「8050問題」から「9060問題」へと移行する中年ニート・ひきこもりのサバイバルプラン2025 『お金のプロに相談してみた! 息子、娘が中高年ひきこもりでもどうにかなるって本当ですか?』
厚生労働省はひきこもりとニートを次のように定義していました。
ひきこもり
「さまざまな要因によって社会的な参加の場面がせばまり、就労や就学などの自宅以外での生活の場が長期にわたって失われている状態」
ニート
「15〜34歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない者」
2023年3月に、内閣府が発表した調査結果によると、15~64歳でひきこもり状態にある人は全国で推計146万人。そして、中高年(40~64歳)では女性が52・3%で半数を超えていました。なお、15~39歳だと、女性の割合は45・1%でした。
中高年ひきこもりを高齢の親が支える問題は「8050問題」と呼ばれていますが、現在では「9060問題」「10070問題」へと移行していると、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんは『お金のプロに相談してみた! 息子、娘が中高年ひきこもりでもどうにかなるって本当ですか?』(時事通信社)で述べていました。
ニートについては、2017年5月30日付の日本経済新聞が「総務省の2016年の労働力調査を見ると、35~59歳の“中年ニート”は123万人いることが分かった」と報じていました。
123万人という数字に驚いていたのですが、2023年7月20日付の現代ビジネスの記事には、次のように書かれていました。
厚生労働省の「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の要約」 によると、2022年の非労働力人口(就業意思のない者、ニートも含む)は4,128万人。45歳~64歳のいわゆる中高年世代に絞ると、その数は524万人(2022年)に上る。
中高年ニートが524万人。日本経済新聞の記事とは年齢層が異なっているものの、6年の間に中高年世代でニートがかなり増えていると考えられます。
ひきこもりの場合、不登校からそのまま家に閉じこもる生活を続けていることが多く、ATMでお金をおろしたり、電話をかけたりといった「社会的な手続き」がまったくできない状態で大人になってしまいがちです。そのため、お金と手続きのやり方の両面で、親がまだ元気なうちに「親亡き後」の体制を整える必要があるのです。
ひきこもりの子どもが50歳を過ぎていると、体制が整わないままに親が亡くなって、ひきこもりの子どもの兄弟姉妹が途方に暮れるケースもあると、畠中さんは述べています。
兄弟姉妹については、親がひきこもりの子どもに手をかけすぎて、結果として不公平な扱いをしていることも珍しくありません。ですから、ひきこもりの子どものサポートを兄弟姉妹にお願いする際には、最初に、不公平な扱いを親が謝罪することが重要とのこと。
親がすまない気持ちを伝えておけば、後々の兄弟姉妹の対応も変わることが期待できます。兄弟姉妹が結婚している場合は、配偶者が同席しているところで話をしましょう。
ひきこもりの子どもが一人っ子の場合だと考えられるのですが、親が介護を必要とする状況になってから、訪問ヘルパーがひきこもりの子どもを発見するパターンが増えているようです。
また、ヘルパーが家に来ることがストレスとなって、ひきこもりの子どもが精神的に不安定になり、訪問ヘルパーを追い返したり、家の鍵を取り換えて入れなくしたりするケースもあるとのこと。
子どもの肉体的、精神的な負担を考えても、「自宅で最期まで介護を受け続ける」のは難しいと考えたほうがいいでしょう。
当たり前の話ではありますが、私たちは一日一日老いて、衰えていきます。目は見えにくく、耳は聞こえにくく、物忘れが増えます。脳梗塞や認知症のリスクは高くなり、突然倒れて死んでしまう可能性もあります。
ですから、資産状況については、手書きでノートに記すのがポイント。パソコンの場合、IDやパスワードがわからなくて、口座状況が把握できなくなることもあるからです。
加えて、ネットバンクなどのIDやログインパスワードをまとめたパスワード帳を作っておくと安心。パスワード帳が盗まれるリスクもあるので、パスワードを「好きな花と3ケタ」などのように親子でなければわからない合言葉にしておくとよいとのことでした。
また、株や投資信託などの運用商品は、運用している本人が認知症になると、たとえ後見人がいても、本人が亡くなるまで換金できません。資産が1億円あっても、株や投資信託であれば、高齢者施設の入居金などに使えない状態ということです。
そのため、70歳を過ぎたら、運用商品を少しずつ解約して、銀行預金に移すことを畠中さんは勧めていました。なお、認知症のリスクが高くなるのは、一般的に65歳以降とされています。
「社会的な手続き」の一環として、まず、電気やガス、水道の名義は、ひきこもりの子どもに変えておいたほうがよいそうです。そうせずに親が亡くなると、子どもは「在宅ホームレス」になるリスクがあります。
たとえば長期のひきこもりの子どもで、親が突然亡くなってしまい、立派な家や多額の財産が残されたにもかかわらず、手続き方法がまったくわからないために、そのまま放置。電気やガス、水道が止まった「在宅ホームレス」になってしまったことがある。親の葬式は、病院から連絡を受けた親戚が執り行ったと聞いて、その点だけは安心したが、ひきこもりの子どもは行政が手助けをするまで、半年近くライフラインのない家に住んでいたそうである。
また、ひきこもりの子どもの口座にお金を振り込む際は、年間110万円までならば贈与税の基礎控除範囲内です。ただ、決まった時期に同じ金額の振り込みをすると、計画的な贈与(定期贈与)と見なされる可能性があるので、不定期に行います。例えば40万円、40万円、30万円と分けて、毎年、違う月に振り込むのです。
『お金のプロに相談してみた! 息子、娘が中高年ひきこもりでもどうにかなるって本当ですか?』には、生活保護についても触れられていますが、「財産を相続したら保護費の返還を求められた」など、受給の条件その他は思いのほか複雑でした。
本書にはさまざまなケースが紹介されているので、それらを参考にしながら、親が若く元気なうちにサバイバルプランを作成し、親子で共有することが求められているのではないでしょうか。
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