超文系人間がちょっと細かく調べてみた その9 「水はナトリウムと一緒に動く」
乾燥する冬場によく起こるのが、ズボンやスカートの裏地(ポリエステル)が足(皮膚)にまとわりつく現象。
ミクロの世界では、 歩くときなどにこすり合わさることで、皮膚の電子がポリエステルに移動しています。もともと電気的に中性だったポリエステルは、皮膚との摩擦で電子が与えられたことでマイナス(負)に帯電した一方、皮膚からは電子が出ていってプラス(正)に帯電しました。
なお、布や皮膚の水分(純粋な水ではない)は電気を通すので、摩擦で発生した静電気を水分はほかへ逃がす働きをします。乾燥した冬場は静電気がとどまり、たまっていくために、まとわりつきやパチッという刺激が起こりやすいというわけです。
モノタロウ電気回路測定の心得より |
このように、物質の帯電は電子の移動によって起こります。
粒子などが帯びている電気の量を「電荷」または「電気量」と呼びます。電荷の記号はQ(キュー)で、単位は[C] (クーロン) です。
それから、電荷を持っている粒子が「荷電粒子」です。電子は荷電粒子の一つです。
ポリエステルはマイナスに帯電したので「−Q[C]を持つ」、 皮膚はプラスに帯電したので「+Q[C]を持つ」と表現します。
帯電した物質同士にはクーロン力(静電気力)が働きます。マイナスとプラスは引力、マイナスとマイナスそしてプラスとプラスは斥力となります。
〇ひきつけ合う力=引力
〇反発し合う(互いにはね返す)力=斥力(せきりょく)
〇反発し合う(互いにはね返す)力=斥力(せきりょく)
クーロン力で、プラスに帯電したものとマイナスに帯電したものがくっつくことを「イオン結合」といいます。
食塩、つまり塩化ナトリウムは、Na+(ナトリウムイオン)とCl-(塩化物イオン、クロール)がくっついてできています。その間に働いているのは クーロン力なので、イオン結合。
それに対し、水は「共有結合」しています。水は2つのH(水素)と1つのO(酸素)がくっついてできています
原子は、真ん中の原子核と、その周囲の電子で構成されています。
電子の収容場所が電子殻です。最も外の電子殻にある1~7個の電子が、価電子です。
共有結合には、価電子が関係しています。
2つの原子がそれぞれが価電子を出し合って、共有することで安定な電子配置になるのが、共有結合です。価電子は 「原子の手」 によくたとえられ、原子が手を取り合って安定するのが共有結合といわれています。
結合の強さの順位は、共有結合>イオン結合>金属結合(自由電子による金属元素と金属元素の結合)>水素結合(水素原子が仲介して、隣接する分子どうしが引き合う結合 )>ファンデルワールス力(分子と分子の間に働く弱い引力)となっています。
水は共有結合の化合物ですが、ごくわずかに、水素イオン(H+)と水酸化物イオン(OH-)に電離しています。
共有結合している水分子は、2つのHと1つのOが一直線上で結合しないため、電気的な偏り(極性)が打ち消されません。H側がプラスの電荷を持つことをδ+、O側がマイナスの電荷を持つことをδ-となります(δは「デルタ」でΔと表記することもあり、物体の速度、位置、加速度などのちょっとした変化や差を表す)。
プラスのHとマイナスのOが引き寄せ合い、水分子同士が弱い結合をするために、水という液体の状態になります。
塩化ナトリウムを水に溶かすと、Na+イオンに水分子のマイナスのOが、Cl-イオン(塩化物イオン)に水分子のプラスのHがくっついて、NaとClが水分子に取り囲まれて、引き離されます。
塩化ナトリウムだけでなく、塩化カリウム(KCl)や水酸化カリウム(KOH)も同様に、Na+イオンとK+イオンが水分子に取り囲まれます。
Na+イオンとK+イオンを比較すると、K+イオンのほうが大きくなっています(イオン半径が長くなっている)。
〇Na+イオン イオン半径 0.99Å
〇K+イオン イオン半径 1.37Å
※Å(オングストローム angstrom)は、長さの単位。
1Å=100億分の1m(メートル)=0.1nm(ナノメートル)=100pm(ピコメートル)
中央の陽子(+)と最も外側の電子殻までの距離が短い(最外殻電子が3s軌道)Na+イオンは、水分子とくっつく力がK+イオン(最外殻電子が4s軌道)よりも強くなります(必ずしもそうとばかりはいえないそうですが)。
Na+イオンのこうした性質から、「体内の水はナトリウムと一緒に動く」といわれているようです。
■主な参考文献
Wikipedia
Try IT(トライイット)の高校生物
※フリーランスの編集者・ライターである『クラナリ』編集人(バリバリの文系)は、腎臓に関する記事や書籍に携わる機会が多いため、それに関連していろいろと考察しています。素人考えですが。
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