ゼロ・グラヴィティ松案件3 「上腕二頭筋のように盛り上がっている」

  かつて市川市にあった名所「三本松」から、お笑い芸人の小島よしおさんのような肉体美を感じると、ゼロ・グラヴィティ松案件2 三本松では述べました。

 あながち、おかしな感覚ではなかったようです。

 樹木医の瀬尾一樹さんによると、三本松のように横に伸びてしまった木については、「あて材」が作られています。

あて材とは、荷重に対応して局所的に幹や枝を太らせることによって、体の傾きを修正しようとするもの。

 瀬尾さんは、「まるで上腕二頭筋のように盛り上がっている」と表現しています。
 松など針葉樹の場合には、木が傾いているところには、下側に密度の高い材(「圧縮あて材」)ができることで、押し上げているとのこと。

 松がゼロ・グラヴィティしているときには、傾きの下が上腕二頭筋のように盛り上がっているわけです。

 ゼロ・グラヴィティする理由は、種類ごとの特性や環境などさまざまだそうで、同じ場所でも生え方が違うのは「木の個性」も関係するのでしょう。

 三本松は、3本の幹の中の1本がゼロ・グラヴィティしていました。

『市川市が誕生したころ』(市立市川歴史博物館)より

 ゼロ・グラヴィティ幹は、1935(昭和10)年に切除されました。
『市川市が誕生したころ』(市立市川歴史博物館)より

 その後、残り2本の幹も、1958(昭和33)年に伐採されています。



 ゼロ・グラヴィティした松で検索していたところ、ヒットしたのが「クシュヴィ・ラス」
Wikipediaより


約0.3ヘクタールの面積に群生する100本ほどが、どれも北向きに曲がっている。樹齢は2016年時点で80年余と見られる[1]。

 クシュヴィ・ラスには、大雪説と植林業者説、そしてクリスマスツリー説があるようです。詳しくはウィキペディアを参照してください。

 松がゼロ・グラヴィティしたのも、いくつかの要因が重なっていると考えられます。

 余談ですが、瀬尾さんは、「南の方が陽当たりが良いので、南側の年輪が幅広くなる。遭難したときは切り株を見ると良い」という情報は間違いと述べています。

昔のサバイバルの本なんかによく書かれていたことですが、実はこれは間違いで、実際は体のバランスが取れるように幹や枝を太らせていると言われています。

 『クラナリ』編集人も、子どもの頃に何かの本でこの情報を知っていました。間違いだったのかと、少しショックを受けています。

■余談
 『市川市が誕生したころ』(市立市川歴史博物館)の36ページに、1939(昭和14)年の新聞(東京日日新聞千葉版)記事が掲載されていました。「イチゴ、桃、梨の名産地でもあり一帯を一般の清遊地として設備をし銃後をゆたかにすべきであらう」と書かれています。梨は現在でもそうなのですが、イチゴと桃については、名産地というイメージが市川にはもうありませんね。
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