千葉県営水道料金の値上げ方針に関連して、「葛南地域」の水道料金を比較してみた
千葉の辺境「葛南地域」の5つの市で、水道料金を比較してみました。「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?全国推計ならびに報告書について」(令和6年4月24日」)の「資料2 全国水道料金推計一覧」(令和6年4月24日)、そしてOCN不動産によると、習志野市は葛南地域のみならず、千葉県で最も水道料金が安くなっています。
ちなみに、「資料2 全国水道料金推計一覧」では、習志野市と八千代市しかありません。
事業主体名 料金(2021年度)(20㎡使用時)
習志野市 2101円 県内1位
八千代市 2420円 県内4位
OCN不動産のデータでは以下のとおりで、何年度のデータなのかは記載がありませんでした。
習志野市 2,532円 県内1位 全国35位四街道市 2,948円 県内2位 全国97位市川市 3,760円 県内8位 全国399位浦安市 3,760円 県内8位 全国399位船橋市 3,760円 県内8位 全国399位
全国で最も水道料金が高いのが北海道夕張市で6966円と「資料2 全国水道料金推計一覧(令和6年4月24日)」では報告されていました。
上記のデータを見る限り、習志野市は県内1位、八千代市は県内4位の安さで、残りの3市も含め葛南地域の水道料金は千葉県では安いといえます。
しかし、上水道は「市町村経営原則を維持しつつ、都道府県が経営主体」で、千葉県が経営主体となっているようです。どうして同じ千葉県内の、近接した市町村で、水道料金に差が出るのでしょうか。
○現行の水道法は、水道事業は原則として市町村が経営するものとし、市町村以外の者は、給水しようとする区域をその区域に含む市町村の同意を得た場合に限り、水道事業を経営することができることとされている。⇒現在でも都道府県は水道事業を経営することが可能。
盛岡市上下水道局のサイトでは、以下の条件で水道料金が左右されると説明されていました。
水道料金を左右する条件
1 水源の水質→薬品費や浄水施設の維持費に影響を与える
2 人口密度→密度が高ければ、少ない管や水道施設で多くの人に水を届けられる
3 浄水場から給水先まで距離、水源と浄水場との距離→近ければ、少ない管やポンプ施設で済む
4 浄水場の標高→高ければ位置エネルギーで水を送れるが、低いとポンプで水を押し上げなければならない
5 水道管の老朽化→更新するための費用が必要になる
6 寒冷地→水道の凍結を防ぐために、配水管を深いところに埋める必要があるためコストが上がる
習志野市の場合は、「2 人口密度」が効果を発揮しているようです。コンパクトシティを推進している市ですからね。
■習志野市立地適正化計画
https://www.city.narashino.lg.jp/material/files/group/34/narashinosirittitekiseikakeikaku-gaiyou.pdf
習志野市の職員が、水道料金の安い理由を次のように述べていました。
【公営企画課長 米山】地下水を使っているということではなく、やはりガス事業、それから下水道事業と一元的に行っていることがまず一つです。また、先ほど申したように、水道管とガス管を同時に施工することで、今回水道事業者でかかる費用、ガス事業者でかかる費用を一律とした場合に、2つ合わせることで費用を抑えられる。それから職員も、会計上は事業別に、ガス事業会計、水道事業会計、下水道事業会計と分かれているのですが、だからといってガス事業が、ガスにしか携わらない、水道事業が水道にしか携わらないわけではなく、お互いにそこは共有して仕事ができるということで、安く、人件費も抑えられています。それから、習志野市の特徴といたしまして、非常にコンパクトでまとまっている。つまり配管効率がすごくいいと。ここも人口密度的には非常に高い地域になっていますので、そこも安さの理由になっています。
ガス事業も市営(公営)。ガス管も水道管も地中に埋めるものなので、ガス事業と上下水道事業を効率よく進めているのだそうです。さすが!
習志野市の水道料金は令和7年4月1日に上がるとのこと。とはいえ、県内でも水道料金の低い市であることには変わりありません。
水道料金改定(平均改定率+23.68%)令和7年4月1日から水道料金を改定します令和7年4月から市営水道の料金を改定します(習志野市議会令和6年第4回定例会において新料金案が可決されました)
なお、習志野市のガス事業の沿革は、以下のサイトにあります。1957~1997年に天然ガスを採取していたのですね。現在は、液化天然ガス・県内産天然ガスを購入しているとのこと。
ところで、千葉県では2026年度に県営水道料金の値上げが予定されています。熊谷俊人知事が2024年度12月定例県議会の代表質問に関連して、2024年11月22日に以下のポストを行っています。
●県営水道料金の値上げ将来的な水の需要量、施設の更新・耐震化に係る事業量を精査するとともに、ICTを活用した業務の効率化など支出の見直しを行い、値上げ幅について検討を進めてきた。この結果に基づいた場合、水道料金は約23%の改定が必要となるが、一方で、値上げによる使用者の負担を少しでも軽減するため、交付税措置のある一般会計からの繰り入れを行うこととし、値上げ幅を20%程度に抑えていきたいと考えている。※ここ数年のエネルギー価格の高騰などによって千葉県営水道だけでなく、全国の水道で20%前後の大幅な値上げが行われています。千葉県営水道は30年近く料金改定を行っておらず、このままでは早い段階で赤字になり、内部留保をどんどん取り崩していくこととなります。
埼玉県八潮市での下水道管の破損による道路陥没事故に続く形で、2月11日に千葉県大網白里市で水道管が破裂して道路から水が噴出する事故がありました。
千葉県警東金署などによると、陥没したのは住宅地を通る市道。穴は幅約2メートル、深さ1.8メートルほどで、水は一時、高さ約10メートルまで噴き上がったという。水道管は直径約15センチのビニール管で、約50センチの亀裂が確認された。埋設から三十数年が経過しており、経年劣化のため破損したとみられる。この影響で21世帯が断水したが、その後に復旧した。
「人口減少時代の水道料金はどうなるのか?」は、一般社団法人水の安全保障戦略機構とEY Japanが発表しました。研究結果によると、2046年度までに料金値上げが必要とされる水道事業体は、全1243事業のうち1199事業体で、96%となります。
蛇口をひねれば清潔な水が得られる、とても便利な生活。これを支えてきたのは、人口増加でした。しかし、野放図に町が広がり、それに合わせて上下水道を作っていった結果、人口が減少する局面で、水道管の老朽化に対応するコストが上がってしまいました。
上下水道だけでなく、まちづくりのあり方から考え直すタイミングが今なのかもしれません。
現場力が強いため、戦術の工夫で意外に長持ちしてしまう。根本的な戦略を見直したり基本構造を変えたりといったことが後手に回ってきた。日本の産業を象徴しているように感じる。
■参考資料
盛岡市上下水道局 第5回 水道料金が地域ごとに違う理由は?
千葉県の水道事業の現状と課題解決に向けた取組
将来の事業環境(事務局からの報告)
北海道大学都市地域デザイン学研究室 夕張
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