moto.8とco,do motoyawata。そして、これからの市川の風景

 『クラナリ』のテーマは「暮らしと生業」で、もちろん建築については何もわかっていないのですが、おもしろい建物にはフラフラと引き寄せられています。



 同時に、これからの風景についても、つい妄想してしまうのです。それは決して楽観的で明るくはなく、少々気が滅入るものでした。

[風景1]高度成長期に建築された大規模集合住宅
 経済は発展し続け、人口は増え続けると信じられた高度成長期。こうした時代には大規模集合住宅があちこちで建設されました。
 あれから40年。建物の老朽化と住民の高齢化が進み、空き家問題も深刻化しています。メディアでも、「ゴーストタウン化の危機にさらされている」と報じられることもありました。

 間取りなども時代遅れで、設備も古い。「コミュニティスペース」として作られた公園は、猫のトイレと化して不潔……
 さまざまな問題が山積しているのですが、あまりにも大規模で壊すに壊せないのが現状ではないでしょうか。

 大規模集合住宅が抱える数々の問題に取り組んでいるのが、「みどり TO ゆかり GREEN&WORKSHOP」の皆さんです。

約40年前に建設された大規模集合住宅、ハイタウン塩浜

 こうした大規模集合住宅が取り残されている一方で、今日も高層マンションの建築が進められています。
 
[風景2]切り売りされる住宅地
 庭がある一軒家が取り壊された後、ほとんどの場合において2~3区画に分けられて住宅地が切り売りされています。
 庭がないどころか、塀と住宅の間も人が通れないほど狭いものです。
 また、必ずと言っていいほど、3階建てです。

[風景3]おじいさんとおばあさんを苦しめる階段
 知人の家での話です。2階建ての家に住んでいたおじいさん・おばあさん夫婦が、子ども夫婦のマンションの部屋と住処をトレードしたとのこと。
 おばあさんが階段を上るのがつらくなったためだそうです。

 片付けの専門家は、2階建ての家はゴミ屋敷になりやすいと話していました。理由はやはり老化などが原因の体調悪化。階段を使わなくなったため、上の階や階段が物置状態で片付けられないようです。

 [風景2]で見た狭小地の3階建ての未来はどうなるのでしょうか。

[風景4]住宅街の中で打ち捨てられた一軒家
 人口減少で、集合住宅だけでなく一軒家も余り始めています。
 JR市川駅の周辺でも、誰も管理していないと思われる家がぽつぽつと見られます。

 所有者がわからないことも問題でしょうが、「価値が低く、解体する費用もバカにならない」という土地もあるかもしれません。狭い分だけ安いうえ、ギューギューに建てられているために重機でガガガッと解体するわけにいかず、人件費がかかるからです。


 そんな風景を眺めながら気が滅入っている中で、moto.8とco,do motoyawataの登場は驚きでした。



 JR本八幡駅から徒歩3分。通常、そんな便利なところに広い土地があるのならば、部屋数の多い高層マンションにしがちです。
 ところが、moto.8は木造2階建て、co,do motoyawataは木造平屋です。庭にはたくさんの緑。ゆったりした空間が生まれていました。


 思うに、JR本八幡駅から徒歩3分という立地を条件や効率性ではなく、長い時間の中での物事としてとらえた結果、moto.8とco,do motoyawataが建てられたのではないかと。今さえよければいい・今さえ儲かればいい・今さえ楽しめればいいという刹那的な観点では、moto.8とco,do motoyawataは理解できない建築のように思ったわけです。

 長い歴史を振り返れば、生まれてきた生き物は必ず死ぬことが運命づけられていて、生き物はお互いに支え合いながらお互いに抑制し合っています。永遠には生きられず、単独でも暮らしていけない私たち。
 そんなことを考えると、少子高齢化と人口減少が進む日本の中の市川の風景は、moto.8とco,do motoyawataという形によって均衡が取れていくような気がしたわけです。

 
 建築については何もわかっていないのですが。
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