「心臓や肝臓などは1つなのに、どうして腎臓と肺は2つあるのか」 文系人間が考えてみた

※フリーランスの編集者・ライターである『クラナリ』編集人(バリバリの文系)は、腎臓に関する記事や書籍に携わる機会が多いため、腎臓に関していろいろと考察しています。素人考えですが。


「心臓や肝臓などは1つなのに、どうして腎臓と肺は2つあるのでしょうね」

 ある版元の編集者が、打ち合わせのときに疑問を口にしました。それでネット検索するとヒットしたのが、以下のサイト。



 ねえねえ、これって答えていることになるのかな……(コナン君口調)

 サイトを見ながらつぶやいて、文系人間が独自に考察することにしました。もちろん、素人考えです。

 心臓や肝臓など1つだけの臓器と、腎臓と肺との違い。それは、「脊椎動物が陸上に進出した際に、重要性がグンと増した臓器であるかどうか」ではないでしょうか。

 そんなわけで、水生生物と陸生生物とで肺・腎臓を比較してみようと思いました。

 ネット上での資料が充実していたのは、肺。そして、「これが答えだろう!」と思える研究にヒットしました。

現存する⽔中で⽣活をする肺を持つ⿂(古代⿂とも呼ばれている)と陸上⽣活をする有尾両⽣類を⽤いて、それらの肺の形態をシンクロトロン放射光 X 線を⽤いた詳細な画像解析を⾏うことで⽐較しました。その結果、⽔中で⽣活する⿂では、肺がつながっているのは 1 つの気管(吸気管)のみで、肺を 2 つ持つように⾒える場合は 1 つの肺が発⽣過程で⼆次的に拡張したものであることが分かりました。⼀⽅、陸上で⽣活する有尾両⽣類の肺はヒトと同じように 2 つに分枝した気管⽀が左右の肺に接続する対肺(paired lung)でした。系統図上で⽐較すると、⿂から陸上脊椎動物へ進化した系統で、肺が 1 つから 2 つ(対肺)へ変化したと推定されます。 


 肺を持つ魚、つまり肺魚の研究です。肺が2つあるように見えても、実は1つの肺が広がっていって「2つに見えるだけ」の状態だったようですね。

 最初に陸上進出を果たした脊椎動物である両生類は、肺魚から進化したと考えられています。ですから、肺魚のときに分岐した肺が、背骨をまたいで両生類では2つに変化したという話です。

 この研究結果を見て、「肺だけでなく腎臓も同様に、脊椎動物が陸上に進出するタイミングで1つから2つへと変化したのではないか(あるいは、2つに変化したものが生き延びたのではないか)」ということ。周りに水がある環境からない環境へと移動した中で、体の機能を維持するために体内に水分を保持するシステムを発達させる必要が出てきました。そのシステムの中心的な役割を果たしている臓器が、腎臓です。

 浮力が働いていた水中生活とは違って、陸上進出では重力をモロに受けるため、その力に耐えられるように骨格も発達しました。肺、腎臓、骨格(背骨)を発達させた結果が、「背骨の両サイドに肺と腎臓」という配置になったのではないかと推測できるわけです。

 一方、心臓や肝臓などは陸上進出の影響をそれほど受けなかったため、1つのままで事足りたということになります。

 では、実際のところ、どうなのでしょうか。進化の過程をたどるために、まずは水中で生活する脊椎動物について見ていきましょう。

 最も原始的段階の脊椎動物は円口類(ヤツメウナギ、ヌタウナギなど)と呼ばれ、ここから、体のすべての骨が弾力性のある軟骨でできた軟骨魚(サメやエイ、ギンザメなど)、そして石灰質が多く含まれた硬い骨を持つ硬骨魚へと進化していきます。

 コトバンクで見つけた株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」が出典の「脊椎動物の腎臓の外部形態」という図では、ヤツメウナギの腎(前腎?)が何を指しているのかわからず、軟骨魚については副腎・腎臓(に相当する臓器?)の一部が2つに分かれた状態(上腎体)で、硬骨魚も同様に一部が2つに分かれた状態(頭腎)でした。



 頭腎は、哺乳類の副腎組織に相当する内分泌組織、そして体腎には尿細管や糸球体などの泌尿器系組織が観察されるとのことで、腎臓として働いているのは体腎ということになります。


 となると、魚で腎臓として働く臓器は1つ。どちらかという副腎がメインで2つに分岐しているという印象です。それが陸上に進出し、両生類で腎臓が大きくなり、2つに分かれたのでしょうか。肺魚の腎臓については、残念ながら形がよくわからず……

 「こんなことになるなら、高校時代にちゃんと生物を勉強するんだった……」と、しみじみ思っているところです(『クラナリ』編集人が卒業した公立高校は、当時の校長が理科好きのため、文系を選択した生徒でも理科を3教科も取らされたのでした)
Powered by Blogger.