経由する車が多くて、どこもかしこも渋滞する市川の道路事情 その2 千葉県の熊谷俊人知事がXで挙げた3つの課題

東京外かく環状道路(外環)とつながる道の多くが渋滞する市川市内の日常




  2026(令和8)年5月24日に、千葉県の熊谷俊人知事が、Xで次のポストを行っていました。「全体の趣旨と異なる形で一部を抜粋して記事化・紹介するのはご遠慮下さい」とあったので、全文引用します。
千葉県の道路についてX上で話題となっているようですが、現在の県政が当該エリアを含め、県北西部の道路整備を強力に進める方針であることをお伝えしておきます。私自身も先の知事選でその旨を明記した公約を示し、新規事業化を進めています。

もちろん、既に密集した市街地の中で道路整備を進めるのは容易ではありませんし、県だけで解決できるものではありませんが、このエリアの最優先課題の一つが道路整備であることは今の県政は十分に認識しています。

私やSNSでの発信に積極的な県議等のアカウントを平時からご覧頂ければ、国への働きかけ・県の予算化・新規事業化などの動きがよく分かるかと思います。

千葉県は1都2県と比べ、人口に対して面積が広く、道路整備の必要な総延長が長いこと、成田空港闘争の関係で収用委員会が長らく機能不全に陥り、土地収用を活用できなかったこと、東京に近いエリアに政令市が無く、主要道路を県が整備するしかなかった(政令市は独自に財源を確保し、主要道路の整備が可能)等の要因が挙げられます。

いずれにしても各地域の渋滞解消と安全確保、産業振興等のために、国や関係市と連携しながら、これまでの県政以上に県北西部の道路整備を進めていきます。もちろん、地権者の協力が不可欠です。

 



 話題になったXの投稿(https://x.com/akirae233/status/2057755562226708493)を見ると、千葉県の柏市・市川市・船橋市・八千代市・鎌ヶ谷市の辺りを「用がないなら決して車で近付いてはならない」としていました。
 千葉県知事の投稿の「県北西部」はこれらの市を指しているのでしょう。そして、県北西部で道路整備が進んでいない理由として、知事が挙げていた項目について、調べてみました。

○千葉県は道路整備が必要な総延長が長い

 AIによるまとめは次のとおりです。
東京都:人口 約1,427万人 / 面積 2,199.94 平方キロメートル
神奈川県:人口 約921万人 / 面積 2,416.55 平方キロメートル 
埼玉県:人口 約732万人 / 面積 3,797.79  平方キロメートル
千葉県:人口 約627万人 / 面積 5,156.44  平方キロメートル

 一都三県の中で千葉県は面積が広いので、各市を道路でつなげようとすると、どうしても長くなってしまうということでしょう。ちなみに市川市の外環道と成田市の成田国際空港を結ぶ計画の北千葉道路(一般国道464号)は、約43キロメートルの高規格道路です。
北千葉道路の概要(出典:北千葉道路パンフレット



○成田空港闘争で収用委員会が機能不全に陥っていた

 収用委員会とは、地方自治法と土地収用法に基づいて、各都道府県に置かれている行政委員会です。知事から独立して職務を行っています。公共事業に必要な土地の取得や使用に関して、土地所有者と事業者の間で補償額などの合意ができない場合に、公正・中立な立場で審理を行い、適正な補償額や権利関係を裁決します。

 1988(昭和63)年に、千葉県収用委員会会長襲撃事件が起こっています。Wikipediaでは、次のようにまとめられていました。

千葉県収用委員会会長襲撃事件(ちばけんしゅうよういいんかいかいちょうしゅうげきじけん)は、1988年(昭和63年)9月21日に、成田空港問題に関連して日本の新左翼の中核派が千葉県千葉市で起こした個人を標的とするテロ事件である。千葉県収用委員会の委員長が襲撃を受け、瀕死の重傷を負った。事件後も中核派はなおも委員らを脅迫、収用委員会を機能停止に追い込み、千葉県の公共事業に長期間の影響を及ぼした。
(中略)
1981年から25年間中核派の三里塚現地闘争本部の責任者を務めていた岸宏一は、『三里塚のイカロス』収録に際して2015年10月から12月にかけて行われたインタビューの中でこの事件を振り返り、被害者の小川について「彼は人権派でいい弁護士だった」と認めつつも、「あれは、いい作戦だったと考えている。今後、収用委員会を襲えば他の場所でも収用不能となるということを実践したんだ」と語っている。

 警察庁の平成2年警察白書のサイトでは、「神奈川県下の公共用地審議会会長代理宅に圧力釜爆弾を仕掛け、同家の物置を爆破するという個人テロの色彩の強い『ゲリラ』事件」の写真が掲載されています。

出典:警察庁 平成2年警察白書

 


○東京に近いエリアに政令指定都市がない

 政令指定都市になると、市内の国道・県道の整備を市で行えます。ただ、用地買収の難しさなどは、政令指定都市になろうとなるまいと、変わらないかと。

首都圏三県の政令指定都市

神奈川県:横浜市(県庁所在地)、川崎市、相模原市 
千葉県:千葉市(県庁所在地)
埼玉県:さいたま市(県庁所在地)


 日本の主要な道路は、徳川家康が1601年に整備し始めた五街道(東海道・中山道・甲州街道・日光街道・奥州街道)がベースになっています。


出典:Ⅲ.近世の道

 
 今も江戸時代も千葉県は、東京(江戸)の隣にはあるものの、その先は房総半島。海しかありません。そのため、国として千葉県の道路を整備する必要性は、あまりなかったのだと考えられます。

 千葉県では1953(昭和28)年に京葉工業地域(京葉臨海工業地帯)が誕生し、1954(昭和29)年に千葉港、そして1978(昭和53)年に成田国際空港(当時は新東京国際空港)が開港したことで、東京と千葉の間の物流・人流は増えました。
 その頃にはすでに、県北西部では住宅地が増えていました。1971(昭和46)年に、東京と成田国際空港を結ぶ成田新幹線の整備計画が決定したものの、用地買収が難航して、結果として頓挫しています。

 仮に市川市が政令指定都市になったとしても、住宅地が非常に多いために、用地買収は厳しいと予想されます。例えば「住宅をJRと東西線の沿線に集中させて、空き家になったところに道路を通す」といった強制力を、果たして市川市は持てるのかなと、一市民としては思ってしまいます。
 加えて、市川市には用事のない車が大量に経由するだけの道を作るわけですから、成田新幹線での反対運動と同様のことが起こりそうです。地元住民は騒音でうるさくなるだけで、道路ができたところでさほどメリットが感じられないのです(市川市は利便性が高いこともあって、鉄道+バスの公共交通分担率は約43%)。

 これは市川市に限らず、県北西部の市が似たような状況だと考えられます。

 あくまでも市川市に住む一市民としては、野放図に住宅地を増やしてきた高度成長期のツケが、道路の渋滞や空き家問題として、今を生きる私たちに回ってきているという印象です。

 過去の権利や目先の利益にとらわれずに、計画的に縮んでいくことができるのか。

 景気のいい話ではありませんが、こうしたことを話し合う時代なのかもしれません。


■関連記事
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■主な参考資料
※千葉県内の市町村の財政(「富」)について触れているようなXでのポストもあったので、財政力指数と将来負担比率を比較




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