人間の体の細胞は、細胞膜で覆われています。そして細胞膜は、リン脂質(リン酸+脂肪酸)の二重の層(脂質二重層)です。
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水になじみやすいリン酸と、なじみにくい脂肪酸
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細胞膜の構造 |
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細胞の構造 Wikipediaより |
油が水をはじくように、脂肪酸は水をはじきます(疎水性)。その一方で、リン酸は水となじみやすい性質があります(親水性)。
リポタンパク質は、脂質一重層。
細胞膜は脂質二重層なので、外側にも内側にも、水となじみやすいリン酸が並んでいます。そのため、細胞は内側に水をとどめておけるわけですね。
細胞内液や細胞外液といった水に溶け込んでいるイオンやグルコース(ブドウ糖)などは、通常は細胞膜を通り抜けることはありません。
ただ、細胞膜には、物質が通り抜けられる経路「チャネル」や、エネルギー(ATP)を使って吸い上げたり送ったりする「ポンプ」などがあります。チャネルやポンプなどは、タンパク質でできています(膜タンパク質)。細胞膜は、リン脂質の膜のところどころに、タンパク質などが突き刺さっているような構造をしているのです。
チャネル
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チャネルは「水路」 |
チャネル、つまり水路については、ゲート(水門)があります。
江戸川にかかる行徳橋にも、ゲートがありますね。水量に応じて、ゲートが上がったり下がったりして、水不足や洪水への対策を行います。
細胞膜のチャネルのゲートも、開いたり閉じたりしています。ゲートが開くと、水が高いほうから低いほうへと流れるように、ナトリウムイオンやカリウムイオンが濃度の濃いほうから薄いほうへと移動していきます。ですから、エネルギーは使いません。
なお、穴が小さく(直径0.5~1 nm)選択性の高いものをチャネル、穴が大きく(直径1 nm 以上)分子選択性の低いものをポア(pore)といいます。
水を通すアクアポリンというチャネルには、以下の種類があります。
トランスポーター
トランスポーターは「輸送体」「担体」とも呼ばれています。
ローラー滑り台は、子どもが乗ると(大人でもいいのですが)、ローラーがくるくると回って次のローラーへと移動するシステム。トランスポーターは、ローラー滑り台と似ている気がしています、個人的に。
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ローラー滑り台(写真/写真AC) |
トランスポーターは、グルコースやアミノ酸が乗ると変形して送り出す形で、細胞膜を通過させます。濃度が高いから低いほうへと物質が移動するので、エネルギーは使いません。
グルコース輸送体(Glusose Transporter、グルコーストランスポーター、GLUT)には、以下の4つがあります。
〇GLUT1 主に脳の細胞に存在
〇GLUT2 主に肝臓、小腸上皮細胞の基底膜(血流側)、尿細管細胞の基底膜、 膵臓に存在
〇GLUT3 主に神経細胞に存在
〇GLUT4 主に脂肪組織、横紋筋(骨格筋、心筋)に存在
ポンプ
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ポンプはポンプ(そのまんま……)
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ポンプは、ハンドルをシュコシュコと上下させなければ、水をくみ上げません。つまりエネルギーが必要です。
細胞膜にあるポンプについては、ATPというエネルギーを使って、拡散と逆ベクトルで、濃度の低いほうから高いほうへと物質を送り出します。
このポンプの働きで、細胞膜の内側にある「細胞内液」と外側にある「細胞外液(組織液、細胞間液)」では、以下のように、含まれている成分が異なっています。
○細胞内液 カリウム(K+)やリン酸(HPO42-)のイオン
○細胞外液 ナトリウム(Na+)や塩素(Cl-)のイオン
ナトリウムポンプについては、細胞の中から外へとナトリウムイオンをくみ出して、代わりにカリウムイオンを取り込んでいます。
共輸送
ナトリウムポンプの働きで、細胞の外のほうが中よりもナトリウムイオンの濃度が高い状態になっています。
エネルギーを使ってわざわざくみ出したナトリウムイオンですが、チャネルを通って、濃度の低い細胞の中へと移動していきます。
このナトリウムイオンに乗っかる形で、グルコースがちゃっかりと細胞の中に入るのが、共輸送。
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画像/イラストボックス |
ナトリウムイオンが濃度の高いほうから低いほうへと移動するので、エネルギーは必要ありません。同時に、グルコースは、濃度の低いほうから高いほうへと、濃度勾配に逆らう形で運ばれるわけです。
このような働きをする膜タンパク質を、SGLT(sodium glucose cotransporter、ナトリウム依存性グルコース輸送体)といいます。
ほかにも共輸送体には、塩の再吸収に関係する、腎臓の遠位尿細管のナトリウム–塩素イオン共輸送体(NCC)などがあります。
エキソサイトーシス・エンドサイトーシス
細胞で内呼吸が行われる際には、細胞の内側にあるミトコンドリアなど細胞小器官が機能しています。細胞小器官の主な成分はタンパク質や脂肪で、内呼吸などで働けば劣化していきます。要は使い物にならなくなるということ。
こうして、細胞の内側でゴミができてしまいます。
さまざまなゴミを処理するのが、リソソームという細胞小器官です。リソソームの内部には、60種類以上の酵素が詰まっています。これらの酵素の働きで、不要になったタンパク質、脂質、糖質などは、アミノ酸、リン脂質、糖、核酸などにまで、小さく分解されます。
分解されたもので、使えそうなものは細胞質に吸収されます。
一方、使えないゴミは、細胞膜と同じ成分でできた小さな膜(小胞)がパクッと包んで、細胞膜にまで移動し、パカッと開いて細胞の外に出してしまいます。この一連の働きを、エキソサイトーシス(開口分泌)といいます。
ちなみに、エキソサイトーシスの逆は、エンドサイトーシス。細胞の外にある物質を小さな膜でパクッと包み、細胞の内部でパカッと開いて取り込みます。
エンドサイトーシスには、ファゴサイトーシス(食作用)とピノサイトーシス(飲作用)があり、ピノサイトーシスの中でも大きめのものを取り込む場合はマクロピノサイトーシス(マクロ飲作用)といわれています。
また、受容体依存性エンドサイトーシス(クラスリン依存性エンドサイトーシス)、カベオラ型エンドサイトーシス、クラスリン非依存性エンドサイトーシスなどに分類されます。
受容体依存性エンドサイトーシスでは、タンパク質などの大きな分子(細胞外物質、リガンド)が、細胞膜上の受容体(レセプター)に結合すると、物質を取り込む現象(エンドサイトーシス)が起こります。そして、細胞膜が落ちくぼんで大きな分子を包み込んで、取り込んでいます。
レセプターは鍵穴、リガンドは鍵に、よくたとえられます。
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画像/イラストエイト |
■参考資料
細胞骨格と細胞膜の両方に結合してマクロピノサイトーシスを制御する情報伝達因子の発見
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