人口減少時代のインフラ維持問題と水道料金。例えば千葉県知事選での論点「県営水道料金値上げ」

 昨日(2025年2月27日)、任期満了に伴う千葉県知事選が告示されました。3月16日が投票日です。


 候補者の半数が「なんかその……」という感じではありますが、今回の選挙戦の論点の一つが県営水道料金の値上げです。

〇千葉県知事選告示 4人が立候補届け出 3月16日投開票 県営水道料金値上げ災害対策、子育て支援策などが論点か

〇千葉県知事選、初日の訴えは? 「老朽インフラ危機防ぐ」熊谷俊人氏 「県営水道の値上げ中止」小倉正行氏

〇【千葉知事選】4人立候補…異例の選挙戦へ “県外での選挙活動”公言する候補者も

 水道代が公約になっていた選挙として、2023年11月12日に投票が行われた神奈川県真鶴町の町長選挙があります。
 
神奈川県サイトより、一部改変


 今年1月に、真鶴町に関連するニュースが流れてきました。

 神奈川県真鶴町は19日、県内最高水準の水道料金をさらに値上げする方針について、町民への説明会を開いた。小林伸行町長は「水道代値下げ」の選挙公約を破って値上げに転じたことを陳謝した。

 町は水道の料金体系を見直し、7月から全体で約21%値上げする方針。3月の定例町議会に条例改正案を提出する。

 出席者からは、町が水道水の一部を湯河原町から購入していることに関する質問が相次いだ。購入費の削減を求める意見に対し、小林町長は湯河原町との交渉が進んでいない事情を明らかにし、削減が難しいことへの理解を求めた。


 調べたところ、確かに「県内ワースト1位の上下水道料金を安くします。」という公約がありました。

 神奈川県の中で最も水道料金が高く、県内唯一の過疎地域が真鶴町とのこと。個人的には「海も山もあり、自然豊かで、素敵なホテルがある町」という印象を抱いていたので驚きました。

 真鶴町は面積が7.05 ㎢と狭く、取水できるような大きな川は流れておらず、ダムもないようです。海から山までのアップダウンが非常に激しく、こうした地形が水道料金に影響を及ぼしているのでしょう。
 上水道には、湧き水や地下水のほか、隣の湯河原町の水が使われているとのこと。真鶴町内の浄水場は、次の4カ所です。

江之浦水源水系 湧き水、地下水
岩水源水系 地下水
棚子下水源水系 地下水
湯河原分水水系 地下水

 
 真鶴町は雨水が浸透しやすい土地であり、豊富な河川が存在しません。そのため、昔から井戸や湧水は人々の生活と深い関わりを持っており、飲用・事業用・農業用・雑用水として暮らしを支えてきました。

 水道が普及するにつれて、井戸や湧水を利用する方は減ってきましたが、これからも人々の生活を支え、災害時のライフラインとして利用するとともに、更なる活用を図っていくことが重要です。そのため、貴重な水源を将来にわたって保全・再生していかなければなりません。

 真鶴町は海に面しているので、地下水を保全する上で、特に塩水化の進行が懸念されます。一度塩水化が生じてしまうと、なかなか元の状態には戻りません。そのため、真鶴町では継続的に地下水のモニタリングを行い、地下水の状態を監視しています。


 また、終末処理場(下水処理場)も、真鶴町にはないようです。

 隣町処理施設で汚水処理を委託しているため処理場はない。

 隣の湯河原町に上下水とも頼っているため、水道料金が高くなっていることが推測できます。「政治家は何をやっていたのだろう……」と思ったら、いわゆる汚職やらなんやらで、とんでもないことになっていました。3年の間に3回もの町長選挙。税金の無駄遣いですね。

 選挙人名簿の不正利用問題に端を発した神奈川県真鶴町の松本一彦町長(57)に対する解職請求(リコール)は、その是非を問う24日の住民投票で、賛成が2204票と有効投票数の6割超を占めた。即日失職した松本氏は出直し選への不出馬を表明。リコール運動をけん引した地元の政治団体幹部は、この3年で3度目となる町長選を機に、町政混乱の収束と町内分断の修復が進むことを期待する。


 前町長のリコール(解職請求)成立に伴う神奈川県真鶴町の町長選挙で2023年11月12日、元横須賀市議の小林伸行氏が初当選した。

20年の町長選と21年の町議選で名簿不正利用問題が発覚した。前町長が選挙人名簿を不正コピーして町長選に初当選した後、町議選で役場OBを当選させるために役場幹部へ再度コピーを依頼。これが、前町長のリコールを招いた。


 前町長の名前「松本一彦」でWikipediaに情報がまとめられていますが、発言が二転三転したりして在職中に職員が大量に辞めるなど、混乱ぶりがわかります。
 
 真鶴町は、「水道料金の高さから人口流入や企業誘致が進まず、過疎化が進み、水道の利用者が減って料金が入ってこないため、水道料金を高くせざるを得ない……」というような悪循環に陥っているかもしれません。
 そんな中、政治的に混乱していたわけです。

 これは真鶴町だけの問題ではないでしょう。
 往々にして私たち日本人は、政治に無関心でした。
 加えて、インフラに対しても、「当たり前」「何もしなくても、自動的に与えられるもの」と、やはり無関心になりがちでした。上下水道については特にそうです。
 しかし、こうした態度を見直さなければならないタイミングが来たのかもしれません。水道管の老朽化や技術者の減少などが、現在の課題として挙げられています。

 上下水道でひとたび事故が起こると、住民の生活は長きにわたって脅かされます。

 1カ月前に、埼玉県八潮市では下水管破裂が原因とされる道路陥没事故が起こりましたが、現在でも地元住民は「下水が臭い」などと訴えているとのこと。
 このような事態を避けるためにも、料金が安い・高いだけでなく、町のあり方から見直す必要がありそうです。「配管効率がすごくいい」おかげで千葉県で最も水道料金が安い、習志野市のまちづくりが参考になるかもしれません。

〇千葉県営水道料金の値上げ方針に関連して、「葛南地域」の水道料金を比較してみた



 地方選挙といえば、愛知県岡崎市では、市長選で「1人5万円還元」を公約して当選した例がありますが、結局、実現していませんでした。
 もちろん、守らないほうが悪いのですが、その公約が実現できるのかどうかを、選挙民である私たちも確かめたほうがよさそうですね。

〇「市民に一律5万円」の公約断念した市長、別の公約また一つほご

〇実現しなかった1人5万円 「もうだまされない」モヤモヤ残る市長選



■主な参考資料
八潮の陥没、住民から臭いや騒音の訴え相次ぐ「住める環境ではない」

報道による水道料金改定に関する一部誤報について
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