【コミュニティづくり入門】ブームになった地域通貨。その後

 2000年頃に地域通貨は日本でブームになり、たくさんの地域で試験的に導入されました。
 一時は300を超える地域通貨が流通していたようです。
「日本における地域通貨の実態について ―2016年稼働調査から見えてきたもの― The Current State of Japanese Community Currency Activities Based on the2016Survey 泉 留維・中 里 裕 美」

 しかし、地域通貨を使って買い物ができないなどの不便があったことで、利用者が増えませんでした。そのため、長続きせず、消えていった地域通貨は少なくありません。

 市川市の会議録に、市川にあった「てこな」という地域通貨に関する記述が残っています。
https://www.city.ichikawa.lg.jp/cou01/kaigiroku20050908.html

 てこなで、防犯パトロールの実施・駅前清掃活動など、コミュニティ活動が盛り上がった地域もあったようです。
 ただ、ICカードだったことで大きな発展へとつながらなかったと、市の担当者は評価しています。コミュニティ活動の参加者が、子どもや高齢者など、ICカードを普段は使わない人々だったからです。

 てこなに限らず、ICカードシステム導入には端末の設置やソフト開発、カード発行などの費用がかかります。初期費用・保守費用が大きな負担になりそうですね。

 てこなについては、「市川市地域通貨モデル事業からの報告 ~地域の再生・活性化にどうつながったか」という講演内容のまとめで、詳しく紹介されています。
 「住民の多くは昼間は東京に行っていますので、東京都知事の名前は知っていても、千葉県知事や地元の市長の名前は知らないという人が数多くいます」と語られていて、市川市民の傾向をズバッと言い当てていると思いました。


 一方、利用者はさほど多くはないものの、地域内の助け合いが活発になるという効果を発揮したことで、現在も使われ続けている地域通貨もあります。
 千葉県鴨川市を中心に使われている「あわマネー」は2002年に有志10名でスタートしたそうです
 2015年には安房全域の約250名参加するネットワークに育ったとのこと。
https://www.facebook.com/yoshiki.hayashi0328

白間津の花畑©南房総市


 あわマネーのほか、神奈川県藤野の「よろず」「ゆ~る」、葉山の「なみなみ」、東京都早稲田の「アトム」、国分寺の「ぶんじ」、八王子の「てんぐ」なども現役の地域通貨です。

 また、「ご当地WAONカード」のように、企業が発行するIC カードと一体化した地域通貨が増えてきているようです。

 利便性とコスト削減を追求し、さまざまな場所で利用できて、長く存続させることを目的とするか。
 顔と顔を合わせたコミュニティのつながりを重視して、限られた範囲の限られた人々しか使わなくてもよしとするか。

 目的によって、地域通貨のあり方は大きく変わってきそうです。

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