印刷関連用語今昔

 最近、多くの印刷会社がスケジュールを連絡してくるときに、「本文のデータは○月×日までに、付物は△月□日までに」という形で、本文と付物のスケジュールを別に設定しています。 
 この場合の本文と付物は、以下のとおりです。
○本文……はじめに・目次から、おわりに・奥付まで
○付物……表紙やカバー、帯、遊び紙、別丁扉など

 本文はすべて、同じ紙と同じインクを使って刷るものを指しています。印刷された紙は切られて、折られて、綴じられます。
 この束になった紙=本文に、表紙や遊び紙などを貼り付けて、カバーを巻くわけです。
 本文のデータを付物よりも数日先に渡すように設定されていることが多いのは、おそらく、作業の違いから発生するのでしょう。

 ただ、「印刷用語集」によると、本文と付物の本来の意味は、次のとおりのようです。
○本文……目次の次のページから、おわりにの前のページまで
○付物……表紙、カバー、帯、遊び紙、別丁扉、はじめに、目次、おわりに、奥付など

本文
ほんもん / text
(1)書籍の前付・後付を除く主要記事。(2)見出し・リード・注・図表などを除く記事の中身。

付き物
つきもの / annexed matter
前付け,後付けなど出版物の本文を除いたものの総称。

 「前付」と「後付」は、デジタル大辞泉で以下の説明があります。

まえ‐づけ〔まへ‐〕【前付(け)】
書籍・雑誌の本文の前に添える、扉・口絵・序文・端書き・目次など。⇔後付け。

あと‐づけ【後付(け)】
[名](スル)
1 書籍の最後につける、付録・付図・索引・後書きなど。⇔前付け。
2 後から付け足すこと。「後付けの周辺装置」「理由を後付けする」

 言葉が指すものが微妙に違うのは、活版印刷の時代と、DTPの今とでは、印刷所での作業が変化したからなのでしょう。

 ちなみに、印刷用語集によると、「校正」も微妙に違います。

校正
こうせい / proofreading
原稿やレイアウトの指定との比較をおこない,校正刷り上で誤りや不体裁の訂正を指示する作業。文字組版の校正刷りをゲラ刷りともよぶが,活版組版をゲラという台に入れたまま校正機で刷ったことが語源である。

1回目の校正を初校,2回目を再校,以下,三校,四校とよぶ。

校正が終了したものを校了,残った訂正箇所を印刷会社の責任に任せた校正を責任校了といい,責了と書く。

 なになに!
 ゲラという台?

ゲラ
げら / galley
(1)活版印刷で用いる活字の組版を入れる浅い盆状容器。植字にて活字を並べる際に,版を整えるための組みゲラと,校正刷りから印刷を行うまでの間,組版を保管しておくための置きゲラがある。(2) 参照⇒ゲラ刷り


ゲラ刷り
げらずり / galley proof
元来は,組版された活字をゲラに入れたまま校正刷りすることをさしたが,現在では,文字校正用の印刷物をいう。
同義語:ゲラ(2)

 galley proofで検索すると、Wikipediaで画像も発見。
Correcting after a galley proof. The Netherlands, 1965.



 普段の仕事で「ゲラが出た」と言っていますが、本来の意味だと、上の写真のような容器というか、トレイというか、そのようなものが出てきたことになるのですね。DTPの今でも同じ用語が使われているのが、不思議な感じです。

 ちなみに、galleyをカタカナ読みするとギャレーで、船の炊事場を意味するギャレー(galley)がなまって、ゲラになったと「Web版 ヨット - モーターボート用語集」と説明されていました。

ギャレー【galley】
船の炊事場。船ではキッチンという呼称はほとんど使われない。古代の手こぎ軍艦、ガレー船のガレーも同じ綴り。さらには、出版界で使われるゲラ刷り(出版前のチェック用校正紙)のゲラもgalleyが訛ったもの。

 
 校正に話を戻すと、「著者校正」という言葉も使います。印刷用語集に載っている「校正刷り上で誤りや不体裁の訂正を指示する作業」とは違う作業です。ということで、デジタル大辞泉で検索。

こう‐せい〔カウ‐〕【校正】 
[名](スル)
1 文字・文章を比べ合わせ、誤りを正すこと。校合 (きょうごう) 。

2 印刷物の仮刷りと原稿を照合し、誤植や体裁の誤りを正すこと。「ゲラ刷りを—する」

3 測定器が示す値と真の値の関係を求め、目盛の補正などを行うこと。国家標準で定められた標準器や、あらかじめ物理的量や化学的な純度などがわかっている標準試料を用いて校正する。較正。検定。キャリブレーション。

類語
訂正(ていせい) 修訂(しゅうてい) 改訂(かいてい) 勘校(かんこう) 校閲(こうえつ)
関連語
校合(きょうごう)
 著者校正については、「校合(きょうごう、こうごう)」の意味ですね。
 活版印刷の頃は、活字を拾ってくる際にミスが発生するので、元の原稿と照合する作業が必要だったようです。DTPの現在は、著者校正に限らず、本を作る際の「校正」はすべて「校合」になっている気もします。

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