「一人暮らしの高齢者」「認知症」の割合が増える未来のランドスケープをデザインする問題
最近、JR本八幡駅北東エリアで撮影する機会が増えたのですが、やはり実感しています。
自転車が多い
「本八幡駅北口駅前地区第一種市街地再開発事業について(報告)」にも「歩行者と自転車、自動車の動線が錯綜」と書かれていました。まさにそのとおりの町の風景です。
また、撮影時間の関係もあるのでしょうが、高齢者が多いという印象もあります。
少子高齢化が急速に進む日本。JR本八幡駅北東エリアでも、そして『クラナリ』編集人の行動範囲であるJR市川駅周辺でも、例に漏れず、高齢者が増えているのではないでしょうか。
『クラナリ』編集人が携わった書籍の仕事で調べたのですが、一人暮らしの高齢者は増える傾向にあります。
その理由は、誰かに強制されたり、やむなく一人で生活しているのではなく、「配偶者が亡くなった後も、住み慣れた家で過ごしたい」「今さら誰かの世話になりたくない」という、高齢者本人の意向にあることも珍しくありません。ですから、「一人暮らしなんて、かわいそうだ」という見方は、ちょっと偏っています。
加えて、少子高齢化の影響として、人口に占める認知症の人の割合が高くなっていきます。2025年には高齢者の5人に1人、国民の17人に1人が認知症になることが予測されています。
私たちの暮らす市川市でも、「一人暮らしの高齢者」「認知症」は、すぐそこにある未来。まちづくりにおいて、この2点は大きな要素になっているのではないでしょうか。
高齢者では、脊柱管狭窄症にかかっている人の割合も増えます。下半身のしびれや痛みで長く歩けないので、買い物に行く途中で休憩が必要です。建物の階段や花壇のところで座り込んでいる人は、脊柱管狭窄症のために休んでいる可能性が考えられます。なかには、スーパーのサッカー台(買ったものを袋に詰めるための台)や買い物かごを椅子にして座っている人もいました。
また、シルバーカーに体を預けるような姿勢で、町中を歩いている人もいます。
重い物を持つのが大変なので、買い物には自転車やシルバーカー、買い物カートを使いがちです。
自転車については、フラフラとかなり危なげな運転をしている高齢者を見かけます。実際、転んでしまったのを助けたケースもあります。
シルバーカーや買い物カートだと、起伏がある歩道は歩きにくいようで、平坦な車道を歩いている姿を目撃します。
認知症については、個性豊かで、症状の現れ方にはさまざまなバリエーションがあります。『クラナリ』編集人が携わった書籍の著者である医師の話では、認知症で徘徊したり、暴言を吐いたり、暴力を振るったりするような周りを困らせる症状が現れるのは1割程度とのこと。
認知症だからといって、「もうおしまいだ」「他人に迷惑をかけてしまう」と自分を責める必要はありません。
ただ、判断能力の低下は共通するので、「わかりやすさ」が求められます。まちづくりの場合であれば、交差点の見通しのよさ、標識の視認性などです。
トイレも近くなりがちな高齢者は、一目でぱっと「ここはトイレ」とわかる標識が町中になければ、焦っているうちに漏らしてしまい、以降、外出を敬遠してしまうかもしれません。そうなると、認知症が悪化する可能性が高くなります。
「一人暮らしの高齢者」「認知症」は、これまでは家族の問題とされがちでした。一人暮らしや認知症の高齢者がいる家族向けに、どんな見守りをしたらいいのか、どんな言葉がけをしたらいいのかなどをアドバイスするというケースが多かったのではないでしょうか。
しかし、その割合が増えてきている今は、家族だけでなく社会として、「一人暮らしの高齢者」「認知症」が安全に暮らせるまちづくりを検討する時期ではないでしょうか。
オシャレな標識よりも、視力が低下しても判別できる標識。
シルバーカーや買い物カートが使いやすい歩道。
トイレや、一休みできるベンチの設置。
いわゆる「デザイン性の高さ」よりも、「誰でもわかりやすいデザイン」が求められるのかもしれません。
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■参考資料
厚生労働省 第1章 高齢化の状況(第1節 3)
東京都健康長寿医療センター 認知症と共に暮らせる社会をつくる
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