生命の科学 アーユルヴェーダ ~ 概念
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Photo by Pratiksha Mohanty on Unsplash |
インドの伝統医学であるアーユルヴェーダ(Ayurveda)が日本で人気を呼んだのは、1990年代のこと。当時、インドの霊能者で宗教指導者であるサイババが日本で一大ブームとなり、それに伴ってアーユルヴェーダも広く知られるようになりました。
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Sathya Sai Baba. (www.devotionalindia.com). India, 1986. User:SSB - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=31170497による |
その頃、日本の一部で評判になったのは、痔瘻の手術をアーユルヴェーダで行うというもの(クシャーラ・ソートラ)。当時の富山医科薬科大学(2005年に国立大学法人富山大学として統合)の研究所で、アーユルヴェーダも研究されていたため、私は取材に出向いたことがありました。
さらに、ある大学の研究者に紹介してもらって、インドまでアーユルヴェーダの取材をしに行きました。
このように、日本の医療分野などでも注目を集めたアーユルヴェーダ。
ただ、漢方(漢方薬、鍼灸)とは違って、アーユルヴェーダに関する医師の研究は非常に少ないものです。そして、どちらかといえばエステなどの美容に取り入れられていったという印象があります。「アメリカのモデルや女優がアーユルヴェーダのメソッドを美容法として行っている」とメディアに取り上げられたことも、その一因かもしれません。
その後、2015年頃に「白湯(さゆ)」を飲むことが一大ブームになりましたが、これもアーユルヴェーダの考え方によるものです。マハリシ南青山プライムクリニック院長の蓮村誠医師が、白湯の飲み方について詳しく解説していました。
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白湯とは、一度沸騰させた湯 |
さておき、ここでは1990年代に私が自分なりに学んでいたアーユルヴェーダの知識について紹介します。資料についてははっきりと覚えていないのですが、『女性のためのアーユルヴェーダ』(著/ウパディヤヤ・カリンジェ クリシュナ 春秋社)や、蓮村医師・上馬場和夫医師の著書がベースになっていると思われます。
□アーユルヴェーダの概念
アーユルヴェーダについては、「インドの伝統医学」と紹介されています。
「伝統」という言葉から、なんだか古い言い伝えをずっと守り続けているというような印象を受ける人もいるかもしれません。しかし、私自身は、アーユルヴェーダは呪術的ではなく、非常に論理的な医学という印象を抱いています。とにかく理屈っぽい。
人間や自然、命について、筋道を立てて考えて、どのように生活すると本来の強さやよさが引き出されるのか、人生が充実するのか、私たちは幸せに生きられるのかを導き出す学問というところでしょうか。
アーユルヴェーダはサンスクリット語で「生命の科学」を意味します。
アーユルヴェーダでは、生まれつきの体質・傾向と、その人が何を食べ、何にこだわっているのかなど、普段の生活を総合的に把握します。そして、将来、どのように暮らしていくと自分らしく生きられるかを考えます。
例えば、同じカゼという病気でも、患者さんの体質や生活スタイルによって、対処法が変わるわけです。症状で薬などを選ぶ西洋医学とは違いますね。その一方で、順序よく理屈立てていくところが、西洋医学との共通点のようにも思えます。
アーユルヴェーダには、次の5つのエネルギー(要素)の概念があります。
●空:聴覚に関係している、人体の中の空間(例えば口、鼻、消化管、気道、腹腔、毛細血管、組織・細胞内の空間)
●風:触覚に関係している、筋肉の収縮、心臓の拍動、肺の伸展と収縮、胃腸の動きなど、動きの要素
●火:視覚に関係している、体温・消化・思考・視力など、すべての代謝と酵素系をコントロールする要素
●水:味覚に関係している、消化液、唾液腺の分泌物、粘膜、血漿、細胞質の中にある要素
●土(地):嗅覚に関係している、体内では硬い構造物(例えば骨、軟骨、爪、筋肉、靱帯、皮膚、毛)で、すべての物質の形を維持
そして人間の肉体と心の働きは、「ドーシャ」という、目には見えない3つの要素(エネルギー)が担っています。
○空と風→ヴァータ(vata、風):運搬・運動のエネルギー
呼吸、筋肉の動き、心臓の拍動、神経細胞における刺激の伝達などを支配している
血液・体液・消化物・老廃物を運ぶ
新鮮な気分、恐怖、痛み、けいれんなどの感覚、感情をつかさどる
大腸、骨盤内腔、骨、耳、大腿部などがヴァータの座で、体内にヴァータが過剰になると、これらの部分に影響が現れる
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photo by Melanie Wupperman(Pexels) |
○火と水→ピッタ(pitta、火):変換のエネルギー
消化、代謝、体温、皮膚の色などを支配している
胃腸での消化を促す
知性や理解力にも関係し、怒り、憎しみを引き起こす
小腸、胃、汗腺、脂肪組織、眼球などがピッタの座で、体内にピッタが過剰になると、これらの部分に影響が現れる
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photo by Adonyi Gábor(Pexels) |
○地と水→カパ(kapha、水):構造・結合のエネルギー
胸腔、のど、鼻、関節、血漿などの水のような分泌物の中にあり、免疫を支配している
栄養素から血液や筋肉、脂肪を作り、これらを維持する
落ち着き、許し、愛情深さや、執着、ねたみなどの情動に関係
胸がカパの座で、体内にピッタが過剰になると、ここに影響が現れる
同化はカパ、異化はヴァータ、代謝はピッタに支配されていて、3つのドーシャのバランスが、アーユルヴェーダでは重視されています
ピッタをヴァータは燃え立たせ、カパがなければ体内の組織をピッタで燃え尽きます。
カパとピッタは本来動かないもので、ヴァータによりカパとピッタは動きます。
生まれつきヴァータが強い人、ピッタが強い人、ヴァータとピッタが強い人など、個性を形作る体質はさまざまです。そして、どれがよい・悪いという優劣はまったくありません。
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■参考資料
『代替医療&統合医療イエローページ 西洋医学の限界を補う古くて新しい医療』 (著/上馬塲和夫、MNS)
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