市川市立図書館を週1ペースで利用する割に、図書館のことをよく知らなかった件について

 出版不況が続いてきた出版業界ですが、本との関係が深い図書館にも、深刻な課題があるようです。AIが次を挙げてくれました。

図書館の課題

予算と人員の不足:

図書館の運営には予算が必要ですが、地方自治体の財政状況の悪化に伴い、予算削減や非正規雇用の増加が問題となっています. また、図書館司書は非常勤契約が多いため、雇用が不安定で、専門的な知識やスキルを持つ人材の確保が難しい状況です。

利用者の減少:

インターネットの普及や、図書館に行く手間を面倒に感じる人が増え、図書館離れが進んでいます。

デジタル化への対応:

電子書籍の普及や、オンラインでの情報検索が容易になったことで、図書館の役割やサービスの見直しが求められています。

複本問題:

人気のある書籍を複数冊購入することで、出版社から「図書館の貸出が書店の売り上げを妨げている」という指摘もあります。


資料保存:

紙媒体の資料を長期的に保存するための環境整備や、劣化対策が課題となっています。


地域ニーズへの対応:

図書館は、地域住民の学習や文化活動を支援する役割も担っていますが、地域の実情に合わせたサービスを提供することが求められています.


市川市立中央図書館




 図書館に関するニュースで目にしたのが、岐阜県岐阜市の岐阜市立中央図書館と、東京都清瀬市の図書館の統廃合です。それぞれについて調べてみました。

岐阜市立中央図書館


 2015(平成27)年にリニューアルする前と比べると、利用者数は10倍以上に増えているのだそうです。
岐阜市立中央図書館が入るぎふメディアコスモス(素材ダウンロードぺージり)



○構想期間:10年
○開館:2015(平成27)年7月
○施設名:ぎふメディアコスモス(複合施設)
※中央図書館、市民活動交流センター、多文化交流プラザ、市民ホールなどで構成
○設計:伊東豊雄
○総事業費:125億円
→土地取得:約29.5億円  設計・建設:約80億円
→国庫補助金(国が地方公共団体に財政援助や特定の施策のための奨励として寄付金):39億円 合併特例債(市町村の合併で必要となる事業に対し、事業の財源として使用可能な地方債):56億円

 岐阜大学医学部の移転で市街地にできた空き地を活用するため、民間による産業振興も当初は検討したものの、協議不調だったため、行政主導で文化拠点を作ることになったようです。

 施設の運営は岐阜市で、図書館長は公募。初代館長は吉成信夫さんでした。

元・みんなの森 ぎふメディアコスモス 総合プロデューサー
1956年生まれ、東京都出身。成蹊大学卒。C(I コーポレート・アイデンティティ)コンサルティング会社(東京)などを経て、家族と岩手県に移住。石と賢治のミュージアム(一関市)立ち上げに奔走。廃校を活用したサスティナブルスクール「森と風のがっこう」を開校。県立児童館いわて子どもの森初代館長を務めた。その後、岐阜市立図書館長、ぎふメディアコスモス総合プロデューサーを2024年4月まで9年間務めた。東海国立大学機構参与、明石市本のまち推進アドバイザー、中部学院大学・短期大学客員教授も務める。


 「子どもの声は未来の声」という理念で新生児から高校生まで、子どもたちが利用しやすい場所を目指しています。中高生専用の勉強ができるスペースが設けられています。
 また、平日の夜には「大人の夜学」という名称のセミナーが行われ、開催回数は年間で400回以上。

 吉成さんは5年間館長を務め、現在の館長は長尾勝広さんです。長尾さんは2014年に岐阜市市民参画部市民参画政策課の所属だったようなので、現在も職員かどうかは不明ですが、岐阜市の関係者であると考えられます。

岐阜市立中央図書館(素材ダウンロードぺージより)


清瀬市の図書館の統廃合

 東京都清瀬市は、図書館を統廃合したことがニュースになっていました。流れを見ていきましょう。

 2023(令和5)年6月、「図書館の今後のあり方について市民の意見を聞く」として、「これからの清瀬の図書館を創造する会」を清瀬市は設置しました。
 そして、6館あった市立図書館のうち、中央図書館・下宿図書館・野塩図書館・竹丘図書館の4館を、2025(令和7)年3月31日で閉館しました。現在運営されているのは駅前図書館(清瀬駅近くのクレアビル4階)と元町こども図書館の2館です。また、市民が無料で利用できる本の宅配サービスを2025(令和7)年4月に始めています。

 なお、中央図書館については、「令和7年度には、清瀬駅南口地域児童館・中央図書館等複合施設及び中央公園整備基本計画により中央公園敷地内の線路側へ移転予定」なので、単純な「廃止」ではないということです。
清瀬駅南口地域児童館・中央図書館等複合施設及び中央公園整備基本計画より


 部外者の市川市民として気になるのは、「素晴らしい施設はよいとして、人口減少時代のこれからも維持していけるのかな……」という点です。

 岐阜市の2025(令和7)年の市税収入は、「定額減税の影響の縮小や給与所得の増加による個人市民税の増など、6年度予算に比べ5.81%増の687億円程度」で歳入の34.8%とされています。
 清瀬市は「市税は、雇用・所得環境の改善及び定額減税の減により個人市民税の増収が見込まれるため、全体では前年度より 7 億 8,419 万円増額の 103 億 4,470 万円」。

 ちなみに千葉県市川市については962億円で、歳入の51%でした。

 私事ですが、2023年に市川市中央図書館でイベントを開催した際、館長と名刺交換をしました。そこには「市川市教育委員会 生涯学習部 中央図書館」と記載されていました。

 教育委員会。

 もちろん名前は知っていましたが、どのような組織なのかは知らなかったので、検索してみました。
 まず2025年の市川市組織図では、教育委員会の教育振興部図書館課が、図書館の運営管理を担当しています。これは組織の見直しが行われたためとのこと。


 そして、文部科学省のサイトでは、次のように記載されています(太字はクラナリにより)。
 教育委員会は、地方自治制度上、首長に並ぶ執行機関であり、教育事務全般について事務局を指揮監督し執行していくものとされている。

教育委員会は、都道府県及び市町村等に置かれる合議制の執行機関であり、生涯学習、教育、文化、スポーツ等の幅広い施策を展開。

[教育委員会制度の特性]
 
1 首長からの独立性
   行政委員会の一つとして、独立した機関を置き、教育行政を担当させることにより、首長への権限の集中を防止し、中立的・専門的な行政運営を担保。

2 合議制
   多様な属性を持った複数の委員による合議により、様々な意見や立場を集約した中立的な意思決定を行う。

3 住民による意思決定(レイマンコントロール)
   住民が専門的な行政官で構成される事務局を指揮監督する、いわゆるレイマンコントロールの仕組みにより、専門家の判断のみによらない、広く地域住民の意向を反映した教育行政を実現。

 2015(平成27)年3月に発表された市川市立図書館運営基本計画では、次の方針が打ち出されていました。この基本計画は、もちろん、教育委員会が作成しています。

1.情報拠点として市民の学びを支える図書館 
2.子どもの成長をサポートする図書館
3.地域の文化を育み、豊かなまちづくりを支える図書館

 図書館については、運営は市川市で、統廃合といった意思決定は教育委員会ということになりそうです。そして教育委員は、地域住民の代表として、教育に関する意思決定に参加しています。

 こうして見ていくと、清瀬市での図書館の統廃合について、「市民の意向を無視している」というような声が上がったようですが、地域住民の代表が集まる教育委員会で決めたことなんだし……というモヤモヤ感があります。

 パブリック(公的)な図書館の役割とは、何なのでしょうね。
 かつて市川市学習交流施設 市本が設けられましたが、図書館とはどのようなすみ分けがされていたのでしょうか。
 本が置いている公民館との違いは何でしょうか。

 少子化が進む中、図書館の原点について考える時期が来ているのかもしれません。

※追記 2025年8月3日
 アメリカや北欧、台湾、韓国、中国などでは無人図書館が普及しつつあるとのこと。
 神奈川県秦野市では、2015(平成 27)~2017(平成29 )年 2 月に、本町公民館図書室で図書無人貸出サービス「スマートライブラリー」の実証実験が行われました。
 結果については、次のように報告されています。
66 歳以上で減少したのは、76 歳から 80 歳の利用者だけであり、66 歳以上全体では 4.1 パーセント増加しました。中には無人化(機械化)を嫌って利用をやめた方もいるようですが、高齢者でも許容できる範囲の環境の変化だったようです。

16 歳から 18 歳までの年齢層、すなわち高校生の利用の伸びが大きい

バーコードで管理している図書館のシステムと、IC タグで管理するスマートライブラリーを並行して運用すると、双方のシステムの情報を結びつける作業等が煩雑となり、無人化(機械化)しても人件費の節約にはつながらない

 このスマートライブラリーについて、その後どうなったのかは、検索してもヒットしませんでした。

■主な参考資料 
岐阜市 みんなの森 ぎふメディアコスモス へ行ってきました

Press Release(H26/7/7)

東京 清瀬市立図書館閉館めぐり住民投票行う条例案 否決

これからの清瀬の図書館を創造する会

東京 清瀬市立図書館閉館めぐり住民投票行う条例案 否決

組織の見直しと組織数の推移

教育委員会会議

市川市立図書館運営基本計画
3-(1)市川市の歴史・文化の保存と継承
①地域資料の収集と提供
②地域資料の保存
③地域情報の積極的な発信
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