他人のもろさを見抜いて操る人々! 彼らが使う心理テクニックをまとめてみた

 自分を操ろうとする人物への対処法として、自分自身のもろさ、つまりどんなコンプレックスを持っていて、どんなワードに過敏に反応するのかを知っておくことが大事かもしれません。
 例えば「責任」というワードに過敏に反応する人に、「あなたには責任というものがないのですか」と迫ってくる可能性があります。これは以下で紹介する「一貫性の原理」を利用したテクニックといえるでしょう。

 今回は『影響力の武器』(著/ロバート・B・チャルディーニ 誠信書房)を参考にしながら、他人を操ろうとする人たちが使うテクニックをまとめてみました。


『影響力の武器』

利用されがちな心理テクニック


〇返報性

 人からなにかをしてもらったら、「お返しをしないと申し訳ない」といった感情が働くことを、返報性といいます。
 返報性の特徴として、見返りを求めて贈り物や親切な行為などをするとともに、その見返りが不平等なほど大きいこと。いわゆる「倍返し」です。

 返報性を、他人を操ろうとする人は突いてきます。
 初対面でありながら、親しみ深げに過剰なほど親切な行為を行う人には要注意。頻出ワードは「私はやってあげたじゃない」

<対処法>
 相手の贈り物や親切な行為を、最初から拒否しないこと。「あれ? 断らなくてもいいんだ」と思うかもしれませんが、世の中、返報性の原理を利用する人物ばかりではなく、やみくもに拒否していると人間関係にひびが入ります。
 大事なのは、区別すること。贈り物や親切な行為には感謝を示し、見返りを求める行為には「返報性の原理を使ったトリック」ととらえ、「ありがとうございました。さようなら」と丁寧に縁を切るといいでしょう。

〇一貫性・コミットメント

 人は自分で決めたことや、ある立場を明確にすると、最後までぶれない態度を取ろうとする心理が働きます。これが、一貫性。
 また、自分が下した決定の正しさを信じようとするものです。そのため、信じられなくなるような要素を一切耳に入れないようにしたり、迷うのがつらいから急いで結果を出そうとしたりします。
 それから「私は○○をします」と公言したり、立場を明確にしたりするコミットメントで、一貫性の圧力が強まります。他人を操ろうとする人は、あたかも自分の言動が一貫しているような振りをしながら、「あなたが言ったことでしょう?」「買うって言いましたよね?」などと迫ってきます(ちなみに、他人を操ろうとする人には一貫性はありません)。
 一貫性の原理を利用した交渉術として、「フット・イン・ザ・ドア」があります。セールスマンが自分の足をドアの内側に入れることができれば、その家の住民に物を買わせられるという意味のようです。
 小さな要求で相手に「はい」「いいですよ」と言わせたら、徐々に大きい要求をして「はい」と言わせ続けるテクニックです。1度要求をのんでしまうと次の要求も断りにくいという心理を利用しています。
 「ついでにこれもお願い」というのはフット・イン・ザ・ドアの一例。
 また、「ローボール・テクニック」は、最初に好条件だけを提示して相手に「はい」「いいですよ」と言わせた後に、条件を変えたり、都合の悪い条件を付け加えたりするテクニック。捕球しやすい低い球(ローボール)を最初に投げて相手に捕らせたら、手が届かないような球でも「さっきのボールが捕れたんだから、このボールも捕れるだろう」というわけです。
 例えば車を販売するときに、ちょっと安めで客に売ったとしましょう。客が販売契約書にサインをしたところで「あっ、エアコンの値段が含まれていませんでしたので、その分のお金がかかります」などと好ましくない条件を、わざと後から付け加えるのです。

<対処法>

 体は正直です。「このやり取りに、胃のところがムカムカしてきた」と感じたら、すぐに「だったら、けっこうです」「確かに言いましたが、今は受け入れられません」と、一貫性を放り投げて自由になりましょう。

 相手が一貫性の原理を利用した交渉術でこちらより優位な立場になろうとしているわけなので、途中で放棄したところで「無責任」「信用を失った」と周囲からは評価されません。

〇社会的証明

 「社会的証明」を端的に表しているのが、「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」(by ツービート)。周囲の人と同じ行動を取っていると、たとえ禁止されていることだとしても平気だということ。
 「この映画で100万人が泣いた!」というキャッチコピーも社会的証明を利用したもの。実際に見て全然感動しなければ「私のほうが変なのかな」と疑問を感じるのは、社会的証明という心理が働いているといえます。

 「皆さんにアンケートにお答えしてもらっているのですが」「みんなやっていますよ」などの表現を、他人を操ろうとする人は多用します。「皆さん」「みんな」「ほとんどの人」などと言って、何かの行動を仕向けるように働きかける人には注意しましょう。

 社会的証明に関連する現象として、「バンドワゴン効果」があります。
 「バンドワゴン」とはパレードなどの行列の先頭を行く楽隊車。パレードの後をついていく大勢の人々のように、行列の後ろにはつい並んでしまうような現象を、バンドワゴン効果といいます。お金を払ってサクラをわざわざ雇うのは、バンドワゴン効果を狙ってのこと。

〇好意

 商品の販売などに家族や友人などのネットワークを利用します。つまり、親しい人や好きな人からの勧めだと断りにくいという心理が働くのです。また、友達のまたその友達を紹介してもらうという方法も使われています。
 ホームパーティはその典型例。パーティに呼んでくれたことがうれしくて、主催者に好意を抱くからです。

 好意を持たせるためのテクニックとして、以下のものが重視されています。
1 外見 美醜や体格、身だしなみなど
2 類似性 「意見や経歴、ライフスタイル、食事など、私たちは自分と似た人を好む」という傾向を利用して、鏡のように相手に合わせる
3 お世辞 
4 接触と協同 「私たちは、自分のよく知っているものを好む」「同じ目的があると、その達成のために協力し、互いに行為を抱く」という傾向を利用
5 条件付けと連合 悪い知らせやよい知らせなど、話の内容が話し手と結びつき、悪い知らせばかりする人は敬遠され、よい知らせをする人は好意を抱かれる

〇権威

 テレビでは大学教授がコメンテーターとして登場します。タレントよりも大学教授のコメントに、納得しませんか? たとえ、同じ内容だったとしても。
 権力者や専門家、著名人の言うことをなんとなく信じ込んでしまうのが、権威への服従。
 他人を操ろうとする人は権威への服従を利用したいがために、権力を持つことや有名になることに情熱を傾けます。

 また、相手が理解できないような難しい専門用語をやたらと使います。専門用語を使うことで、自分の権威を高めようとしているからです。加えて「なんとなく、この人はすごそうだ」と、相手の思考停止を引き起こそうとしています。
 しかし、他人を操ろうとする人自身、その言葉を上っ面でしか理解していません。知らないことでも、さもわかったかのようにしゃべることができるのです。

〇希少性

 需要に比べ、供給が少ない物に対して価値が高いと思ってしまうのが、希少性の原理。
 「限定商品」「あなただけ特別」「今しかない」といったコピーは、希少性の原理を使って購買を促そうとしているわけです。

〇物欲

 少ない支出で多くを得ようとすること。「いい話があるんですよ」というのは、私たちの欲望に働きかける言葉なんですね。

〇コントラスト

 1番目と2番目を比較すること。交渉でよく使われますが、最初にわざと高い額を吹っかけてから、次に自分が要求する価格を提示すると、すんなりと受け入れられることがあります。ただし、最初の額が高すぎると、不誠実な交渉と判断されて逆効果です。
 嘉悦大学の國田圭作教授は、人を動かすためのポイントを紹介しています。こうしたポイントを知っておくと「ああ、挑発することで自分を操ろうとしているのだな」などと、状況を俯瞰して把握することが可能になります。
行動アクセルを加速する系
急かされると、人は動く
対決させると、人は動く
食べ物にすると、人は動く
限定されると、人は動く
対比があると、人は動く
帰属意識を刺激されると、人は動く
挑発すると、人は動く
選択 (投票) させると、人は動く
サイズを変えると、人は動く
行動ブレーキを緩和する系
お膳立てされると、人は動く
お墨付きがあると、人は動く
現場が来てくれると、人は動く
口実があると、人は動く
ファッションで、人は動く
体が動くと、人は動く
名前をつけると、人は動く
本気が伝わると、人は動く
子ども心で、人は動く
人を動かすための18の「ツボ」より

■追記(2025年4月3日)

 ホストクラブに来る女性への対応マニュアルも話題になりました。元画像はX(旧Twitter)にあるので、それをもとにまとめ直してみました。


ホストクラブに来る女性のタイプ


A パーティ好き、酒を飲んで騒ぐのが楽しい
B 男性にもてたい、チヤホヤされたい
C 孤独
D 恋に恋している、尽くす自分に酔っている
※タイプが変化する可能性があるため、相手のわずかな変化も見逃さないこと

全タイプ共通

 「ありがとう」は何度も言いましょう。そして、自分の安売りはしてはいけません(「最低料金でいいから」など)。「何が何でも、お店に来てほしい」ではなく、「お店であなたのことを考えていますよ」と伝えましょう。
 そして、がんばっている姿を見せて、「応援してあげたい」と思わせます。女性は生きる目的が「他人」でしかありません。「誰かのがんばりを応援する」という生きる目的を作ってあげるとともに、「彼を応援し、助けた自分は価値がある存在」という承認欲求を満たしてあげましょう。
 また、ホストクラブに来る女性は、恋愛でしか心の空洞を埋めることができません。ですから、こうした女性には不確定な未来(ホストとの将来、「俺がナンバー1になったときには、あなたが隣にいてほしい」など)を売るのです。言葉に説得力を持たせるには、正義と根拠が必要です。

タイプ別接待

対Aタイプ

 とにかく、酒を飲んで場を盛り上げ、楽しませましょう。

対Bタイプ

 男性に相手にされたいし、尽くされたいし、チヤホヤされたいし、「お金を使わなくたって、男性は寄ってくる」と思いたいので、けっこうケチ。

対Cタイプ

 Cタイプにとって、話せる相手になりましょう。連絡をマメに取り、ひたすら聞き役に徹します。
 ときどき、こちらから悩みを話して、相談もします。そして「アドバイスどおりにやったら、うまくいったよ」「ありがとう」と感謝を伝えましょう。お互い高め合える関係になり、「彼のことを一番わかっているのは自分」というプライドをCタイプが持つようになると、こちらから離れられなくなります。
 仕事がうまくいかなかったときには、負けて悔しい思いをしていることをCタイプに伝えましょう。


対Dタイプ

 Cタイプと同様、連絡はマメに行います。こちらからは手を出さず、Dタイプが焦って本気で口説こうと必死になるタイミングで、それを聞いて受け止めます。
 仕事がうまくいかなかったときには、負けて悔しい思いをしていることを伝えるだけでなく、イライラしている雰囲気も出します。

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 社会で暮らす多くの人が、「周りの人から認められたい」「受け入れられたい」と思っています。このように他者から承認してもらいたいときに、他者の期待を満たそうとしますことがほとんどです。他者からの承認を通じて、私たちは「自分には価値があるのだ」と実感できるし、劣等感を払拭して自信を持つことができるのです。

 しかし、承認欲求が強くなり過ぎると、いつも他者の視線を気にして、他者からの評価におびえるのです。
 また、褒めてくれる(認めてくれる)と、不適切な行動も取るようになります。

 ホストに限らず、他人のもろさを見抜いて操る人々は、相手の承認欲求に働きかけるテクニック(相手を褒める、相手に助けてもらう、相手に感謝する、「君がいないとダメ」と頼るなど)を使って、不適切な行動(散財する、孤立する、法律を無視するといった、当人にとって不利益な行動)を誘導しています。
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