これからの市川市民として 「ただ老いる町」「集約化する町」「新陳代謝する町」の話がしたい その1 昭和という時代とヴィレッジヴァンガード ニッケコルトン店閉店
明日、2025年1月5日に、ヴィレッジヴァンガード ニッケコルトンプラザ店が閉店します。
ヴィレッジヴァンガード、略して「ヴィレヴァン」の経営状況については、以下の記事で紹介しました。
1986(昭和61)年創業のヴィレッジヴァンガードは、「遊べる本屋」をキーワードにした雑貨店兼書店です。出版不況が悪化の一途をたどり、書店数は漸減を続けています。遊べようと遊べまいと本屋という業態は経営維持は厳しくなっているのが現状。
日本出版インフラセンターによると、2024年3月時点の全国の書店数は1万918店で10年前の1万5602店から約3分の2になったという。
そして、本と雑貨というモノを扱うのは、昭和世代のモノ消費(商品の所有を重視する)の象徴なのかもしません。ヴィレッジヴァンガードの創業年はバブル景気(1986~1991年)の始まりで、ブランド品や不動産を買い漁る人々がいる一方で、その軽薄さに乗り切れない、あるいはせせら笑う人々がサブカルへと流れていたようにも思えます(あくまでも主観的に)。そんなサブカル文化の象徴が、ヴィレッジヴァンガードでした。このような二極化もまた昭和。
モノ消費の象徴といえば、百貨店。百貨店の衰退も、さまざまなメディアで報じられてきました。電子商取引(EC)の増加も背景にあるのでしょうが、「一流品・ブランド品を所有したい」という欲求が減退していることも関係していると考えられます。
2021年の全国の百貨店売上高は4兆4000億円で、ピークだった1991年の9兆7000億円から半分以下の水準に落ち込んだ。店舗数も268店から、189店に減った。
消費傾向は、昭和、平成、令和と時代とともに変化しました。「港区女子」などのごく一部を除ければ、ブランド志向が低く、所有欲が希薄で、タイムパフォーマンスを重視するのが、Z世代といわれています。この世代では、メインカルチャーとサブカルとの境界も曖昧になってきています。
加えて、「結婚して一人前」「家を持って一人前」といわれていた昭和世代ですが、少子高齢化が進んだ令和の今、壮年になってからも親と同居する割合が増えてきています。
親と同居する40・50代のシングルの実態と課題より |
昭和中期は高度経済成長期に当たり、「ウサギ小屋」と揶揄された集合住宅がたくさん作られました。住宅地については、野放図に開発され、道が曲がりくねって車が通れない箇所も散見します。そして、庭がないどころか、隣の家との間を通り抜けるのも難しいほど敷地が狭く、日当たりが悪い家は少なくありません。
昭和であれば「小さかろうが、暗かろうが、職場から遠かろうが、一戸建ての主になれればそれでよい」という価値観だったのでしょう。そうした家が、転居や死亡などのライフイベントで放置され、持て余され、空き家になっています。昭和中期はオイルショックの影響もあって、建材などが安っぽい傾向があり、中古住宅としてもニーズの低い家が多数できてしまいました。
「ウサギ小屋」については、自分の話で恐縮ですが、東京で一人暮らしを始めたときは、六畳一間の1Kで、トイレ・洗面台・ふろが1つになった3点ユニットバスでした。当時はこれが一般的でしたが、現在ではこうした間取りは不人気で、新しい物件ではバス・トイレ別のほうが多いとのことです。
地方の地方の貧しい少年が、首都圏に出てきて極貧生活を送った末、ロックのカリスマに成り上がる……これも昭和の物語かもしれません。
矢沢永吉さんは『成りあがり』で、ジャガーさんは「上がり成り」 |
令和だと、動画をアップしてバズれば成り上がれる可能性があるので、地方でも首都圏でも状況は変わりません。首都圏で極貧生活を送るぐらいならば、生活環境の整った実家暮らしで音楽活動を続けるかもしれません。
昭和
○モノ消費
○ブランド志向が明確
○所有欲が強い
○「家を持って一人前」という価値観
○「夫は働いて妻は専業主婦」という家庭内役割分担が明確
○メインカルチャーとサブカルチャーの境界がわかりやすい
○就職などで地方から東京に流入した大量の若者が、結婚その他でマイホームを求め郊外(神奈川県、埼玉県、千葉県など)に移動した
令和
○エモ消費
○ブランド志向が曖昧(センスがいいと思われたい、みんなと一緒だとちょっと恥ずかしい)
○所有欲が希薄
○大人になってからの親との同居に抵抗感は低い
○性別による役割分担が曖昧(夫婦共同で仕事も家事も子育てを行う)
○メインカルチャーとサブカルチャーの境界が曖昧
○そもそも若者が少ない
○ネットの発達で東京と地方の差が縮まった
消費傾向や価値観が変わってきたものの、町を含めた住環境は昭和を引きずり、それが「新鮮で懐かしい」と盛り上がる一方で、狭い・暗い・使いにくいと空き家やシャッターが下りたままの店が増えているのが現状ではないでしょうか。
今、私たちが住んでいる市川市は、歴史を振り返ると、東京からあふれ出した人々の受け皿として発展してきました。少子高齢化で東京からあふれる人が減り、首都圏で人口争奪戦が始まっている今、市内の町はどう変化していくのでしょうか。
一口に「市川市」といっても、交通事情や人口増の背景、生活環境などはエリアで異なります。市川みらいアーカイブで区分したエリアごとに、これからの町について検討していきます。
■参考資料
親と同居する中年未婚者の増加と生活上のリスクへの対策(1/2)
賃貸一人暮らし調査[2] バス・トイレは一緒でもいい? 別がいい?
Leave a Comment