「原則」「法則」「規則」。違いは何だろう問題



 今回、直面しているのは、「原則って、何だ?」問題。
 まずgoo辞書などで調べてみました。

原則

多くの場合に共通に適用される基本的なきまり・法則。大部分の場合にあてはまる基本的な法則。
対義語 例外 ※「原理」の対義語は「応用」
 「原」という漢字には「物事の始まり」、「則」には「決まり」という意味があります。

法則

1 守らなければならない決まり。規則。おきて。
2 一定の条件下で、事物の間に成立する普遍的、必然的関係。また、それを言い表したもの。
対義語 なし
 「法」という漢字には「基準」「やり方」という意味があります。

規則

1 行為や事務手続きなどが、それに基づいて行われるように定めた事柄。決まり。
2 物事の秩序。

対義語 不規則 、変則、自由

 「規」という漢字には「正しい円を描くための道具(コンパス)」「標準」という意味があります。


 「原則」の説明に「法則」、「法則」の説明に「規則」という言葉が使われています。3つの言葉があるのに、どれも一緒というわけではないですよね。

 文字を眺めていると「これは外国語を訳したものかもしれない」と思い浮かび、principle、rule、lawの3つの言葉を調べることにしました。英英辞典と語源事典です。

principle 原則、原理

ロングマン英英辞典
1 moral rule [countable, uncountable] a moral rule or belief about what is right and wrong, that influences how you behave

2 idea behind something [countable] the basic idea that a plan or system is based on

オックスフォード英英辞典
a general or scientific law that explains how something works or why something happens

エティモンライン英語語源辞典
14世紀後半にさかのぼる「原点、源、始まり」(現在では使われない意味)という言葉ですが、「行動規範;公理、基本的な前提;技術や学問の基本的な面」などの意味で用いられます。アングロフランス語のprinciple、古フランス語のprincipe「起源、原因、基本」から来ており、ラテン語のprincipium(複数形はprincipia)「始まり、開始、起源、最初の部分」、複数形では「基礎、要素」という意味から、princeps(属格はprincipis)「最初の人、主要な指導者;支配者、君主」という名詞の形で、最初のものを意味する形容詞から来ています。これはprimus「最初の」(prime (形容詞)を参照)と、capere「取る」(PIE語根 *kap-「掴む」から来ている)の語根から成ります。

システムの「いくつかの基本的な教義や原理の一つであり、他のものがその上に構築される法律や真実」という概念から、「正しい行動規範」(1530年代)という意味が生まれました。

law 法則、法律

ロングマン英英辞典
1 system of rules [uncountable] (also the law) the whole system of rules that people in a particular country or area must obey

2 a rule [countable] a rule that people in a particular country or area must obey

オックスフォード英英辞典
the fact that something always happens in the same way in an activity or in nature
エティモンライン英語語源辞典
古ノルド語の*lagu「法律」、lagの集合複数形で、「層、尺度、策」という意味の「何かが決められたもの、固定または設定されたもの」から来ています。
物理学では「物事の規則的な順序を表す提案」として1660年代から使用されています。

rule 規則、支配

 ロングマン英英辞典
1 about what is allowed [countable] an official instruction that says how things must be done or what is allowed, especially in a game, organization, or job

2 about what you should do [countable] what you should do in a particular situation, or a statement about this

3 normal/usual [singular] something that is normal or usually true


エティモンライン英語語源辞典
*regula、ラテン語からregula「まっすぐな棒、バー、定規」、比喩的に「パターン、モデル」、regere「支配する、整える、導く」(PIE語源)*reg-「一直線に動く」という意味で、派生語は「一直線に導く」つまり「導く、支配する」という意味になります。

「直線を引いたり測定したりするのに使われる、真っ直ぐな縁の帯」という意味は、14 世紀中ごろから使われています。 

(例)
てこの原理 principle of leverage
発電機の原理 the principle of the dynamo
振り子の法則 pendulum law
分配法則 distributive law
法の支配 rule of law

 ここまで見てくると、原則は「原点」「根本的なこと」、法則は「何か(環境など)によって決められたもの」、規則は「決めたこと」というニュアンスが含まれているように思えます。

 では、今回、『クラナリ』編集人が直面していた問題へと戻りましょう。エフェクチュエーションとも関係します。
 提唱者のサラスバシー教授は、起業のエキスパートたちを調査・研究し、共通点をいくつか見出しました。つまりたくさんのケースを分析して、帰納法的に「起業家の原理・原則」を導き出したのですね。

 その一つが、「予測でなくコントロールによって望ましい成果に帰結させる」という行動パターンです。この原理・原則に、「『飛行機のパイロット』の原則」というユニークな名称を付けました。
 ところが、「飛行機のパイロット」という言葉から、「飛行機だから、パイロットは高いところから俯瞰的に見渡している」「遠くまで見通せる」「パイロットだから、たくさん訓練を積んでいる」などのように連想ゲーム的に要素をくっつける人たちが出現したのです。

 つまり、「原則」という言葉が持っている意味を無視してしまったわけですね。

 自分も気を付けたいと思ってしまいました。

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