ローカルメディアの「引き算」について、もう少し 【千葉の辺境でローカルメディアを考えるワークショップ0515】

 情報を受け取る側が発信する側に回ったのが、2000年代の初期でした。

 私自身については、データを確認したところ、1999年頃に個人サイトを作っていました。このときすでに、Webの知識がない素人でも、ホームページビルダーやDreamweaverといったソフトを使えばサイトが作れるようになっていたのです。

 2000年代の初期には、ブログとソーシャル・ネットワーキング・サービス (SNS)が日本で普及し始めました。
 ライブドアやニフティなどのブログサービスが始まったのが2003年。株式会社ミクシィが運営するmixiというSNSは、2004年に開始されました。サイトよりも手軽に更新できること、そして芸能人がブログを書くようになったことから、ブログやSNSの認知度が高まっていきました。


 また、Apple社が「iPhone」を2007年にアメリカで、翌年の2008年には日本で発売スタート。iPhoneの爆発的な人気がきっかけで、スマートフォン(スマホ)の普及が進んだとされています。


 携帯電話に関するデータを見ると、1996年では約867万台の契約数でしたが、2020年9月には約1億8522万台。日本の人口が約1億2650万人なので、1人1台以上契約していることになります。

 そして、2000年代の後半には、ネットで情報をやり取りすることが当たり前になっています。

 2010年くらいから、検索エンジンで引っかかりやすいキーワードを詰め込むのが、ネット情報配信のトレンドになりました。

 皆さん、一斉にキーワードを調べて、テキストを作っていくのです。企業も個人も。

 私は2017年頃にネットニュースに寄稿していたのですが、「最初の100字内に〇〇と××と△△を入れて原稿を書いてください」といった依頼はよく受けていました。


 結果として、内容が似たり寄ったりの横並びの情報がWeb上で氾濫することになったわけです。


 その後、2017年の医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」問題、それを受けてのGoogle日本語版の検索ランキングのアルゴリズム変更などの影響で、「PV(ページビュー、ウェブサイト内の特定のページが開かれた回数)を増やして広告料を得る」というビジネスが厳しくなりました。


 こうした問題の影響は、ローカルメディアにも及びました。

 2015年頃、ローカルメディアがブームになったといえます。行政だけでなく企業や個人が、「地域を盛り上げよう」と、こぞって市町村のPRに積極的に取り組んでいました。その主な舞台がWebで、写真や動画、テキストをサイトやSNSにどんどんアップしていたのです。


 それが現在、日本各地のローカルメディアのサイトを再訪すると、「Forbidden」「アクセスできません」となっていたり、変なサイトに飛んだり、更新がすっかり止まっていたりしているのです。コンテンツを集めたり加工したりする労力・費用がかかる割に、広告料が得られない。つまりは稼げないため、ローカルメディアが消えていったと推測しています。


 そもそも、「地域を盛り上げよう」といいながらも、自分の半径5メートル以内の仲間だけで盛り上がっているだけかもしれません。ちょっと凝ったデザインをしたり、オシャレなフレーズを考えたりして、仲間内で「いいね!」しているような状況。たとえPVが取れても、記事が「見られた」だけで読まれていない可能性もあります。

 どんな人に読んでもらうのか、そのために何を「やるか」よりも「やらないか」を明確にすることは大事です。

 そもそも、コロナ禍でマスメディアでも広告収入が減って苦戦しています。そんな中、ローカルメディアのほうがはるかに稼げない状況になっています。「だったら、やらない」という引き算も検討する必要があるでしょう。

 また、ローカルメディアで稼げなくても、ほかに稼げる仕事をやればいいだけの話かもしれません。これについては ウィズコロナ時代のローカルメディアに求められるのは「コラボレーション」と「引き算」【千葉の辺境でローカルメディアを考えるワークショップ0515】 で紹介しています。


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