商工会と商工会議所。どこが違うの問題

 かなり前の話ですが商工会議所を取材したことを、突然、思い出しました。そして、疑問がわいたのです。

商工会と商工会議所、一緒なの? 違うの?

 調べた結果、それぞれに関係する法律が違うし、組織としては異なるとわかりました。ただ、中小企業を支援したり、地域経済の活性化のためにイベントに協力したり、開業などの相談を受けたり、法律などのセミナーを開いたり、具体的な活動内容は限りなく近いという印象です。

市町村合併に伴う商工会再編の方向性より



 根拠となる法律は、商工会は商工会法。商工会議所は商工会議所法。
 管轄官庁は、商工会は経済産業省 中小企業庁。商工会議所は経済産業省 経済産業政策局。
 区域は、原則として、商工会は町村。商工会議所は市。

 市川市は「市」なので、商工会は存在せず、市川商工会議所があります。

○市川商工会議所

 商工会議所の起源は、1599年にフランスのマルセイユで組織された商業会議所です。1599年の和暦は、江戸時代の慶長4年です。
 日本では、1878(明治11)年に、イギリスの商工会議所を手本にした東京商法会議所(後の東京商工会議所)が設立されました。初代会頭は渋沢栄一です。
 現在の形態の商工会議所は特別認可法人で、1953(昭和28)年に制定された商工会議所法に基づいて運営されているとのこと。

 商工会については、商工業者の自主的な任意団体組織として、古くから存在していました。それが1960(昭和35)年に商工会法に制定されたことで、法律に基づいて運営されるようになりました。商工会議所と同様、特別認可法人です。


 ちなみに、商店会のほとんどが任意団体です。
 商店会が法人格を持つようになったといえるのが、商店街振興組合です。1962(昭和37)年に制定された商店街振興組合法に基づいて設立されます。
 千葉県中小企業団体中央会のサイトを見た限りでは、市川市には商店街振興組合は存在しないようです。

 2000(平成12)年から2020(令和4)年までの間に、千葉県市川市の自営業主と家族従業者数は4分の1程度にまで減っています。


グラフで見る市川市の自営業主及び家族従業者数は多い?少い?(推移グラフと比較)より


 同様に市川市内の商店会も、2024年12月13日の市川市議会一般質問のやり取りによると、年々減ってきているようです。

平成26年度が63商店会、2,084会員
令和元年度が60商店会、1,827会員
令和3年度が56商店会、1,684会員
令和6年度当初が55商店会、1,552会員

この10年間で8商店会、532会員の減

 これは市川市に限った話ではありません。
 日本全体でも、自営業率は減っています。加えて、高齢者が多いという特徴があります。


我が国の自営業者は、高齢者が多い。2005年時点で、自営業者の31.7%が65歳以上、25.9%が55~64歳となっている。また、年齢階級ごとの自営業率でも、高齢者になるほど高く、全体が14.7%であるのに対し、65歳以上は54.6%、55~64歳は20.4%となっている



 商店街連合会「商店街調査」では、2003(平成15)年の結果で「停滞」もしくは「衰退」している商店街が9割に上っています。
地域の経済2006第2部 第1章 1.現状の確認より



  令和3年度商店街実態調査でも、商店街が抱える問題は、経営者の高齢化による後継者問題が最多(72.7%) 。次に多かったのが店舗等の老朽化(36.4%)で、経営者も店舗も、そして商店街自体も“高齢化”という問題を抱えています。

 こうして、いわゆる「シャッター商店街」が増えているわけですが、その背景には「商いをしなくても、生活には困らない」という状況もあると指摘されています。

シャッター商店街の不動産オーナーが明日の生活にも困っているかと言われれば、そんなことはない、むしろ豊かであることが多くあります。

シャッター商店街の不動産オーナーは、多くがもとから商売をやっていて、特に戦後の高度成長期、大儲けした時代がありました。その時代には小さな土地の値段もうなぎ登り。その土地を担保に銀行からおカネを引き出して小さな店をビルに変え、さらに周辺のアパート・マンション等にも投資。このようにして一財を成した人が少なくありません。

たとえ今の商売が大して儲からなくなっても、息子たちも立派に東京などで自立しているし、過去の蓄財と不動産収入などで「死ぬまで生活するカネには困らない」、といった人々が、シャッター商店街のオーナーたちだったりします。

今、シャッターを閉じ、商店街で暮らしている多くの店主は、年金も潤沢、子供はサラリーマンで独立、税金は安い、つまり店主の多くは実はちっとも困っていないのだ。それどころか、ほかに家作などがあって不動産収入が潤沢に入ってくる人もいる。変に新しい事業をする意欲はないし、有効利用を考えたり、リニューアルをして他人に貸すのもリスクがあるからやめておこう、となるのだ。

 ひところ、若者たちがシャッター通りの店舗シャッターを開け、カフェを開業する、物販店を開設するなどの「商店街活性化策」が話題になったが、もともと人も歩いていない通りに、自己満足で出したお店であれば、初めのころこそ人目を引いても事業としては長続きしない。半年から1年程度でつぎつぎに閉店していく姿が多く見られた。でもそんな若者にスペースを提供したオーナー自身、あまり困ってはいないので、どうでもよいし、それをみる周囲の旧店主たちも、やや冷ややかな目で成り行きを見守り、撤退する姿に、
「やっぱりだめよね。あんなことしたってうまくいくわけがない」
と評論するのがオチであった。




 自営業というと「お店」というイメージが浮かびがちですが、自営業主の産業別構成割合の推移を見ると2010(平成22)年の時点で卸・小売業は12.9%程度で、2005(平成17)年から2010(平成22)年にかけて激減していました。

自営業主の産業別構成割合の推移より

 日本では、雇用者報酬と比べて自営業収入が低く、収入も不安定なので、若年層は正社員志向、とりわけ大卒は大手企業志向が強まっているという報告もありました。

 地域コミュニティ存続のために商店街を残していきたいという行政の意向があるようですが、商店街を活性化する以上に、担い手の自営業者をどうやって維持していくのかのほうが根の深い問題のように思います。イベントで商店街に人がたくさん集まってきても、各店で利益が上がらなければ存続できないわけで、「活性化」とはならないということでしょう。

■主な参考資料
全国商工会連合会

商工会議所の成り立ち
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