【インタビュー】二重三重に人の輪が広がるコミュニティカフェ  「おもちゃ図書館Cafe Santa」

手作り感あふれるサンタの看板が目印の「おもちゃ図書館Cafe Santa」。
ここには、食事に来たお客さんだけでなく、おもちゃと駄菓子が目当ての子どもたちや、お手伝いのボランティアの人たちが入れ替わり立ち替わり訪れます。
 年代、仕事、住む場所、障がいなどを飛び越えて、みんなが気軽におしゃべりできる場所なのです。



宣伝・告知には
SNSを積極的に利用
 京成電鉄国府台駅から徒歩0分。とても利便性がよいところに「おもちゃ図書館Cafe Santa(以下、カフェサンタ)」はあります。
 「この物件を見て、『やるしかない』と背中を押されました」とオーナーの西宮敬子さん。「ナカジ」こと中島保人さんと力を合わせて、2017年5月にカフェサンタをオープンさせたのです。
 駅前通りに面したガラス戸を開けると、中島さんプロデュースの駄菓子屋「スナック★バーなかじ」。


 その奥には西宮さんが料理の腕を振るうキッチンとテーブル席、さらにおもちゃ図書館の座敷スペースがあります。
出張料理人などの経歴も持つ西宮さん
座敷スペースの階段を上るとレンタルスペースがあり、ママ会などが開かれているとのこと。
 「賃貸の店舗付き住宅が国府台にあると、知り合いが教えてくれたんです。ナカジと見に来て、広さといい、立地といい、『いろいろ使えるね』と意見がまとまって、すぐに借りようと決めました」
 2月に物件を見て、3月に契約。4月に準備をして、5月にオープンというハイスピード。開業資金として、西宮さんは250万円、中島さんは50万円を用意していました。
 「私たちが借りる前はキッシュのお店だったんです。とてもきれいな状態だったから、内装にはまったくお金をかけていません。エアコン4台を購入して、大工さんに工事をしてもらってトータル30万円ぐらい。キッチンの棚やテーブルなどは、イケアとニトリで6~7万円で購入しました。鍋や皿などの食器類は15万円くらいかかったでしょうか。
 冷蔵庫やシンクなどのキッチン関係は、リースで毎月1万円弱ですね。
 看板は、コミュニティカフェ開設講座(※)で知り合った方に5万円ほどで制作してもらいました。
 駄菓子屋の棚は、ナカジの義理のお兄さんとボランティアの人たちで手作りしていましたね」
 座卓や座布団、カバーなどは、「ナルク」経由での寄付とのこと。ナルクとは、特定非営利活動法人 ニッポン・アクティブライフ・クラブ(NALC)のことで、「出来るだけ夫婦で参加する画期的なボランティア活動によるNPO法人です」とホームページに書かれています。このナルクに、西宮さんは以前から参加していたのでした。
座卓や座布団などは寄付によるもの
「立ち上げのときは、ナカジの家族や知り合い、私たちの近所の友達、ボランティアが20名ほどわっと集まって、わっと掃除をして、一気にきれいになりました」
 中島さんはFacebookなどSNSを積極的に利用して、人集めだけでなく、宣伝・告知も行ったそうです。
 「オープンのときにチラシを作りましたが、ポスティングは全然行っていません。ホームページについては急いでいたので、知り合いに12万円で作ってもらいました」
 お金をかけない工夫をしていたものの、しばらくは眠れない日々が続いたそうです。
 「ここの家賃は12万5000円なんです。最初は敷金・礼金がかかるし、30万だ、40万だと出費がかさむので、『どんどんお金が減っていく』と不安でした」
 開店準備にかかった費用の総額は、およそ230万円に上りました。
慌ただしい日々が過ぎ、3カ月がたった頃に大きな出費がなくなったので、ようやく気持ちが落ち着いてきたのだそうです。

※コミュニティカフェ開設講座とは、公益社団法人 長寿社会文化協会(WAC)がコミュニティカフェを開きたい人・団体を対象に開催。現場での座学・ワークショップ、見学・体験、事業計画書作成などを行う。西宮さんは、2016年度コミュニティカフェ開設講座(千葉)を受講していた。

「まずは大人たちが
元気にならなくちゃ」 
 カフェサンタのルーツは、西宮さんが9年ほど続けてきたおもちゃ図書館にあります。
 おもちゃ図書館とは、障がい児をはじめ、子どもたちが楽しくおもちゃで遊べるための活動。おもちゃの貸し出しなどもしています。
 西宮さんは北国分の教会や保育園、公立の施設などで、「市川おもちゃの図書館」としておもちゃ図書館を月1~2回のペースで開催していました。
 「教会でおもちゃ図書館を開いていたときは、カフェもやっていたんです。子どもたちがボランティアの人と遊んでいる間に、ママたちがお茶をしながらおしゃべりができるようになっていました。
 こうした空間を作りたいと、ずっと思い続けてきました。それに月に1回というペースだと忘れられてしまうし、拠点を持ちたいという気持ちもあったんですよね」
カフェサンタのおもちゃ図書館

 カフェサンタのオープン当初から、おもちゃ図書館とともに、なんと「よるサンタ」と呼ばれる月1回の居酒屋が開かれていました。ちょっと意外です。
「いえいえ。子どもたちのことを思えば、まずは地域の大人たちがつながることが大事なんです。
 国府台駅の周辺はシャッター通りになっていて、寂しい雰囲気になっていました。ここがもっと盛り上がってほしいんですよね。子どものためにも、大人が元気にならなくちゃ」
 西宮さんは中学・高校の家庭科の教諭や出張料理人などの経歴を持ち、料理を作るのが大好き。おいしい料理と酒で、カフェサンタに最初に集まったのは大人たちだったのです。
 「ボランティアのスタッフや近所の放課後デイサービスのスタッフ、支援してくれる友達などが来てくれて、お酒を飲みながらいろいろな話をします。アルコールが入ると、舌が滑らかに動きますよね。こうした情報交換が必要なんです」

 そして2018年の4月からは、いよいよ子どもも呼ぶ「みんなの食堂」を開始。
みんなの食堂は毎月第二土曜日の17:00に始まる


フル回転でも笑顔が絶えない西宮さん

 「最初から『みんなの食堂』をやりたいという目標は持っていました。そのために情報をたくさん集めて、念入りに準備をして、ボランティアも作業に慣れて動きが滑らかになってきた頃、満を持してのスタートです」
ボランティアについては、最初は無償でしたが、2017年8月から有償になったとのことです。
 みんなの食堂には8~9名のボランティアが手伝いに来て、6回目からは千葉商科大学の学生も参加するようになったのだそうです。
学生ボランティアも多数参加

 会計については、カフェサンタとみんなの食堂は別になっていて、「みんなの食堂はほぼトントンで進んでいるけど、カフェサンタは赤字ですよ」と西宮さんは語ります。
 みんなの食堂の場合、「市川こども食堂ネットワーク」から補助があります。そのほかにもカフェサンタを応援してくださる方から食材やお菓子などが寄付されるので、中学3年生までの子どもは無料、大人にはたった300円で食事を提供できるのだそうです。
 「カフェサンタは無理やり回している感じだけど、『石の上にも3年』っていうでしょ? もうけようとは思っていないから、続けていけるんですよ。
 それに行政の絡みがないから、自由な発想でいろいろできる。その分、責任は重くなりますが、大きなメリットだと思っています」

大学生や子どもたちと
地域を活性化したい
 西宮さんとともにカフェサンタを立ち上げた中島さんは、2017年1月に筋萎縮性側索硬化症(ALS)であることを公表しました。西宮さんたちがカフェサンタのオープンを急いだのには、中島さんの病気も関係していたのです。
 ALSは、運動神経が障害され、体を動かすために必要な筋肉がやせて、力がなくなっていく病気です。病因が明らかになっていないため、治療は困難。症状は進行し、言葉を発したり、食べ物をのみ込んだりすることも困難になっていきます。
 今は施設で過ごしている中島さんですが、その存在が西宮さんを強く励まし、支え続けているように思えます。

オープン時の西宮さんと中島さん(写真提供/昆布山 良則さん)

 パワフルにコミュニティづくりを進める西宮さんは、人と人のつながりの輪をどんどん広げています。
 「近所の大学生や地元の子どもたちと一緒に、国府台の商店街を元気にしたいんです。そのために夏祭りなどのイベントを企画したいと考えています。
 子どもが集まる駄菓子屋をやりたいと言っていたナカジの意志を引き継いで、何とか駄菓子屋もつぶさないでがんばっています」



近所のコンビニと商品の差別化するために、駄菓子のほかにくじ引きも取り入れている

夏場にはラムネやかき氷も

 商品やメニューのバラエティを増やしたり、差別化を図ったり、西宮さんのアイデア満載のカフェサンタには、子どもからお年寄りまで、さまざまな年代の人が今日も訪れています。
マラソンクラブも発足!


【おもちゃ図書館Cafe Santa】

○開業年月
2017年5月
○店舗・事務所面積
-
○客席数(テーブル、カウンター)
カフェ利用で約15席
○家賃
12万5000円
○スタッフ数
2~3人(西宮さんとボランティア1~2名)
※みんなの食堂ではボランティアが8~9名
○開業資金
300万円(自己資金)
○住所
千葉県市川市市川3-27-23
○連絡先
電話 047-322-0350
メールアドレス nishimiyakeiko@yahoo.co.jp
ホームページ https://toycafe-santa.jimdo.com/
○営業日時
11:00~18:00(木・日曜、祝日 定休)
よるサンタ(プレミアムサタデー) 毎月最終土曜日 18:00~22:00
みんなの食堂 毎月第二土曜日 17:00~19:00


【2018年3月頃の経費】
家賃 12万5000円
駐車場代 1万6000円
電気代 1万6000円
ガス代 4000円
水道代 2200円
通信費 8500円
厨房リース 1万円
有線 3650円
有償ボランティア 2万5000円
商店会費 1500円

合計 22万5000円
※上記のほかに食材費が10万~15万円ほどかかっている

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