夏休みの宿題 読書感想文の書き方 その2 ~ 「読書感想文すいすいシート」になにを書いたらいいのかわからない子どもたちへ

 「知恵の木」で作文教室を開いていた頃は、作文が苦手な子どもには読書感想文のための本選びから関わっていました。読書感想文が苦痛で、本嫌いを引き起こしたら悲しいものです。

 前回夏休みの宿題 読書感想文の書き方 その1 ~ 読書感想文で賞をねらっている子どもたちへに引き続き、今回も、教室を開いていた頃に書いた文章を掲載します。
 教室では、「世の中にはおもしろい本がいっぱいあるよ」「構成に当てはめて、少しずつ文章を組み立てると、読書感想文が出来上がってしまうものなんだよ」「将来、役に立つかもよ」などと、メリットを無理やり考えて子どもに伝えていました。

 ちなみに過去には、『いなり寿司のひみつ』で子どもは読書感想文を書いています。その具体例が、「チリツモ式」読書感想文作成術 実践例です。

 


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 そもそも読書感想文って、なんでしょうね?
 「本を楽しく読みなさいって、大人は言うじゃん。感想文も『楽しい』『おもしろい』じゃダメなの?」と子どもたちは少々腹を立てているはず。

 そりゃそうだ。

 「読書感想文」は実は本を読んだ感想を書くんじゃないんです。「楽しい」「おもしろい」という感想だけで原稿用紙3枚を埋めるのは、そもそも無理がありますね。だからネーミングと内容が違う詐欺のようなもの。

 なんだけど、子どもたちが成長していくうえで、大事な作業だと思うんです。
 だから、学校で配られる「読書感想文すいすいシート」を見て「なんじゃこりゃ!」と思った子どもたちに、別の書き方を教えます。

※教育同人社の皆様へ
「読書感想文すいすいシート」はとてもすばらしい内容だと思います。しかし、このシートを前に固まって動けなくなる子どももいます。そのような子どもに向けて文章を書いています。

【質問】あなたの趣味はなんですか?

 この質問に「なんじゃこりゃ!」と思った子どもたち。あのね、本を読むときに大事なのは、自分の趣味なのです。

 サッカーが好きな子どももいれば、お菓子作りをやってみたい子どももいるだろうし、カードゲームで遊ぶ子どももいますよね。

 自分の趣味を思いつくだけザザザ~と紙に書きましょう。

 その趣味に関係のある本は、必ず見つかります。理由は、今、大量の本が世の中に出回っているからなんです。出版不況とともに自転車操業的に本が出版されるようになった背景には「再販制度」があり、これが制度疲労を起こして……という私の愚痴はおいといて。
 自分が興味のあることについて書かれた本を読みましょう。

 料理好きな子どもは、『伝説の家政婦mako 魔法のポリ袋レシピ』を読んで、読書感想文を書いてもいいんです! その場合、タイトルにある「魔法」が本の内容に合っているかどうか、ぜひ検証してください。


私は読んでいません……

 書くのが難しいのは、かいけつゾロリシリーズなど、ナンセンスギャグ(あくまでも個人的評価)満載の本。

私にはおもしろさが理解できません

 精霊の守り人シリーズもよく推薦されていますが、この内容で子どもが読書感想文を書くのはつらいでしょうね。私は大人としてこのシリーズを愛読しました。大好きです。しかし、好きだからといって読書感想文は書けないもの。これは自分自身で実感しています。

すばらしい作品です

 逆に書くのが簡単なのは、先に挙げたレシピ本のような実用書、スポーツ選手や監督が書いた自伝などです。自分の生活に密着している本を選ぶことをお勧めします。

 注意したいのは、大人ウケを狙って難しい本を選ぶこと。大人から「この本を読んだんだ! すごいね」と褒められそうな本を読んだところで、読書感想文は書きにくいもの。本選びではなく読書感想文でウケを狙いましょう。

【質問】どのくらいの厚さの本なら、「一気読み」できますか?

 本を読むのが得意な子どもも、不得意な子どももいます。一気に、楽しく、最後まで読んでしまえる厚さの本を選びましょう。

【ミッション】では、「一気読み」しましょう!

 そのまんまですが、まずは一気に読んでしまいましょう。

【質問】一気読みして、頭に残っていることはありますか?

 本を読み終えて、「おや?」「そうだ!」などと頭に残っていることを、メモします。
 このとき、メモは自分が後で読める程度の、雑で汚い字で、楽に書きます。読めないのは困りものですが、きれいに書くことにこだわると疲れます。
メモは早く! 雑に! 楽に!

【ミッション】頭に残っていることを、自分でもやってみましょう!

 『伝説の家政婦mako 魔法のポリ袋レシピ』を読んだとして、「この料理はおいしそう」と思ったら、実際に作ります。火を使うときは、必ず親に手伝ってもらってください。安全第一。

 『長友佑都のヨガ友』を読んだなら、ヨガをやってみましょう。
料理はおいしくできたのか、ヨガは長友のようにできたのか、やりながら思ったことや、やった後の感想などを、雑にメモします。

私は読んでいません

【ミッション】自分がやったことについて書いてあるページをじっくり読み返しましょう!

 ここでチェックするのは「本当に本に書かれているとおりにやったのか」ということ。
 一気読みの場合、たいていは「勝手読み」をします。勝手読みとは、本に書いてあることを自分勝手に読み替えてしまうこと。多いのですよ、勝手読みが。
 じっくり読んでみて、「あれ? やり方が違っていたかも……」と思ったら、それも雑にメモします。

【質問】本の内容で、これからも続けたいことはありますか?

 『伝説の家政婦mako 魔法のポリ袋レシピ』を読んで、料理を作ってみて、「これからも料理を作りたいな」と思いましたか? 「やだ。面倒くさいし、おいしくないし、『魔法』の意味もわからないし、ほかの本を読めばよかった」と思いましたか? (私は『伝説の家政婦mako 魔法のポリ袋レシピ』を読んでいないので、あくまでも仮定の話です)

 本を読んでこれからやってみたいこと、あるいはやりたくないことを、雑にメモします。

これで準備OK!

 読書感想文の構造(はじめ・なか・おわり)に合わせて、メモを整理します。

■はじめ
 あなたの趣味
 どうしてその本を選んだのか

■なか
 本を読んで頭に残ったこと
 実際に自分がやったこと
 やったことの結果

■おわり
 本の内容でこれからも続けたいこと

 ちなみに、読書感想文を原稿用紙3枚分書くことになっていて、どうも文字数が足りないと思ったら、「なか」を増やします。
 『伝説の家政婦mako 魔法のポリ袋レシピ』ならば、料理を2種類作る。『長友佑都のヨガ友』ならば、ヨガを3~4種類試す。こうして文字数を調整しましょう。

 「先生にこんな読書感想文を出したら怒られそう……」と思った子どもたち。
 正解!
 小学校や中学校の先生たちは、こんな読書感想文を褒めてくれません。

 しかし、社会に出てから書く必要があるのは、はじめ・なか・おわりの構造がある、主観(「おいしそう」など)と客観(「作ったら写真どおりにできなかった」など)、本の内容と事実が読み手に伝わる文章です。



手もとに英語の論文の画像データしかなかったのですが、日本語も同じですよ

 作文が嫌いでも、大人になったら文章を書かなければ仕事が進まないことは珍しくありません。ならば、大人になってからでも使える文章の基本を、子どものうちに覚えていたほうが、お得ではないですか?

 ですから、「大人になってからも使える形で読書感想文を書いたんだよ!」と子どもたちは親に胸を張って報告して、先生ではなく親にたっぷりと褒めてもらいましょう。

 読書感想文を書くことが子どもたちが成長していくうえで大事な作業なのは、今の学校の授業ではまとまった分量の文章を書かないから。
 せめて1年に1回くらいは、長文を書いておいたほうが後々楽だと思いますよ。




補助器具や原稿用紙の使い方などもまとめた本です。
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