夏休みの宿題 読書感想文の書き方 その1 読書感想文で賞をねらっている子どもたちへ

 『クラナリ』を発行する前は、「知恵の木」という店で作文教室などを開いていました。
 夏休みの読書感想文クラスでは、実にさまざまな子どもたちに会いました。ただ、基本的には作文が苦手な子どもです。こちらとの対話の内容をメモさせながら、ほんの少しずつ積み上げていくという感じでした。

 一方、集中力がありすぎて、2時間もメモを取り続けていた子どももいました。そのときは邪魔をしてはいけないと思ったものの、後で「ちょっと大人がコントロールしてあげる必要があるな」と考え直した次第です。

 さておき、教室を開いていた頃、作文が苦手ではない子を対象に、読書感想文の書き方を文章でまとめていました。参考になれば幸いです。

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 せっかく読書感想文を書くのだから、学校の先生に褒められたいし、賞も取りたいというそこのアナタ。

 ポイントはたったの2つです。
1 本の内容と、自分の過去の体験を重ね合わせる

2 本を読んで発見したことや、本から学んで自分が変わろうとしている決意表明で締めくくる

 過去に受賞した読書感想文にざざっと目を通したところ、共通点がこの2つのポイントだったのです。


 では早速ミッション!

【ミッション】「読書感想文すいすいシート」をながめよう

 賞をねらうぐらいの子どもたちだから、文章を書くのは苦手ではないはず。だったら最初に、学校で配られた「読書感想文すいすいシート」をながめましょう。
 「こういうところに気をつけながら読めばいいんだ」とわかればいいので、じっくり読む必要はありません。

このシートは学校で配付されました


【ミッション】ふせんをはりながら、課題図書を読もう!

 課題図書でも自由図書でも、入賞のしやすさに差はないと以下のサイトに書かれています。
https://www.daiichisemi.net/column/%E5%A4%8F%E4%BC%91%E3%81%BF%E3%81%AE%E8%AA%AD%E6%9B%B8%E6%84%9F%E6%83%B3%E6%96%87%E3%80%8C%E8%AA%B2%E9%A1%8C%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%80%8C%E8%87%AA%E7%94%B1%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E3%80%8D/

 とはいえ、自分の趣味に走って『伝説の家政婦mako 魔法のポリ袋レシピ』で読書感想文を書いても、先生は褒めてくれないでしょう。
伝説の家政婦mako 魔法のポリ袋レシピ』私は読んでいません……)

 どんな本を読めばいいのか迷う時間がもったいないので、課題図書の中から自分に合った本を選んで読みましょう。

 もう一つ、用意するのがふせん。
 ふせんをはるのは、本を読みながら「自分も以前に同じようなことを思った」「同じことをやった」「同じ気持ちになった」部分。
 逆に「自分は以前にまったく逆のことを思った」「逆のことをやった」「逆の気持ちになった」部分にもはります。

 ふせんをはるのは5枚まで。はり過ぎると、後で何のためにはったのかわからなくなります。
 本を読み進める中で、「もうふせんを5枚はったんだけど、今読んでいるところのほうがいいな」と思ったら、ふせんをすでにはっているページを読み直しましょう。
 どちらのほうが自分と共通する点が多いか、気持ちが強いかを比べて、共通点が多い・気持ちが強いほうに、ふせんをはり直します。

【質問】5枚のふせんをはった部分で、いちばん自分と共通点が多い、あるいは気持ちが強いのはどこですか?

 「びっくりするほど、自分がやったことと似ている」「こんなこと、絶対に自分はやらない」などと、最も強く思った部分はどこですか。
 長く考えるとわからなくなるので、直感で「ここだ!」と選びます。

【ミッション】「最も強く思った部分」についてメモを取りましょう

 前の【質問】の「びっくりするほど、自分がやったことと似ている」「こんなこと、絶対に自分はやらない」などについて、実際に自分がやったこと、思ったこと、抱いた気持ちを、紙に書きます。

 実際に自分がやったことならば、いつ(例えば「小学2年生の夏」など)、どこで(「おばあちゃんの家から歩いてすぐの川で」など)、なにを(「魚釣りを」など)、だれと(「弟と」など)、どんなふうに(「イソメをえさにして」「竹ざおで」など)行ったかを細かく書きます。
 天気や気温なども覚えていたら、メモしておきましょう。

 なお、思ったことや抱いた気持ちについて書くときに、「ヤバい」「スゴイ」「よかった」「ダメだった」という言葉を使いません。
別の言葉に置き換えます。

 また、メモを取る代わりに「読書感想文すいすいシート」に記入してもいいでしょう。

【質問】どんな書き出しがいいですか?

 賞をねらう場合は、書き出しが大事。いくつかのパターンがあるので、自分が好きなものを選びます。そして「最も強く思った部分」に関連させて、書き出しを作成します。『サピエンス全史 上』で例文を作ってみましょう。
『サピエンス全史 上』


○書き出しパターン1 「最も強く思った部分」に関係する本の中の1文や、登場人物の言葉を抜き出す
(例)
 「歴史上の痕跡を眺めると、ホモ・サピエンスは、生態系の連続殺人犯に見えてくる」
 人類が数多くの大型動物を絶滅させてきたという事実を知って、ぞっとしました。200万年前に人類がさまざまな大陸に渡っていくと、その大陸に住んでいた大型動物は狩られたり、住んでいる森を焼き払われたりして、死に絶えてしまったとこの本では書かれています。私たちの祖先は、生態系に悪影響を及ぼす特定外来生物のような存在だったというわけです。

○パターン2 登場人物や著者に話しかける
(例)
 私たち人類は、不幸な方向へと「革命」を進めてきたのでしょうか。
 この本を読み進めると、気持ちが重くなってきました。

○パターン3 読書感想文の読み手(学校の先生など)に問いかける
(例)
 今はとても豊かな時代だと聞いていますが、本当にそうなのでしょうか。この本を読んでいたら、狩猟採集の時代に生きていた人類のほうが、健康で余裕のある暮らしをしていたように思えるのです。

【ミッション】書き出しを「最も強く思った部分」につなげましょう

 すでにメモを取った「最も強く思った部分」。これを文章化します。自分が実際にやったことや、思ったことを書き出しの後に続けて書いていきましょう。

【ミッション】本を読んで発見したこと、本から学んで自分が変わろうとしている決意表明で締めくくりましょう

 『サピエンス全史 上』を読みかけの状態の私が例文を作るとしたら「人類の歴史について書かれた本をもっと読んで、さまざまな考え方を勉強したいと思います」になるでしょうか。前向きな言葉で、気持ちよく締めくくるといいですね。


 これで終わり!

 最後の最後で一言。
 この書き方で必ず賞が取れるとは保証いたしかねます。あらかじめご了承ください。


ここで書いた方法とまったく違うアプローチを紹介した本です。
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