語学と言語学との間には 〈市川ブックフェア2025〉
語学と言語学について、東京大学大学院人文社会系研究科・准教授の長屋尚典さんは、次のように述べていました。
言語という道具の使い方を学習するのが語学で、その道具の仕組みを理解しようとするのが言語学
語学は言語の運用能力の向上を目指しますが、言語学は運用能力はともかく言語の仕組みを明らかにするのが目的
https://note.com/norinagaya/n/n4d47f4869e34
非常にわかりやすい説明ですね。
ちなみに、AIは次のように教えてくれました。
ごがく【語学】Language
1.外国語を身につける勉強。また、その学科。俗に、外国語を使う能力。
「あの人は―に強い」
2.言語を研究する学問。言語学。
げんごがく【言語学】Linguistics
言語に関すること、特にその構造を研究する学問。Language is a system of communication used by humans, while linguistics is the scientific study of that language. The difference is comparable to the difference between an animal (language) and biology (linguistics), or a rock (language) and geology (linguistics). While language is the "what" we speak, linguistics is the "how" and "why" behind its structure, history, and function.
以上のことから、「語学オタク」はいても、「言語学オタク」はいないのではないかと。
語学オタクについては、「英語もドイツ語も北京語も広東語もヒンディー語もタガログ語も勉強しました」というように、一つの言語を学ぶと、別の言語も学びたくなってしまう性分を指しています。たくさんの言語を勉強しているうちに、「おっと、あの言語とこの言語は似ているな」などと何かをつかんでいくタイプではないでしょうか。
世界の言語数は、7000とも3000とも5000ともいわれているので、興味が横に広がり始めても尽きることはないでしょう。
一方、言語学は、一つの言語のメカニズムを理論的に追ってはまり込んでいく、いわば言語学自体がオタクという印象があります。どうでしょうか?? 偏見でしたらスミマセン。
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| #3735. 印欧語族諸族の大移動より |
外国語を学んでいる際、日本語との仕組みが異なっていると、「おいおい、どうしてこんなことになっているんだ……」と思ってしまいますよね(外国の人も日本語に対して同様に思っているでしょうが)。
私の場合はスペイン語の男性名詞と女性名詞。大学時代に第二外国語として選択し、「おいおい……」と頭を抱えていました。そして単位を落とさないレベルで勉強したわけです。
もしも私が語学オタクだったら、日本語と違うということが楽しくて、「どうして男性名詞と女性名詞ができたのだろう」「男性名詞と女性名詞を、ネイティブの人たちはどうやってマスターしているのかな」というように、うっかり言語学の分野にも足を踏み入れていたのかもしれません。
こうした意味で、語学と言語学とは切り離せない部分もあるのでしょう。とくにオタクの世界では。
ちなみに、三省堂のサイトによれば、インド=ヨーロッパ語族の多くの言語で、名詞に性があるのだそうです。ただ「男性名詞」「女性名詞」でも性別とは別で、あくまで文法。インド=ヨーロッパ語族の祖先が、名詞を男性・女性・中性に分類していたと考えられるとのこと。そして時代の流れで、各地で言語が発達して、名詞の分類も変わっていったようです。
冒頭で紹介した長屋尚典さんは「語学と言語学は別のものであることは正しくても、語学と言語学をあまりに切り離して考えたり、言語学における語学の重要性を軽視したりするのはよくないのではないかな」とも述べていました。
2025年12月7日に、市川市作家協会主催「市川ブックフェア2025」の一環として、市川市中央図書館の地下集会室でトークイベント「ああ素晴らしき語学オタクの道」を開催します。


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