水分補給にスポーツドリンクはNG! 飲むべきは水

 よく知られているように、水の分子式はH2Oです。

 H2O分子は分子量が18と小さいため、固体が液体になり始める融点が-100℃で、液体が気体になる沸点は-80℃です。しかし、水だと融点は0℃で、沸点は100℃です。
 そのため、コップに入った常温の水は、表面では気体になって蒸発しますが、コップの中だと液体のままなのです。よく考えると不思議ではありませんか。

 水は特殊な性質を持っていて、実のところ、今の科学でもよくわかっていません。このように、謎の多い水が私たちの体の約60%を占め、生命活動を支えているのです。


水分補給は
水で行う

 100年前と比べて、東京の年間平均気温は3.2℃上昇していると、気象庁が発表しています。日本の夏は暑くなりました。
 すると心配になるのが、熱中症です。

 熱中症とは、気温が高い環境にいたり、激しい運動や労働をしたりして、体温が高くなって起こるめまいやふらつき、吐き気、けいれんなどの症状です。
 体温が高くなると、体は汗をかくことで体温を下げようとします。しかし体内の水分が不足して脱水症になると、発汗にブレーキがかかります。そのために体温が下げられなくなって、熱中症になるわけです。

 熱中症を防ぐポイントは、普段の生活で体内に十分な水分を蓄えておくことです。そのためには「ウォーターローディング」が効果的です。
 ウォーターローディングとは、スポーツの世界で生まれた水分補給方法です。

 スポーツ選手は試合中に激しい動きをするため、熱中症に陥りやすいものです。すると集中力や持久力が落ちて、試合の成績が伸びません。
 これを防ぐために、試合前の一定期間、毎日1~1.5リットルの水を飲んで、体内をしっかりと潤しておきます。すると、試合中に汗をかいて水分を失っても、運動能力の低下を防げるのです。

 ただし、1回に1リットル飲むわけではありません。個人差はありますが、内臓に負担をかけないように、ちびちびと飲みましょう。

 スポーツドリンクをがぶ飲みして起こる急性の糖尿病は、「スポーツドリンク症候群」と呼ばれています。
 スポーツドリンクには、100ml当たり6gほどの糖分が含まれています。
 のどが渇くたびにスポーツドリンクを飲んでいたら、糖分の取り過ぎで血糖値がぐんぐん上がり、さらなるのどの渇きが起こるのです。これが悪循環となって、糖尿病を引き起こします。

 スポーツドリンクを飲む必要があるのは、すでに脱水症になってしまった場合です。脱水症では、細胞の中と外のバランスが崩れていて、水分だけを補給しても回復しません。ですから、ナトリウムや糖質を含むスポーツドリンクを飲むわけです。

 また、コーヒー、緑茶などでは、水分補給になりません。利尿作用があるために水分が排出されてしまい逆効果です。

 水分補給には水を飲むことが大事なのです。

水はその土地の影響を
大いに受ける

 地球上で、水は絶えず循環しています。海の水は蒸発して雲になります。やがて雨や雪が降ってきます。そして地下水や川の水となり、海へ戻ります。

 雨や雪が地中に浸み込むときに、ゴミや汚れがろ過されると同時に、土壌のミネラルが水に吸収されていきます。ですから地下水や湧き水には、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが含まれているのです。
 そのため、同じ透明に見える水も、成分は大きく異なります。水はその土地の影響を大いに受けるわけです。

 水にまつわる逸話は、古くから残されています。有名なのはフランス南西部の「ルルドの泉」で、病を癒す奇跡の水を求めて毎年600万人が訪れます。
 日本の昔話にも「若返りの泉」があり、おばあさんが赤ちゃんになってしまったという話もありました。

 生命活動を支える水の質を守るために、自分たちが住んでいる土地を大事にするという観点も必要なのかもしれません。




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 藤田紘一郎医師(東京医科歯科大学名誉教授、故人)は寄生虫学や免疫学の研究で、世界各地の川を調査してきました。不思議なことに、茶色に濁った、一見不潔な川の水を飲んでも食中毒を起こさないのに、透明で衛生的に見える水で食中毒が起こることもあるとのこと。
 ここから「微生物との共生」というキーワードが見えてくるのです。
 詳しくは藤田医師の著書をお読みください。



 なお、冒頭で記述したとおり、水のことは現代の科学でもよくわかっておらず、水が生命活動を支える私たちの体もよくわかっていないということです。
 ならば、「この水(しかも高額)さえ飲んでいれば、病気にならない」「この浄水器(しかも高額)を使えば、健康になる」というのも根拠に乏しいということになりませんか。
 「ルルドの泉」や「若返りの泉」については、藤田医師から「世界各国の研究者が調べているところだ」と聞いているため、現状では言い伝えの範囲内の話です。
 ただ、土地と水とは大いに関係し、土地を汚染してしまえば、飲み水、ひいては私たちの命にも大きな影響が与えられるわけです。
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