夏場は腎障害に要注意! 水分摂取量を増やし薬の量を減らそう

 汗をかく夏場や食欲不振が起こりやすい季節の変わり目などは、脱水によって腎臓の血流量が低下しやすくなります。

 このような状態で薬を多量に服用した場合に、「薬剤性腎障害(DKI)」を引き起こす可能性があります。


 現在は、日本の成人の8人に1人が慢性腎臓病といわれています。
 専門医は、「腎臓病の症状としてよく知られているむくみや尿量減少などが現れてきた場合は、腎機能がかなり低下している可能性があります。ですから、症状が現れていない段階でも、水分摂取と減薬を心がけてほしいと思います」と語っていました。

〇水分摂取
 水かお湯、あるいはノンカフェインの飲料を、1日当たり2リットル飲みといいでしょう。
 注意したいのは、飲料に含まれる塩分。スポーツドリンクには塩分が多く含まれることもあるので、栄養成分表示を確認しましょう。
 また、カフェインやアルコールには体内の水分を排出させる作用があるので、控えたほうが無難。
水分補給には、普通の水を


〇減薬
 医療機関を受診するときには、お薬手帳と一緒に健康診断のデータを持参し、薬の使用量を相談するといいでしょう。
使用量を減らす


■腎臓の構造
 腎臓は、1日当たり150リットルの血液をろ過しています。
 腎臓には、「ネフロン」という構造があります。ネフロンは、1つの腎臓に約100万個あります。
 ネフロンには、毛細血管が毛糸玉のように丸まった「糸球体」と呼ばれる組織があります。
 糸球体は「ボウマン嚢(のう)」という袋に包まれています。
 糸球体に血液が送られると、毛細血管からボウマン嚢へ水分がにじみ出てきます(糸球体濾過)。この水分が「原尿」です。
 原尿はボウマン嚢から「尿細管」という細い管に流れていき、塩分やブドウ糖、電解質など、体にとって必要な物質が再吸収されます。そして、不要な老廃物は、水分と一緒に尿として排出されます。

■腎臓の役割
1 老廃物を体外に出す
 全身を循環している血液は、酸素や栄養素を全身に運び、二酸化炭素や老廃物、毒素を回収しています。血液は腎臓で濾過されて、老廃物や毒素と余分な水分が取り除かれます。
 腎臓の機能が低下すると、老廃物や毒素、水分が体に蓄積します。

2 血圧を調節する
 腎臓は、塩分(細かくいうとナトリウムイオン)と水分の排出量をコントロールして血圧を調整します。血圧が高いときは、塩分と水分の排出量を増加させることで血圧を下げ、血圧が低いときは、塩分と水分の排出量を減少させることで血圧を上げます。
 また、腎臓は血圧を維持するホルモンを分泌しています。

3 体液量・イオンバランスを調節する
 腎臓は体に必要な電解質を取り込んで、体内の体液量や電解質のバランスを調節しています。

4 ホルモンを作る
 腎臓で作られる「エリスロポエチン(EPO)」というホルモンは、赤血球を作ります。

■薬による腎障害「薬剤性腎障害(DKI)」
 日本の成人の 8 人に 1 人が慢性腎臓病(CKD)です。また、急性腎障害(AKI)は数時間から数日という短期間で急激に腎機能が低下する病気です。
 薬剤性腎障害(DKI)とは「薬剤の投与により、新たに発症した腎障害、あるいは既存の腎障害のさらなる悪化を認める場合」。薬剤性腎障害が原因で、慢性腎臓病が発症したり、悪化したりすることもあります。

 多くの薬剤は、腎排泄性あるいは腎障害性です。そのため薬が原因で、腎臓に障害が起こることがあります。
1 腎臓の細胞に障害を起こす薬の濃度が高まった場合(中毒性腎障害)
2 薬剤のアレルギー反応による場合(アレルギー機序による急性間質性腎炎<過敏性腎障害>)
3 血液中の電解質異常が起こり腎臓に障害を来す場合(薬剤による電解質異常、腎血流量減少などを介した間接毒性)
※プロスタグランジンやアンジオテンシンⅡ作用が亢進している状態(脱水、利尿薬使用、低血圧、肝硬変、ネフローゼ症候群)があることが多い
4 尿路に薬が詰まる場合(薬剤による結晶形成、結石形成による尿路閉塞性腎障害)

 2007~2009年の薬物性腎障害調査では、原因薬剤として、非ステロイド性抗炎症薬(25.1%)、抗腫瘍薬(18.0%)、抗菌薬(17.5%)、造影剤(5.7%)が挙げられていました。
 
 脱水、利尿薬の使用、高齢、感染症、糖尿病、季節変動などで、腎臓の機能は悪化します。特に高齢者は、薬の使用が増えるだけでなく、薬が排泄されにくくなっているので、注意が必要です。

■腎障害を起こしやすい薬1 非ステロイド系抗炎症薬
 腎障害の報告が最も多い薬は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)です。腰痛、頭痛などの痛み止め(鎮痛薬)として、非常に多くの人に使われているからです。処方薬にも市販薬にも非ステロイド系抗炎症薬があります。

 痛みと関係が深いのは、プロスタグランジンという物質。
 組織が損傷を受けたとき、細胞膜にあるリン脂質はアラキドン酸に変わり、シクロオキシゲナーゼ(COX)の作用によってプロスタグランジンが生成されます。このプロスタグランジンは、痛み、熱、腫れなどを引き起こします。
 プロスタグランジンには血管を広げて、血流を促す働きもあります。
 非ステロイド系抗炎症薬はシクロオキシゲナーゼを抑制してプロスタグランジンが生成されないようにする作用を持つため、痛みを和らげると同時に血管を収縮させます。結果として、腎臓の血流が減少し、腎臓の働きが低下することがあります。

 非ステロイド系抗炎症薬を使い始めてから1カ月以内に発症することが多く、尿の減少、むくみ、食欲低下、だるさなどが現れることがあります。ただ、自覚症状がないこともあるので要注意です、

■腎障害を起こしやすい薬2 抗生物質(抗菌薬)・抗ウイルス薬
 抗生物質は腎臓、中でも尿細管を狭くします。そのため尿の排出が不十分になり、腎臓の機能を低下させることがあります。

 また薬剤が尿細管の細胞に直接障害を与えることもあります。溶けにくい抗ウイルス薬、メトトレキサートなどは、尿細管で固まって腎不全を生じさせます。
 さらに、シクロスポリンという抗生物質は動脈を収縮させます。
 
■腎障害を起こしやすい薬3 血管造影剤
 CT検査などに使われる造影剤も注意が必要。薬剤が尿細管の細胞に直接障害を与えます。

■腎障害を起こしやすい薬4 降圧剤(ACE(エース)阻害薬、ARB(レニン・アンジオテンシン系阻害薬)、利尿薬)
 急激に血圧を下げ過ぎると、腎臓の血流が減って働きを悪くします。
 
■腎障害を起こしやすい薬5 抗がん剤(シスプラチンなど)
 薬剤が尿細管の細胞に直接障害を与えます。
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