行徳可動堰はどのようにして「可動」なのか問題

 「堰(せき)」とは、河川の水を制御するため、河川を横切る形で作られた施設。ダムや堤防とは、以下の点で違うようです。

●ダム

基礎地盤から固定部の天端までの高さが 15m 以上
流水の貯留による流量調節が目的

●堤防

洪水の際に町にまで水があふれ出ることを防止

●堰

堤防に接続
 〇分流堰 河川の分流点付近に設けられていて、水位を調節
 〇潮止堰 塩水が川に上って来るのを調節
 〇取水堰 取水のために河川の水位を調節


 堰は構造によって2つに分けられます。

①可動堰 

ゲート(門扉)によって水位の調節ができるもの
 〇引上堰 上下に動くゲートを持つ
 〇起伏堰(転倒堰) 堰を立ち上げたり倒したりする

②固定堰(または洗い堰) 

水位の調節ができないもの


 「堰」なだけに水の流れをせき止めるわけで、水をためることが目的ではなさそうですね。

江戸川区から見た行徳橋

 行徳橋の横にある行徳可動堰については、引上堰で「シェル構造ローラゲート」なのだそうです(ちなみに、以前は「ローリングゲート」)。ゲートをワイヤロープで斜めに引っ張り上げているのですね。ワイヤロープは可動堰の上部で巻き上げられています。

江戸川特定構造物改築事業 (行徳可動堰改築)  より



巻き取られているワイヤロープ

 旧江戸川と江戸川放水路の分岐近くにある行徳可動堰は、分流堰・潮止堰・取水堰の3つすべての役割を果たしているのではないでしょうか。通常はゲートを上げて海水が上ってくるのを防ぎ、洪水のときはゲートを下げて江戸川の水を東京湾に放出しているそうです。
 私たちの知らないところで、生活が守られているのですね。

 余談ですが、古い行徳橋の断面です。「あれ? 薄い気がする……」と思ってしまいました。軽くて丈夫な構造なのでしょうね。
 古い行徳橋は、行徳可動堰の管理を目的として、1956(昭和31)年に供用された橋なのだそうです。
 「長年、お疲れさまでした」と伝えたいですね。




■参考資料
〔構造令 第 5 章〕 堰とは - 国土交通省
https://www.cbr.mlit.go.jp/kawatomizu/kouzou/pdf/16_08seki.pdf
江戸川特定構造物改築事業 (行徳可動堰改築) - 関東地方整備局
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000069210.pdf
江戸川 特定構造物改築事業 (行徳可動堰改築) - 国土交通省
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000654940.pdf
国土交通省関東地方整備局江戸川河川事務所 行徳橋の架替え進む(道路構造物ジャーナルNET)


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