<生業インタビュー>「選択肢を一つでも多く見つける、一つでも多く伝える」祥知出版 森 真希

※この記事は生業インタビューのダミーです。私が私にインタビューしている形式で、恥ずかしながら自分を「森さん」と呼びます。

 「リトルプレス」とは、その名のとおり少部数の出版物。最近では、たった1人で制作から流通まで行う「ひとり出版社」も増えてきました。

 市川駅の近くにある祥知出版は、編集者の森 真希さんによるひとり出版社でリトルプレスを発行しています。どうして市川で、どうして出版社を始めたのか、話を聞きました。

○○

子どもがいたから
市川に移り住んだ

 女性によるひとり出版社として有名なのは、タバブックスや小さい書房。どちらかという柔らかい印象のネーミングです。
 それに対し、祥知出版というのは漢字だらけで硬い印象。なぜこのような名前にしたのかを森さんに聞いたところ、次のような返事がきました。
 「子どもたちの名前から取って『祥知出版』にしたんです。リトルプレスを始めようと思ったときから、このネーミングに一切迷いはありませんでした」

 森さんは大学を卒業してから出版社に勤務し、21年間、健康情報誌などの編集に携わってきました。通勤時間を短縮するため、住まいはいつも東京都内でしたが、子どもの出産を機に、12年前に市川に移り住みました。
 「子どもが生まれなければ、市川に住もうとは思わなかったですね。市川と縁をつないでくれたのは、子どもなんです」と森さん。
 住まいを市川駅の近くに決めたのは、総武線各駅停車で乗り換えせずに通勤できることと、町の印象がのんびりしていたからでした。

自ら進んで
フリーになったわけではない

 2人の子どもを出産後も、夫婦で協力して子育てしながら、森さんは編集者として働いていました。
 転機を迎えたのは、夫の単身赴任。夫婦は地方出身者で親が高齢だったため、保育園児と低学年の小学生の面倒を森さんが1人で見ることになりました。
 「編集の仕事がきつくて、別の部署に異動させてほしいと会社に相談しました。しかし『編集者じゃなければ、ウチの会社はいらない』といった内容の返事。出版不況で会社の状況も厳しいから、余裕がなかったのでしょうね」
 会社員生活を続ける中で、森さん自身は過敏性腸症候群などさまざまな不調が現れ、子どもの様子も変わってきたそうです。「学童保育で指導員と衝突したり、爪がなくなるまでガリガリと執拗にかんでいたり……。子どもにも大きなストレスがかかっているのはわかっていました」と森さん。しかし、転職経験がなく、編集の仕事も好きだったため、会社員を辞める決断はなかなかできなかったそうです。
 それが4年前、勤めていた出版社の社長が交代し、退社する人が数名現れました。この時点でようやく森さんも辞表を出したのでした。

 ライフサイクルでは「子育て繁忙期」に、会社員からフリーランスへと変わったことになります。
 「最初はフリーランスになるつもりはありませんでした。通勤の満員電車のストレスがなくなれば体調もよくなると思って、市川市内で仕事を探していたんです。ハローワークに通って。だけど、40代女性の求人は職種があまりにも狭くて、どこかの企業に雇われるのは厳しいと実感しました」

 再就職をあきらめてフリーランスになった森さん。そして2年前にリトルプレスを始めたのですが、「それもきっかけは商業出版に断られたからなんです」と森さん。
 長年にわたり多くの医師や患者さんを取材し、皮膚を水に濡らすことがバリア機能を低下させると確信して、ある医師の著書として『ふろに入らないほうが美肌になる』を出版するように、森さんは働きかけていました。数社を当たって断られたときに、だったら自分で出そうと決めたのだそうです。

 「20年以上も編集者として働いているんだから、それぐらいできるだろうと……。簡単に考え過ぎでした」と森さんは笑います。予算がないため、ライティングもイラストもデザインも1人で行うことになり、苦労をしたようです。
 「一番の失敗は、販売ですね。取次が私なんか相手にしてくれないのはわかっていたので、最初の販路はアマゾンだけ。宣伝や広告は自分のサイトとSNSなので、売り上げは伸びません」

「やめる」も含めて
選択肢を増やすことが大事

 現在までに4冊の書籍を出版。またアマゾンとの取引もやめて、自身のネットショップでリトルプレスを販売しています。注文が来たら、書籍をエアーパッキンなどで梱包。発送作業ももちろん自分で行っています。

 「採算は取れません」という森さんだが、これからリトルマガジン『クラナリ』を制作しようと活動しています。
 「フリーランスの編集者とライターをやって稼いだお金をリトルプレスに注ぎ込んでいるのが現状です。祥知出版で稼ぐことは、正直なところ、あきらめています。それでも、子どもが手離れするまでは、細々と続けていくつもりです」

 祥知出版のコンセプトは、「選択肢を一つでも多く見つける、一つでも多く伝える」。
 病気になって治療を受け続けたり、薬を使い続けたりしても症状が改善しないときに、私たちは落胆してしまいます。しかし、症状を引き起こしているのが普段何気なくやっていることで、案外簡単に原因を取り除ける可能性もあります。
 「当たり前と思っている習慣をやめるだけで、症状が消えるケースが多いんです。見過ごされがちですが、『やめる』も含めて選択肢を増やすことが大事。最近、働き方についても同じことが言えるのではないかと考えています」


 森さんのこれからの目標は、子どもが巣立っていくまではフリーランスの編集者とライター、そして祥知出版での出版活動と3足のわらじを履き続けること。
 市川と森さんの縁を結んだ子どもの成長に合わせて、仕事のスタイルも変えていくようです。




祥知出版
○開業年月
2016年6月5日
○店舗・事務所面積
自宅のため事務所はない
○客席数(テーブル、カウンター)
-
○家賃
-
○スタッフ数
1人
○開業費用
非公開
○住所
非公開
○連絡先
shouchishuppan<at> gmail.com  
※<at>を@に置き換えてください
○営業時間
不定
○定休日
不定

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