他人のもろさを見抜いて操る人々! 彼らが使う心理テクニックを知ることも大事

 人間の心理を突いて操ろうとする人物への対処法として、自分自身のもろさ、つまりどんなコンプレックスを持っていて、どんなワードに過敏に反応するのかを知っておくことが大事かもしれません。

 例えば「責任」というワードに過敏に反応する相手に、「あなたには責任というものがないのですか」と迫ってくる可能性があるのです。これは以下で紹介する「一貫性の原理」を利用したテクニックと言えるでしょう。

利用されがちな心理テクニック


人を動かすための18の「ツボ」より


〇一貫性・コミットメント

 人は自分で決めたことや、ある立場を明確にすると、最後まで一貫性がある態度を取ろうとする心理が働きます。これが「一貫性」。

 また、自分が下した決定の正しさを信じようとするものです。そのため、信じられなくなるような要素を一切耳に入れないようにしたり、迷うのがつらいから急いで結果を出そうとしたりします。

 それから「私は○○をします」と公言したり、立場を明確にしたりするコミットメントで、一貫性の圧力が強まります。

 他人を操ろうとする人は、あたかも自分の言動が一貫しているような振りをしながら、周囲に「あなたが言ったことでしょう?」「買うって言いましたよね?」などと迫ってきます。

 一貫性の原理を利用した交渉術として、「フット・イン・ザ・ドア」があります。
 セールスマンが自分の足をドアの内側に入れることができれば、その家の住民に物を買わせられるという意味のようです。
 小さな要求で相手に「はい」「いいですよ」と言わせたら、徐々に大きい要求をして「はい」と言わせ続けるテクニックです。
 1度要求をのんでしまうと次の要求も断りにくいという心理を利用しています。
 「ついでにこれもお願い」というのはフット・イン・ザ・ドアの一例。

 また、「ローボール・テクニック」は、最初に好条件だけを提示して相手に「はい」「いいですよ」と言わせた後に、条件を変えたり、都合の悪い条件を付け加えたりするテクニック。
 捕球しやすい低い球(ローボール)を最初に投げて相手に捕らせたら、手が届かないような球でも「さっきのボールが捕れたんだから、このボールも捕れるだろう」というわけです。
 例えば車を販売するときに、ちょっと安めで客に売ったとしましょう。客が販売契約書にサインをしたところで「あっ、エアコンの値段が含まれていませんでしたので、その分のお金がかかります」などと好ましくない条件を、わざと後から付け加えるのです。

<対処法>
 自分の気持ちにすなおになることです。理屈ではありません。「このやり取りに、胃のところがムカムカしてきた」と感じたらすぐ、バカげた一貫性を放り投げて自由になりましょう。
 体は正直です。

 相手が一貫性の原理を利用した交渉術でこちらより優位な立場になろうとしているわけなので、途中で放棄したところで「無責任」「信用ならない」と評価されません。

〇返報性

 人から何かをしてもらったら、お返しをしないと申し訳ないといった感情が働く心理を「返報性」といいます。

 返報性の特徴として、見返りを求めて贈り物や親切な行為などをするとともに、その見返りが不平等なほど大きいこと。いわゆる「倍返し」です。

 また「拒否されたら譲歩」というのも、返報性に含まれるでしょう。例えば「家が欲しいから買って」と頼んで断られた後、「だったらブランドのバッグでいいわ」と頼むと、その要求(譲歩)は受け入れられやすいのです。

 返報性を、他人を操ろうとする人は突いてきます。
 初対面でありながら、親しみ深げに過剰なほど親切な行為を行う人には要注意。頻出ワードは「私はやってあげたじゃない」。

<対処法>

 相手の贈り物や親切な行為を、最初から拒否しないこと。「あれ?」と思うかもしれませんが、世の中、返報性の原理を利用する人物ばかりではなく、やみくもに拒否していると人間関係にひびが入ります。
 大事なのは、区別すること。贈り物や親切な行為には「ありがとう」という感謝を示し、見返りを求める行為には「返報性の原理を使ったトリック」ととらえ、丁寧に縁を切るトリックをお返しするといいでしょう。

〇社会的証明


 「社会的証明」を端的に表しているのが、「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」(by ツービート)。
 周囲の人と同じ行動を取っていると、たとえ禁止されていることだとしても平気だということ。

 「この映画で100万人が泣いた!」というキャッチコピーも社会的証明を利用したもの。実際に見て全然感動しなければ「私のほうが変なのかな」と疑問を感じるのは、社会的証明という心理が働いているといえます。

 「皆さんにアンケートにお答えしてもらっているのですが」「みんなやっていますよ」などの表現を、他人を操ろうとする人は多用します。「皆さん」「みんな」「ほとんどの人」などと言って、何かの行動を仕向けるように働きかける人には注意しましょう。

 社会的証明に関連する現象として、「バンドワゴン効果」があります。
 「バンドワゴン」とはパレードなどの行列の先頭を行く楽隊車。
 パレードの後をついていく大勢の人々のように、行列の後ろにはつい並んでしまうような現象を、バンドワゴン効果といいます。
 お金を払ってサクラをわざわざ雇うのは、バンドワゴン効果を狙ってのこと。

〇権威

 テレビでは大学教授がコメンテーターとして登場します。タレントよりも大学教授のコメントのほうが、もっともらしいと感じませんか? たとえ、同じ内容だったとしても。

 権力者や専門家、著名人の言うことをなんとなく信じ込んでしまうのが「権威への服従」。

 他人を操ろうとする人は権威への服従を利用したいがために、権力を持つことや有名になることに情熱を傾けます。

 また、相手が理解できないような難しい専門用語をやたらと使います。専門用語を使うことで、自分の権威を高めようとしているからです。加えて「なんとなく、この人はすごそうだ」と、相手の思考停止を引き起こそうとしています。

 しかし、他人を操ろうとする人自身、その言葉を上っ面でしか理解していません。知らないことでも、さもわかったかのようにしゃべることができるのがサイコパスなのです。

〇希少性

 需要に比べ、供給が少ない物に対して価値が高いと思ってしまうのが「希少性の原理」。
 「限定商品」「あなただけ特別」「今しかない」といったコピーは、希少性の原理を使って購買を促そうとしているわけです。

〇好意

 商品の販売などに家族や友人などのネットワークを利用します。つまり、親しい人や好きな人からの勧めだと断りにくいという心理が働くのです。また、友達のまたその友達を紹介してもらうという方法も使われています。
 ホームパーティはその典型例。パーティに呼んでくれたことがうれしくて、主催者に好意を抱くからです。

 好意を持たせるためのテクニックとして、以下のものが重視されています。
1 外見 美醜や体格、身だしなみなど
2 類似性 「意見や経歴、ライフスタイル、食事など、私たちは自分と似た人を好む」という傾向を利用して、鏡のように相手に合わせる
3 お世辞 
4 接触と協同 「私たちは、自分のよく知っているものを好む」「同じ目的があると、その達成のために協力し、互いに行為を抱く」という傾向を利用
5 条件付けと連合 悪い知らせやよい知らせなど、話の内容が話し手と結びつき、悪い知らせばかりする人は敬遠され、よい知らせをする人は好意を抱かれる

〇物欲

 少ない支出で多くを得ようとすること。「いい話があるんですよ」というのは、私たちの欲望に働きかける言葉なんですね。

〇コントラスト

 1番目と2番目を比較すること。交渉でよく使われますが、最初にわざと高い額を吹っかけてから、次に自分が要求する価格を提示すると、すんなりと受け入れられることがあります。ただし、最初の額が高すぎると、不誠実な交渉と判断されて逆効果です。
人を動かすための18の「ツボ」より


■参考文献

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