【インタビュー】町の小さな自転車店が考えた、市川の朝を盛り上げる新習慣「Have A Good Day Motoyawata」

昼間人口が少ないことで知られる市川。
東京で働いて遊んで、
市川には寝に帰るだけの人も少なくないようです。

そんな中、「休日こそ、朝早くから市川で楽しもう」と、
「いちかわ手づくり市実行委員会」というグループが提案しています。
新しい試みとして、
食と遊びとオシャレが地元の神社で融合した
ローカルフェス「Have A Good Day Motoyawata」が
始まりました。



手づくり市が活発に
開かれている市川市
○面積 57.45 km2
○推計人口 49.12万 (2018年)
○東京都特別区部への通勤率は46.5%(平成22年国勢調査)
○人口の66・9%が15~64歳、平均年齢が43歳
 このように市川市のサイトで発表されているデータから見えてくるのは、「40代前後の子育て中の夫婦や単身者が、東京その他で働くために便利な市川に住んでいる」という市民像。おそらく、市川は仕事や遊びから帰ってきて寝るだけの場所なのでしょう。
 便利だけど、働いたり消費したりする場所としては物足りない市川。
そんなイメージを拭い去って、「市川から東京へ」という人の流れを「市川から市川へ」と変える仕組みづくりに取り組んでいる、民間のプロジェクトがあります。それが「いちかわ手づくり市実行委員会」。
 2011年に生まれた委員会で、名前のとおり、最初はハンドメイド作家など手づくりが大好きな人が集まって、作品などを販売する市(マーケット)を企画していました。その後、商業施設で定期的にワークショップを開催したり、市川市外でも手づくり市などのイベントをサポートしたりする形で発展しています。
 いちかわ手づくり市実行委員会の立ち上げメンバーの1人が、本八幡の自転車店「DEPOT cycle&recycle」の店主である湊誠也さん。奥さんの麻未さんがアーティストで、京都で訪れた手作り市に興味を持っていたこともあり、メンバーに加わることになったのだそうです。
写真右側が湊誠也さん

 初期メンバーで残っているのは、代表の宮川はるみさんと湊さん。現在ではプラス2名の4名体制で、いちかわ手づくり市実行委員会は運営されています。
 「現在は、2019年2月に始まる『Have A Good Day Motoyawata』の企画を担当しています。主催はいちかわ手づくり市実行委員会です」と湊さんが教えてくれました。

葛飾八幡宮の
ボロ市が原点
 「僕は菅野の生まれで、小学生の頃、葛飾八幡宮のボロ市が楽しみでたまらなかったんです。射的やくじ引き、型抜きではずいぶんと理不尽なこともありましたが(笑)、本当にワクワクのイベントでした」
 JR本八幡駅から徒歩5分の場所にある葛飾八幡宮は、創建されたのが平安時代中期の寛平年間(889〜898年)。1000年以上の歴史を持つ神社です。


 葛飾八幡宮では毎年9月15日に例大祭が行われ、同じ時期にボロ市(八幡様の農具市)が立っていました。参道には農具や料理用具などの露店が並んで、大勢の人でにぎわっていたそうですが、「最近では昔のような活気がないように思えました」と湊さん。
 Have A Good Day Motoyawataを葛飾八幡宮の参道で開催する理由の一つに、宮司の筥崎篤史さんの「ボロ市を復興させたい」という思いがあったそうです。ですから、このローカルフェスの副題を「ニューボロイチ」にしたのです。
 「京都の神社やお寺では、定期的に縁日が開かれているんですよね。だから神社に市が立つのは、決して珍しい話ではないんです。
 僕は知恩寺(京都市左京区にある浄土宗七大本山の寺院)の手づくり市に参加したことがあるんですが、お金も経験もない若い子がお店を出していました。そんな形でビジネスにチャレンジできる場所があるなんて、すごくいいなあと感動したんです。
 それに神社やお寺は、いわゆる『気』がいいですからね。休日の朝を過ごすのにぴったりの場所だとずっと思っていました」

出店スタイルは
基本的に自由
 湊さんがこだわったのは、早起き。Have A Good Day Motoyawataの開始が午前8時とかなり早いのには、狙いがありました。
 「休日の始まりの土曜日。朝早くから動くことができれば、その日1日が長く楽しめるじゃないですか! だから『Good Saturday Morning』って名前にすることも検討していたんです。
 多分、最初から人は集まることはないと思います。朝早いですからね(笑)。ただ継続していくことで、Have A Good Day Motoyawataが認知され、それが習慣になってくれたら良いなぁと思っています。」
 告知については、チラシやSNS、いちかわ手づくり市実行委員会のサイトを利用していますが、主として出店者さんたちの口コミが功を奏しているようです。
第1回に参加したお店などのリスト 提供/本八幡botさん

 Have A Good Day Motoyawataでは、葛飾八幡宮の参道を仕切って、野菜や弁当、コーヒー、ハンドメイドなどの商品を扱うさまざまお店が出ます。「手づくりブース」にはアクセサリー店や焼き菓子店などが、「飲食ブース」には弁当店やパン屋、コーヒー店などが並び、さらには「素敵な世界だったり、ワークショップだったりするブース」では靴磨きやアートのワークショップが開催されます。
 「今まで市川のさまざまな手づくり市に出店してきた方が多く参加してくれます。ですから出店方法などは、基本的に皆さんにお任せしています。初めて出店する方も、周りの方が教えてくれると思います。優しい方が多いので、僕たちはなんの心配もしていないんです(笑)」
 午前8~10時に開店して、午後4時から撤収を始めれば、あとはそれぞれのお店の自由なのだそうです。
 「会場は葛飾八幡宮の好意でご提供いただいております。そのほかに交通整理のスタッフを集めたり、『Have A Good Day Motoyawata』というロゴのデザインを依頼したり、チラシやのぼりを作ったりするためのお金がかかります。こうした費用は、出店料でまかなっていますが、おそらく初回は赤字ですね(笑)。
 もとより利益を得るためのイベントではありませんし、実行委員会も基本ボランティアですので、1年で6回開催する中で、収支を合わせていくことになると思います」
 こうしたお金の面については宮川さんが管理を担当し、のぼりなどの保管は葛飾八幡宮が引き受けてくれるのだそうです。ローカルフェスには熱いハートと冷静かつ明晰な計算、なにより互いに必要なものを差し出して協力し合う体制を作ることが大切なのでしょう。
 「いやいや、みんな堅苦しいことは考えてないんですよ。なにより自分たちがやりたい、地元の市川を楽しみたいという人ばかりなんです。Have A Good Day Motoyawataを満喫していただいて、『市川おもしろいじゃん!』なんて、みんなで一緒に盛り上がっていきましょう!」


●Have A Good Day Motoyawata
○開催日時
偶数月第二土曜日 8:00~16:00
○会場
葛飾八幡宮 参道
○住所
千葉県市川市八幡4丁目2−1
○主催
いちかわ手づくり市実行委員会
ichikawa_tezukuri@yahoo.co.jp
○出店予定
60店


●雪で順延というアクシデントにもかかわらず大盛況だった初回
 2019年2月9日が、記念すべき第1回となる予定だったHave A Good Day Motoyawata。あいにくの天気で翌日に順延になったにもかかわらず、大盛況だったとのこと。「予想をはるかに超える来場者とイベントの雰囲気も含めてすばらしかったと思います」と湊さん。
 初回を終えた感想を、湊さんにお聞きしました。

【順延に関して】
〇天気予報をチェックしながら順延を決めるまでの気持ちの変化について教えてください。
  天気ばかりはどうにもならないので(笑)、困ったなぁとか不安だなぁとか特に思わなかったんです。
 
〇順延はいつ判断されましたか?
 前日の早い段階で決めました。あの日は雪の予報が100%でしたので、判断は問題ありませんでした。 

〇出店者にはどのように連絡されましたか?
 基本的には手づくり市実行委員会のフェイスブックページで告知をしました。

〇順延によって、出店数は変化しましたか?
 はい。 いくかのお店さんは、参加ができなくなりました。

〇天候不順による順延で出店を取りやめた場合、出店料は返金されますか?
 順延の可能性は出店希望の際にお伝えしているので、原則として返金はしません。

〇順延の告知(出店者以外)は、いつ、どのような形で行われましたか?
 出店者さんによるインスタグラムなどのSNSや、前述のフェイスブックページです。

【当日に関して】
〇来場したのはおよそ何人でしょうか?
 少なくとも1000人以上の来場がありました。

〇午前と午後で、人出に変化はありましたか?
 開始から最後までほぼずっと人出があったと思います。

〇どのような人が来場していましたか?
 ファミリー、夫婦、子どものグループなど、さまざまでした。

〇驚いたり、慌てたりするようなことは起こりましたか?
 飲食店ブースのほとんどが即完売してしまった点は、想定を超えていました。

【無事終了したことに関して】
〇初回を終えられて、最もうれしかったことは何でしょうか?
 来場いただいた皆さん、参加いただいた出店者さんの反応がすこぶるよかった点。きっとWe all had a good dayだったと思います。

〇次回の課題はありますか?
 はい。よりたくさんの出店者さんに参加いただけるようにブース数を増やせるようにしたいと思います。

湊さん、ありがとうございます!
次回のHave A Good Day Motoyawataは2019年4月13日開催予定です。晴れますように!

なお、『クラナリ』は諸般の事情で初回のHave A Good Day Motoyawataに足を運べませんでした。実際の様子の写真をアップしていないのは、そのためです。
4月13日に開かれる2回目に、全体やブースなどの撮影や取材をさせていただきます。皆さん、どうかよろしくお願いいたします。
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