たった1人の会社員がへそくりで開いたローカルフェスで500人も動員!  <こまぱく ~参道狛犬万博2018 in 市川市~>

 5日間で500人を動員。
しかも市川市内だけでなく東京や埼玉、名古屋からもお客さんがやってくるという、驚きのローカルフェスが2018年9月に開催されました。
会場は、公益財団法人市川市文化振興財団が管理している芳澤ガーデンギャラリー。JR市川駅から徒歩15分ほどの場所にあります。
 なんと、このローカルフェスは、たった1人の会社員がへそくりを使って趣味で開いたものだったのです。

最初は
家族も戸惑った
 日本人はパワースポットが大好き。江戸時代には「お伊勢参り」などが一大ブームになり、現在も「御朱印集め」で神社を巡る若い女性も多々見かけます。
 そんな中、狛犬を鑑賞し、撮影して、ルーツを探る人も少なくないようです。
 しかし、狛犬マニアの集大成として、一個人がわざわざ会場を借りて写真や資料を展示するのは、ちょっと珍しいのではないでしょうか。
 「そうでしょうね。私も妻から『どうしてそんなことをやろうとするの? せめて定年後にしましょうよ』とあきれられました」と語るのは、「こまぱく ~参道狛犬万博2018 in 市川市~」を主催した山元環樹さん。

 山元さんは現役のサラリーマン。趣味は全国の狛犬を鑑賞することです。元々が凝り性ということもあって、独自に狛犬の歴史を研究し、「狛犬千万無量」というホームページも作成していました。

●狛犬千万無量
https://komainu-senman.amebaownd.com/

 「妻も歴史が好きですし、狛犬を見るだけならお金はかかりませんからね。家族も私の趣味には理解を示しています」
 ただ、「こまぱく」を開きたいという話に、山元さんの家族は戸惑ったそうです。どうして山元さんは「こまぱく」を思い立ったのでしょうか。
 「それまでの4年半ほど、東北に単身赴任をしていました。休みが取れるのは月に1回ぐらいで、家族ともほとんど会えない。出世はしたものの、仕事だけで家族とのつながりがない生活を送っていてもいいのかと悩みました」
 結果として、山元さんは会社に掛け合い、自ら役職を降りて、家族が暮らす市川に戻ってきたのでした。それが2017年9月のことです。
 「勤務内容が変わって、週休2日になったんです。こんなに休めるのなら、何でもできそうだなって思ったんですよね」
 公民館などでは、地元の人が趣味の発表会などを開いていました。その様子を見て、山元さんは狛犬関連の展示会を行おうと思い立ったのでした。
 「2018年に、私はちょうど50歳になります。年齢的にも節目の年だったんです」
 こうして2018年1月に「こまぱく」の企画書を作成し、国立歴史民俗博物館(佐倉市)の展示などを見て回って研究を重ね、市川市内で会場探しも始めました。
 「単身赴任の間に、へそくりがたまっていました。それを費用に充てることで、妻とも話し合いがつきました。
 会場については、個人経営のギャラリーだけでなく、公共の施設も含めて幅広く探してみました。中央図書館の2階にある企画展示室や、市川市文化会館の展示室などを見に行ったんですけど、広すぎたり、予算的に折り合わなかったりしたんです。いろいろと調べて、飛び込みで芳澤ガーデンギャラリーに行ってみたら、学芸員の方が親身になって対応してくれて、その流れでここに決めました」
芳澤ガーデンギャラリー

 4月に芳澤ガーデンギャラリーに足を運び、5月には学芸員と打ち合わせを行って9月26日から30日まで開催することで仮予約をしました。

会社員としての
仕事経験も生かされている
 山元さんの作成した企画書を見ると、「こまぱく」のコンセプトと柱になるコンテンツが整理して記載されています。流通関係の会社で販促などを担当してきた仕事の経験が、企画書に生かされていました。
企画書は64ページに及んでいます(写真はこまぱくコンテンツ部分)

 「どうすればお客さんが集まってきてくれるかは、妻と社会人の娘に相談しました。仮想は女性客だったんです。理屈っぽくなり過ぎず、『狛犬ってかわいい』と共感してくれることを目指しました。
 最初は『参道狛犬万博』というネーミングだったのですが、妻と娘に『カタい!』と指摘されて、『こまぱく』に変更しました。
 チラシの色を鮮やかな黄色にするのも、妻と娘のアイデアです。今はインターネットのサービスで無料でロゴのデザインができるんです。ですから書体はこのサービスを使って、チラシデザインは自分のパソコンで作成しました。」

 この年の5~8月は、山元さんは「こまぱく」にかかりきりだったそうです。100円ショップで買ってきたパネルに、自分でパソコンを使って作成した資料をコンビニで紙に出力してから貼るという作業を延々と行っていました。
 「やりながら、『どこまでやるのか』ということをいつも考えていましたね。やろうと思えばいろいろとできるわけですが、最初のコンセプトである『狛犬』から離れていってしまう可能性もありますからね。常に企画書を眺めて、コンセプトを忘れないように気を付けました。
 それから、自分の考えを押し付けるような展示にしないことにも注意をしました。知識をひけらかすような展示にはしたくなかったんです」
 山元さんがパネル作りをする際には、「狛犬のルーツについては諸説あります。自分のイチバンのお気に入りをご紹介しています」と書き添えていました。

ネットがきっかけで
来場した人が半数以上
 「こまぱく」の開催前には、インターネットを積極的に利用した告知が行われていました。
 「もともとホームページを作っていて、インスタグラムも利用していたのですが、『こまぱく』を告知するに当たってフェイスブックやツイッターも使いました。
 それから、Google広告のアドワーズにも申し込みました。Google 検索で「狛犬」を検索している場合に『こまぱく』の広告を表示するようなサービスで、1クリックで数十円をこちらからGoogleに支払うといった仕組みになっています。
 会場でアンケートを取ったところ、Google 広告やSNSで『こまぱく』を知って来場した人が半数以上を占めました。
 あとは、芳澤ガーデンギャラリーが市川市内のフリーペーパー各社にイベントの告知を行っているんです。それでいくつかの媒体に『こまぱく』が紹介されました」

 興味深いのは、SNSを利用している年齢層。山元さんによれば、フェイスブックは70代ぐらいの男性が多かったのに対し、インスタグラムだと30~40代の女性が中心になるのだそうです。
 「SNSで自分がどんな人とつながっているのか、全然わかりませんでした。それが『こまぱく』に来てくれて人物像がわかったので、楽しかったですね」
 最終日には狛犬ファンが会場に結集して撤収を手伝ってくれて、その流れで市川駅近くの居酒屋で飲み会が開かれたのでした。
 「年末には狛犬好きの人で忘年会も開催して、交流を深めました」
 たった1人で企画して進めてきた「こまぱく」は、500人ものお客さんを呼んだだけでなく、狛犬好きの人々の結束を深める形で発展したようです。
 この経験をもとに、山元さんは個人レベルでイベントを開催したい人のお手伝いができたらと考えているそうです。
 「せっかくなので、もっと市川にかかわりたいなあと。私のように趣味を発表してみたい人がいたら、『こまぱく』のやり方を参考にしてもらえると思うんです」
 趣味を極めた人たちがどんどんイベントを開催するようになったら、市川がもっと盛り上がって、愉快な町に変わりそうな予感がします。








迫力あるパネル展示

狛犬に関する書籍も並んでいました


狛犬の膨大な資料も整理されています

左が山元さん作成のパンフレットで、右は狛犬好きの女性によるzine(
小冊子)

●情報
こまぱく ~参道狛犬万博2018 in 市川市~

○開催期間
2018年9月26日(水)から30日(日)までの 5日間
9:00 ~17:00 (最終日は15:00まで)
○会場
芳澤ガーデンギャラリー
千葉県市川市真間5丁目1−18
○入場
無料
○主催
山元環樹さん
○来場者数
500名
○開催費用
11万7499円
※別途会場費 2万7420円(会場設営日も含め6日間、税抜)
○会場スタッフ
1名(山元さんの奥さんが受付を担当)


●費用内訳
<告知、広告>
チラシ 2000枚 ポスター10枚  4万1040 円
グーグルアドワーズ 広告出稿  3500円
<展示>
DAISO 展示用パネル 250枚  2万7000円
カラーコピー 250部 2万円
白黒コピー 100 部 1000円
貼ってはがせる接着剤 5628円
ハレパネスタンド 3912円
カッターマット 791円
<その他>
会場御礼お菓子 6000円
DAISO その他備品 1万800円
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