「ブラック生業」に陥らないために……山崎元さんに勝手に教わるお金と生業8  『お金とつきあう7つの原則』

 経済評論家の山崎元さん(2024年没)は『お金とつきあう7つの原則』(KKベストセラーズ)で、「職業に貴賤はないし、人間性まで格付けするつもりはないが」と前置きした上で、「階級」について触れていました。

お金との関わり方に関する「階級」

株式階級:エクイティ階級:資本家
ボーナス階級:ボーナスが高額
給料階級:サラリーマン階級:給料が収入の大半
非正社員階級:フリーター階級


  繰り返しになりますが、クラナリについては、学生の頃から金融商品を購入し、結果として現況は「不安定なフリーランスの仕事でも、取引先が倒産しても、気が狂うことなく生活が継続できている」程度に運用ができています。
 サラリーマンとフリーランサーの両方を経験して痛感するのは、フリーランスの仕事が「ブラック生業」に陥りやすいということ。

 千葉県の最低賃金は1076円です(2024〈令和6〉年10月1日から適用)。このことを考慮すると、(売上-経費)÷時間=1076円未満で請け負う仕事は「ブラック生業」。
 私の経験では、フリーランサーに対してあまりにも低い報酬を提示したり、「テスト期間」その他の理由で報酬を支払わなかったりするケースは少なくありません。
 同時に、「ちょっとやっておいて」「ちょっと手伝って」とクライアントや仕事仲間が雑務を押しつけるケースも散見しました。



 相場よりもかなり低い報酬に対して「不満だけど、やり続けていればいつかは報われる」と期待するのは大間違い
 また、会社員の場合は年齢を重ねるごとに収入が上がる傾向がありますが、フリーランサーは逆。依頼する側にしてみれば、若い人のほうが将来性があるから頼みたくなるです。高齢になってからも仕事がある人は、「どうしてもこの人でなければ!」というケースに限られてきます。

 私がフリーランスの編集者・ライターとして正気を保てているには、「非正社員階級」と「株式階級」との掛け持ち(?)だったからです(フリーランスは「非正社員」でもありませんが、山崎さんの本の文脈ではこの階級に当てはまり、また「階級」の「掛け持ち」はちょっと変ですが、これがしっくりきます)。フリーランスの編集者・ライターだけであれば、確実に狂っていたと思います。

 お金とは危ないもので、少なすぎても多すぎても、私たちの正気を失わせるものではないでしょうか。





 ところで、雑誌編集者時代に「あなたの財布を見せてください」という、やや下世話な企画で、カリスマ投資家に取材をしました。当時、彼の会社の純資産は3000億円とのこと。大金を右から左に動かしている人の財布だから、どれだけスゴイのだろうと期待していました。

 ところが、取材の席に現れたカリスマ投資家の第一印象は「質実」。髪はきちんと整えられて、非常に清潔感のあるパリッとしたスーツ姿なのですが、「このスーツはそれほど高くないかも……」と失礼ながら素材で判断してしまいました。

 本題の財布については、緑色の革製の二つ折りでノーブランド。「お金持ちは長財布」という法則には当てはまりませんでした。
 ちなみに移動は電車を使っているのだそうです。「社用車はないんですか?」と尋ねたところ、「無駄だよね」とバッサリ。

 彼の場合、自分の頭でとことん考え抜き、いくら世間的に評価が高くても自らの価値観に合わないものはバッサリ切り捨てているようでした。ちなみに、スーツにも財布にも車にもお金を使わない人ですが、芸術活動にはお金を注ぎ込んでいます。
 「ガチガチの節約や、ただお金を抱えるだけなんて、人生においても社会的にも価値はない」と述べていました。

 自分が価値を認めるものにはどんどんお金を使って、世間的には富の象徴や「安全」なものでも自分で価値を認めなければお金を出さない。その心は「金は天下の回り物」という価値観から来ているようです。

 投資家であってもお金に振り回されて、「手元の金さえ増えればいい」という方向に突き進み、自分の感覚や価値観までもマヒしてしまって破滅するケースもあります。
数字になると現実と切り離され、お金の本質が見えなくなる部分も……

 また、世の中では「お金は感謝の表れ」「お金は愛情のバロメーター」などと表現されることもありますが、たくさんお金をため込んでいる人が、他者からの感謝や愛情もため込んでいるわけではないですよね。お金の魔力だけでなく、俗説にも注意する必要がありそうです。

お金を道具として目的のために使いこなすには、お金と心との関係をはっきりさせておく必要がある。その上で、お金を合理的に扱うことに徹するのがいい

『お金とつきあう7つの原則』 

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