親の家を片づける「そっと抜き取り片づけ術」

片づけにもさまざまな流派があります。かなり大ざっぱに分けると、次の2つになるでしょう。

1 居間から片づけ派
2 押し入れから片づけ派

最近では「アドラー心理学を使って片づける」「ときめきを基準に片づける」など、心の部分を強調した片づけ術をよく見かけます。心理的な要素は数限りなくあり、ゴチャゴチャするので置いといて、「どこを最初に手を付けるか」で2つの流派に分けられます。
それぞれをざっくりと説明しましょう。

1 居間から片づけ派
「目に見えるところから手を付ける」「片づいたという実感が大事」という流派の総称です。
居間を片づけると、自己満足に終わらず、「すごくキレイになったね」「スッキリした」と家族から褒められることもあるでしょう。褒められた喜びが原動力になって、片づけに勢いがつくわけです。

しかし、居間が片づいた段階で「もういいや」と作業がストップする可能性があります。
加えて、目に見えない押し入れやクローゼットが後回しになり、収納スペースが確保しにくいことからリバウンドを起こすという指摘もありました。

2 押し入れから片づけ派
最初に押し入れやクローゼットの中の物を全部出してしまいます。そして要・不要を見極めていらない物を処分し、収納スペースを確保するのが、「目に見えないところから手を付ける」流派です。
居間や寝室などに散らかっている物を押し入れ・クローゼットに片づけるのでリバウンドしにくいと、この流派の人たちは語っていました。

大きな問題は、押し入れやクローゼットの中に物がたくさんあると、それらを出すだけで居住スペースが狭くなること。いらない物を処分するまでの期間は、かなり散らかった、不便な状態になります。

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老いた親の家を片づけるときに、この2つの流派はお勧めできません。

私たちの脳は、同じ状態を継続することで安心するという、保守的な側面があります。昨日と同じ今日があり、今日と同じ明日があると思うことで、気が休まるわけです。この傾向は高齢になるほど強くなります。
さらに、老いるとともに要・不要を見極めるのが難しくなります。判断力の低下です。

1の流派のやり方で部屋の様子が激変すると、老いた親は不安になり、空いた空間を埋めるべく物を買い足してしまう可能性があるでしょう。

また、高齢になるほど物をため込みがちなので、2の流派のやり方だと「押し入れから物を出したせいで、足の踏み場がまったくない」と困った状況に陥るでしょう。
 さらに、要・不要を見極めること自体、老いた親にとっては大きなストレス。「いるのかどうだか、私にもわからないのよ」と親は途方に暮れるかもしれません。

そこで、私がお勧めするのは第3の流派、「片づいたかどうかわからない程度に、物を少しずつ抜き取っていく方法」です。
例えば、本棚にぎっしりと古雑誌があるのなら、10冊中2冊を抜き取って処分する。似たようなデザインのコートがクローゼットに2着あったら、1着を処分する。台所にしゃもじが3つあったら、2つを処分する。このように、「物がなくなったのかどうかわからない」というレベルで片づけていくのです。

ビフォーアフターの変化がわからないうえ、時間もかかるこの方法を「片づけ」と呼んでいいのかわかりませんが、老いた親に負担をかけずに物を減らしていくことができます。「物を抜き取る」というよりも「引き算する」という表現のほうが上品かもしれませんね。

親にも「いるかいらないかは考えないで、1日1つを目標にして物を捨ててみたら」と提案してもいいでしょう。365日で365個の物が減ると、1年で大きな変化になります。

片づけや脳機能の専門家に取材してきた経験から、高齢者とそうでない人とでは片づけ方を変える必要があると感じています。
私たちも数十年たったら見た目も判断力も今とは違うわけですが、「いつまでも自分は変わることない自分」と錯覚するようですね。老いた親に対して「いらない物ばかりため込んで!」と腹を立てるよりも、明日は我が身と思って、粛々と親の家にたまった物を減らしていくほうが気分的に楽になれそうです。
お互いに負担にならない片づけ方を検討したいものです

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