再開発はどうしてタワマンがセットなのだろうか問題 ~ 事業費見積もりが1810億円→3500億円の中野サンプラザ跡地再開発はどうなる?

 東京都中野区の中野サンプラザが、老朽化を理由に解体されることが決定。その跡地の再開発が、「迷走」していると報じられています。
2016年頃の中野サンプラザ(写真/Kakidai


 理由は工事費の高騰。 1810億円→2639億円→3500億円(!)と膨れ上がっています。
 高騰している背景として、建築資材の単価上昇、円安、電気料金の高騰、そして「2024年問題」による人手不足が挙げられています。
 円安については、アメリカがトランプ政権になってから是正というか、円が高くなる方向で振れることもあります。ですから、今後はどのように変化するかわからないものの、少子高齢化・人口減少社会で、人手不足は解消されにくいと予想されます。

  ◆2024年問題= 24年4月から建設業のほか、トラック・バス・タクシーの運転手、医師の時間外労働に上限が設けられたことで人手不足が深刻化している。根拠となる働き方改革関連法は19年4月に施行されたが、建設業は、運送業などとともに適用が5年間猶予されていた。国は労働者の休日確保も考慮した適切な工期設定を呼びかけている。

 中野サンプラザ跡地の再開発の沿革を見ていきましょう。

1973(昭和48)年6月 「全国勤労青少年会館(愛称:中野サンプラザ)」としてオープン
2008(平成20)年 10月 サンプラザ地区に係るまちづくり整備の方針が区議会で議決
2011(平成23)年 3月 区役所・サンプラザ地区再整備の基本的方向策定
2014(平成26年 )6月 区役所・サンプラザ地区再整備基本構想策定
2016(平成28)年 5月 区役所・サンプラザ地区再整備実施方針策定
2018(平成30)年 3月 中野四丁目新北口地区まちづくり方針策定
2020(令和2)年 1月 中野駅新北口駅前エリア再整備事業計画策定
※マンションやオフィスなどが入る高さ262メートルの超高層ビル(タワマン)と、最大7000人を収容できる多目的ホールが2029年度に併設される計画
2021(令和3)年 5月 市街地再開発事業の施行予定者決定
2023(令和5)年7月 中野サンプラザ閉館
2023(令和5)年 11月 都市計画の決定・変更
2024(令和6)年7月 1810億円としていた事業費が2639億円かかる見通し
※多目的ホールの規模は維持する一方で、採算性を確保するため超高層ビルに占める住宅部分の割合を増やす方向で計画を変更
2024(令和6)年7月 施行予定者が市街地再開発事業の施行認可申請
2024(令和6)年9月 特定業務代行者である清水建設が提出した見積もりで、事業費は3500億円を超える見通し
2024(令和6)年10月 施行認可申請が取り下げ
2025年(令和7)1月 区議会建設委員会などで、高層棟の建設を1棟から2棟に変更する「ツインタワー案」を新たに提示

 この「ツインタワー案」が、施工予定者選定(プロポーザル方式)の際の次点となった東京建物の案と似ていると指摘されているようです。
東京建物の提案書より


 

●事業費が高騰し、中断や変更などに迫られた事例

中野駅前再開発(東京都中野区、野村不動産など)2639億円→3500億円超:中断
順天堂大学新病院建設(埼玉県さいたま市)834億円→2186億円:断念
福島駅前再開発(福島県福島市、野村不動産など)492億円→615億円→550億~580億円:規模縮小
中央通りD北地区市街地再開発事業(富山県富山市)184億円→225.3億円
福井駅前南通り地区再開発(福井県福井市)407億円→449億円:規模縮小



■主な参考資料
資材高・人手不足で大型工事ストップ相次ぐ…「中野サンプラザ」跡地は工費900億円不足で迷走 読売新聞20250207

中野サンプラザ再開発で「ツインタワー案」の迷走、プロポ次点案に類似の指摘も 日経クロステック20250207

中野サンプラザ跡地 再開発どうなる 事業費3500億円余 当初の2倍近く マンション オフィス 多目的ホールは? NHK20241206

「中野サンプラザ」跡のビル 工事費高騰で2029年度の完成困難  NHK202410926 

中野駅新北口駅前エリア(区役所・サンプラザ地区)再整備について

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