れている人が多いのではないかという指摘がありました。「ネット断ち」「SNS断ち」が話題になったねという声も。

 単純接触効果を狙うことは大事ですが、世の中全体で過剰になっているために嫌悪感を抱く人が現れて、マイナスに働くこともあるという調査結果もありました。

 ローカルメディアについては、個人レベルも含めると大量に存在するため、情報発信のタイミングや回数には注意が必要かもしれません。


2 コロナ禍で、ローカルメディアのコンテンツも表現も変わらざるを得なくなった

 ビフォーコロナでは、祭りやイベント、ニューオープンなど、ローカルメディアで取り上げる話題には事欠きませんでした。
 それが今では、祭りやイベントは中止。ニューオープンについても、密を避けるために、「ぜひ足を運んでみてください!」などとは表現しにくくなったという感想がありました。

 また、ビフォーコロナでは「イベントがあるから紹介する」という受け身での情報発信だったのが、今では「ウィズコロナにピッタリなスタイルはこれ」という提案型の発信が必要になってきたという話題も出ました。



3 「地元回帰」は住民だけでなく企業のトレンドでもある

 テレワークの推奨で出勤を控えるようになったため、地元情報を求める流れになることは 「地元回帰」がトレンドの今は、地域の魅力を知ってもらうチャンスかもしれない でも紹介しました。

 これは企業についても当てはまり、「外部からお客さんを呼ぶのではなく、地元の人に利用してもらえるようにPRしたい」という案件が増えているとのこと。


4 やっぱりローカルメディア単体での収益化は難しい

 「地元の情報を発信して、多くの人に喜ばれて、PVなどが増えて、広告収入が得られる!」というのは、かなり難しくて、現実的ではないことを再確認しました。

【ローカルメディアのつくり方】再び訪れる未来と新しいローカルメディア で述べたとおり、今やメディアは、マスから個人単位まで含めて、レッド・オーシャンなのです。

今の時点ではレイトマジョリティ~ラガード


5 ペーパーやSNSなどメディアの特性に合わせて、表現を変化させる必要がある

 冊子、ペーパー、サイト、ブログ、YouTube、Facebook、Instagram、Twitterなどと、メディアの種類が増えてきていますが、情報の内容、表現などをメディアの特性に合わせて変化させなければ、魅力的に見えない(注目されない)という話題が出ました。


 このように、さまざまな話題が出た結果として、ウィズコロナ時代のローカルメディアは「コラボレーション」の必要があるのではないかと、ワークショップではまとまりました。

 イベントなどの中止でコンテンツが不足しているからといって、自分もあまり興味のないトピックで水増し発信をしても、ローカルメディアとしての魅力は薄まります。端的に言えば、「よほどの筆力がなければ、つまらない記事しかできない」。

 さらに、すでにマスメディアも収益面で苦しんでいる状況下で、視聴者や読者がそもそも少ないローカルメディアが広告などで収益化を目指すのは現実的ではありません。

 ならば、コンテンツについては、他のローカルメディアとコラボして、「束」で魅力を出す。例えば、私はJR市川駅周辺に住んでいるために、この地域の濃い情報を取れますが、そんな私が行徳に足を運んでレポートをしても、表面的な、薄っぺらい内容になります。前述の「水増し発信」ですね。

 ならば、発信回数が減らしてでも、『クラナリ』はJR市川駅周辺に特化し、行徳地域のローカルメディアと協力して、その地域の情報は引用などの形でコラボするのです。

 つまり「引き算」と「コラボレーション」。

 「束」になることで、発信する側に余裕ができれば、「もっと知って」「もっと見て」といった情報の押し付けをせずに済むでしょう。

 そして、協力体制を敷くことのさらなるメリットは、互いに意見交換をして、表現などをより洗練させられること。ローカルメディアの情報発信技術を高め合える仲間ができるというわけですね。

 視野を拡げれば、同じ「千葉の辺境」同志ということで、市川と浦安のコラボなども考えられます。

千葉県のサイトより

 もう一つの「コラボレーション」は収益化と関係します。ローカルメディアを「地域ブランド化の一つの手段」と位置付けて、単体で収益化を目指さないことです。地元でカフェなどを経営する人、グッズを企画して販売する人、小規模イベントを開催する人などとコラボして、全体で収益化を考えることが、経済状況が悪化されると予想される今は特に求められているのかもしれません。

 「ローカルメディアといっても、趣味のレベルで自分が楽しかったらいいんじゃない」という考え方もあるでしょう。
 しかし、誰にも注目されていないことを、コツコツと長く続けられるわけではありません。
 そもそも、「趣味レベルで、まったく注目されなくてもいい」という人は、ローカルメディアなど取り組まないものなのです。極端な表現をすれば、誰かに知ってもらいたい、心を動かしたいという思いが、ローカルメディアを始める動機。
 この意味で、収益化のためだけでなくPVは重要。モチベーションに直結します。

 『クラナリ』からは以上です。ワークショップの参加者の皆さん、ありがとうございました!!


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