そういえば「文教都市」って何なのでしょう問題
「文教」という言葉は英語だとeducation、つまり「教育」なわけですが、ちょっと違うニュアンスも含まれているように感じます。
ということで、辞書で調べてみました。
ぶん‐きょう〔‐ケウ〕【文教】 の解説1 学問や教育によって人心を導くこと。教育。「—の実を上げる」2 文化・教育に関すること。主として行政機関で用いる。「—予算」「—政策」「—施設」
文教で始まる言葉ぶんきょう【文教】この役所は文教をつかさどっているThis office is in charge of education [educational affairs].ぶんきょうせいさく【文教政策】educational policyぶんきょうちく【文教地区】a school zone
「文教地区」はa school zoneで、カタカナだとスクールゾーンなわけですが、我々のイメージだと「スクールゾーン=通学路」ではないでしょうか(正式には、「交通事故から子供たちを守るために設定された交通安全対策の重点地域」)。
「文教地区」を調べたところ、不動産用語でした。
不動産用語集文教地区読み:ぶんきょうちく特別用途地区の一つ。教育施設の周囲や通学路において、教育上好ましくない業種(例えばパチンコ店や風俗店など)の進出を規制するという地区である。市町村が指定する地区であり、建築規制の内容は市町村ごとの条例で定められる(建築基準法第49条)。従って、文教地区の詳細を知りたい場合には、市区町村役所の建築確認担当部署に問い合わせる必要がある。
千葉県での文教地区は、千葉市が「千葉市幕張新都心文教地区建築条例」で定めていて、市川市の資料を見る限りでは定められていないようでした。
特別用途地区は、用途地域内において特別の目的に応じた土地利用の増進、環境の保護等を図るため定めるものであり、特別工業地区が、市原市、木更津市、九十九里町及び鴨川市において、娯楽・レクリエーション地区が九十九里町及び野田市において、新港経済振興地区が千葉市において、工業振興地区が浦安市において、文教地区が千葉市において、商業業務地区が千葉市においてそれぞれ定められています。
「文教地区」の類語といえる「文教都市」については、辞書にない言葉、つまり造語ということです。ちなみに、Wikipediaでは次のように説明されていました。
文教都市(ぶんきょうとし)は、行政自治体などで街づくりの目標に掲げ称する呼称。
自治体のサイトに「文教都市」と文言を入れているのが東京都国立市。
JR国立駅前には「国立文教地区」の看板があるようで、その歴史が次のように述べられていました。
国立駅前のロータリーには、「国立文教地区」の看板が掲げられています。この文教地区の由来は、たんに大学や学校の数が多いからではありません。1950年代の町を二分する大論争の末に、決められたものです。昭和25年(1950年)、朝鮮戦争が勃発し、隣の立川市には基地があり、多数の米兵が進駐してきました。その影響は国立にも及び、米兵相手の簡易旅館や飲食店などが出現し、いかがわしい商売を始めだしました。環境を守ろうとする市民や学生を中心に、東京都文教地区建築条例の指定を目指して運動が始まりました。この条例は、市街地の青少年の環境を守ることを目的とし、その地区では、風営法の適用を受ける料亭・キャバレーなどの建物は建てられず、ホテル・旅館建築も制限されます。しかし、経済的発展のためには文教地区指定は障害になる、町がさびれ税金が高くなるという反対派との間で大論争が起こりました。
もう一つの類語が「文教住宅都市」で、兵庫県西宮市が1963(昭和38)年に文教住宅都市宣言を行っています。
ここに、西宮市は三十万市民のひとしく望むところにしたがい、風光の維持、環境の保全・浄化、文教の振興を図り、当市にふさわしい都市開発を行い、もって市民の福祉を増進するため、西宮市を「文教住宅都市」と定め、こんごの市政運営がこの理念に基づいて強く推進されるものであることを宣言する。
文教住宅都市を宣言高度経済成長のさなかの昭和30年代半ば、本市に西宮沖の埋め立てと石油コンビナートを誘致する計画が持ち上がりました。それまで築かれてきた住宅都市としての性格を継続するのか、工業のまちへ転換するのか、その賛否について、市を二分した大論争が繰り広げられました。その結果、37年に誘致は中止となり、本市は工業化への道よりも環境との調和・共生を市民と共に選択。38年11月3日に、文教住宅都市宣言を行いました。これは、今から半世紀前に環境の世紀といわれる21世紀的な価値を先取りしたものであるといえます。
ちなみに、都市の9割はなんらかの都市宣言をしているそうで、最も多いのが「交通安全都市宣言」とのこと。
珍しいのは、山口県光市の「おっぱい都市宣言」です。「おっぱい」。字面がすごい……
さまざまな都市宣言はさておき、「文教」については、高度経済成長期が始まる頃だと「教育」を単純に指していたのではなく、経済発展を目指すか、住環境を守るかの、地域を二分する大論争を踏まえたまちづくりという側面があったようです。
ただ、現在での「文教」は、教育機関の数や質、地域の子どもたちの学力、難関大学への進学実績などを指しているようです。
ネットで「文教都市」と検索すると、ヒットするのは東京都文京区。日本の最高学府である東京大学をはじめ、多数の大学があることでも知られています。『クラナリ』編集人は文京区の図書館をよく利用していましたが、蔵書の種類や本の扱い(古い本でも大切に扱われている、書き込みがほとんどない、など)も素晴らしく、こういった点でも「文教のまち」だなと思うわけです。
最近、人口増で知られる埼玉県さいたま市には、東京大学など難関大学への進学実績がある高校が存在する旧浦和市が含まれていることもあって、次のようにアピールしています。
全国トップレベルの学力!教育に力を入れているまち
不動産やビジネス書関連のサイトなどでは、「文教都市」という造語ではなく「教育環境が充実している」「教育に力を入れている」「子育てにカネをかけている自治体」といった表現を使っていました。スタディサプリでの、千葉県内でのランキングは以下のとおり。
千葉県|教育環境が充実している街ランキング1位 香取郡多古町(千葉県) 6.55 点2位 千葉市中央区(千葉県) 4.77 点3位 成田市(千葉県) 4.59 点
市川市は31位でした。
なお、市川市が行っている宣言は、次の2つのようです。
○核兵器廃絶平和都市宣言 1984(昭和59)年
○「健康都市いちかわ」宣言 2004(平成16)年
■参考資料
市川市
月刊基礎知識 「宣言」に効き目はあるのでしょうかの現代用語集
[Q]スクールゾーン・キッズゾーンとは?
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